舞台【世界が消えないように】の早乙女碧についての想像

碧はとても不器用な人。
ほんとは自分の事見てほしいけど、見てくれなかった時に傷つくのが怖いから、初めから無関心なフリをしている。
求めて拒絶されるのがとても怖い。
ヘッドホンはその象徴の一つ。
黒っぽいシンプルな格好をしてるのもそう。
でも世界はそんな碧を一瞬で受け入れてくれた。
肯定してくれた。
呪いになっていた名前を"素敵"だと言ってくれた。
でも世界が居なくなってまた戻ってしまった。
世界を失った哀しみさえ外に出す事が怖かった。
また平気なフリをした。
関係ないと自分に言い聞かせた。
誰よりも世界の死に苦しんでいたくせに。

唐突にチップの話をした時、本当は就職の事を言い出すつもりだった。
でも結局言えなかった。
だから誤魔化すために咄嗟にあんな話をした。
でも空が"わかるかも"と言ってくれて少し嬉しかった。
続けてよく分からない話をしだす空に安心した。
思い付きの割には悪くなかったかも。

みんなが雷の中に世界を見たと言った。
俺はそんなもの見えてない。
自分に言い聞かせた。

取り乱す大智の姿を見て、あの日の罪を再認識してしまった。
俺のせいじゃない!
罪悪感を振り払うために、あの日の感情を思い出さないために、なんでもないフリをするために酒を飲んだ。
航太郎の言葉は図星だ。
もう逃げたくないのに…
航太郎の最後の言葉…嬉しかったのに。
素直になる方法がもう分からなくなってしまった…

グランドキャニオンで叫んだとき、やっと少しふっ切れた気がした。
嫌われても避けられても、素直にさらけ出してみようと思った。少し。
就職の事を打ち明けたらみんなに揃って"知ってたよ"と言われた。
なんだよ、俺がどれだけ悩んで苦しんでたと思ってるんだよ!
…くだらない。
なんでこんな事で悩んでたんだ。
もっと早く打ち明ければ良かった。
受け入れてくれないんじゃない、見てもらえないんじゃない。
俺がみんなの事見てなかっただけだ。
出会った時からずっとこんなに見てくれていたのに。
いつでも受け入れてくれたのに。
ごめんな。
ありがとう。

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