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映画『Mommy』から見えてくるものとは?

渋谷のミニシアターへ

最近、ミニシアターの魅力に改めて気付いたので、渋谷にある「イメージフォーラム」に足を運ぶ。いつも他と被らないマニアックな映画が上映されている映画館だ。長い間気になっていたが、なかなか足を運べておらず、ワクワクしながらはじめて向かった。

「確実な証拠がない」のは本当なのか?

和歌山カレー事件は1998年に起きた。当時の報道については、うっすらと記憶しているものの、その後どうなったのかについては追えていなかった。

『アイアム・ア・コメディアン』と同じ制作陣だと村本さんが言っていたので、気になって「暗い気持ち」になるのを覚悟して鑑賞した。

映画では、死刑判決が下されているものの、「確実な証拠はない」ことを指摘している。「さらなる調査が必要である」という余地があるのであれば、やはり再審は必要なのではないだろうか。

もちろん検察側の証拠や主張についても触れる必要はある。それがぽっかり抜けてしまっている状態で「彼女は無実である」「再審を直ちにすべきだ」ということはできない。けれども、当時の行き過ぎたマスコミ報道に世間が煽られてしまったのは間違いないだろう。

「バグってしまう瞬間」を人はどう修正するか?

林眞須美の夫・林健司の証言が最も印象的だった。当時のできごとを「思いのほか簡単に保険金が下りてしまい、どんどんエスカレートしていった」「ギャンブルでお金が無くなれば、ヒ素を服用し保険金を得る行為を繰り返すようになった」と飄々と語る場面がある。

もちろん普通では考えられない行為だ。けれども、人は弱い生き物だ。一つの嘘や小さな悪意がどんどん増幅してコントロールが効かなくなってしまい大きな罪を犯すまでになるのかもしれない。そんなバグってしまう瞬間を、人はどうコントロールすればいいのだろうか?と考えさせられた。

「大金を手に入れ、贅沢な生活をしたい」多くの人があこがれる欲望なのかもしれないが、決して幸せになれるわけではない。そこにあるものに満足し、調和ができないとどんどん不幸になっていってしまう。ひょんなことから全てをうしなってしまうことになりかねないのである。

投げかけた疑問が再調査されることを祈る

「疑わしきは罰せず」であるからこそ、検察側は強引な手法を使っていたことも見えてくる。ドラマ『アンチヒーロー』のようなことが、実際に行われていたとしたら、死刑判決には疑問が残る。

多くのレビューにあるように何かしらの結論を出す映画ではない。ただ、事件後の家族や関係者への取材を通して学ぶことは大きいと感じた。

非常にセンシティブな問題に向き合い、粘り強く取材と撮影を継続した制作陣に敬意を表したい。そして、この映画で浮き彫りになった疑問が納得のいく形で調査されることを祈る。





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