юродивый мальчик

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ほしのこえと出会った日

 中学生のころ、父がある短編アニメーションを僕に教えてくれた。それはほんとうに短いアニメーションで、その頃の僕にはそれじたい新鮮だった。近未来の日本で、深宇宙探査のために国連所属のパイロットとなった少女、少女とメールを交わす少年の物語は、アスファルトの湿る中学生の日常から高濃度のSFへと遷移し、しかしなお映画の真ん中には、亜空間ワープをするたびに離れていく、小さな液晶画面と心もとないアンテナと電波とがかすかにつなぎとめる二人の心の距離が、そのどうしようもない切なさが、2年4か

    • 「ウインダリア」感想・追記

      目次 1.「ウインダリア」概観 2.疑問点と考察 3.人間存在、ジブリとウインダリア   1.「ウインダリア」概観  1986年、「天空の城ラピュタ」と同年に公開された、隠れた傑作長編アニメーション、「ウインダリア」。  世界観設定は王道の近世期邦ファンタジーで、しかし魔法の類は基本的に見うけられない。劇伴音楽はすばらしく美しく、儚げな花を物語に添えている。新居昭乃氏の主題歌はまさに幻想的な旋律でもって、主人公である若き青年イズーの哀しみに寄り添う。科学技術の発展度合

      •  カウボーイ・ビバップを淹れる:SFの意義とハードボイルド

              序文  「おいスパイク、あがったぞ」  と、厨房から低く唸る声。  油のはじける音が船内に響き渡る。ほどよく焦げたピーマンのくすんだ薫りが、がらくた同然のボロ船のダクトを充満させている。しかし、絶対的な何かが足りていない。  「肉の入ってないチンジャオロースがあるかよ」 不貞腐れたように独り言つ、天然パーマの、背の高い細身の若い男が、ソファをブーツの硬いソールで軽く蹴り、宙へ浮かび上がる。  「文句があるならメシ抜きだ」  低い声で、髭づらのスキンヘ

        • 見送る岸辺、人間の家:芦奈野ひとし・ARIA小論

          1.人の家  水の星アクア、海に沈みゆく町ヨコハマ。平成初期の漫画界、アニメ界に、穏やかな、しかし確かな波紋を残した、水にまつわる二つの作品がある。  「ARIA」、そして「ヨコハマ買い出し紀行」である。  天野こずえ氏による、未来形ヒーリング・コミックと評された前者では、近未来の火星がテラ・フォーミングを施され、また地球にかつてあった町を模して新しい町をつくり、あるいは移築を行ない、火星に実在のイタリア水上都市ヴェネツィアが再現されている、という設定を基軸に物語が進行

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        ほしのこえと出会った日

          壁と役割

          ふたりの幼い少女たちが僕に向かって言う。 「おこってー」 僕にはわからなかった。つまり、僕は日本語をわからないのではなくて、おこるための方法を知らなかった。それは僕の方法ではなかった。 僕はためしにおこってみた。 「こら」 「どうして、いうことをきかないの」 少女たちはわらった。 「ふふ、こわくなーい」 僕は精一杯だった。 大人がなにかをこどもたちに説明している。こどもたちは静まって、一様に座って、半ば義務的に、あまり意義のない説明を、よけいにながたらしい説明のもっともらし

          「アバター・ウェイ・オブ・ウォーター」の遠い浅瀬

           Oel ngati kamänge, Avatar: The Way of Water. 僕はひさしぶりに、こんなに退屈な映画を観た。  映画は3時間弱。Disney+での鑑賞だったが、全くの苦痛だった。別の作業を合間に挟みながら、どうにか断続的に観終えた。しかしながら、素晴らしい命のきらめきもあった。なぜ僕はこの映画を観たのか、途中退席をせずに観通したのか。話したいことは多い。 「アバター」(2009)も、公開時には劇場で観て、それなりに感動を受けとった。近未来、魅

          「アバター・ウェイ・オブ・ウォーター」の遠い浅瀬