オリジナル作品「台詞ドロボウ」
「台詞ドロボウ」
はじめに
趣味で制作している台本です。以下利用規定です。
どのような公演であっても使用料は不要です。
必ず稽古が始まる前に使用連絡をお願いします。
広報物やパンフレットに作者クレジットの記載をお願します。
読み合わせに使用した場合、連絡の義務はありませんが、連絡していただけると嬉しいです。
何か質問や相談などありましたら気軽にお問い合わせください。
作者クレジット:星水慕
登場人物
勇者
台詞ドロボウ
盗賊
戦士
(兼ね役あり)
勇者の母
村長
村の子供
村人
村の男
村の女
村の妻
村の旦那
店主
村人
村の子供2
村の子供2の親
合計16人。兼ね役都合により最低人数9人
注意事項
本編中に台詞ドロボウが台詞を盗む瞬間があり、盗まれた側は「・・・・・・!」を使って表現しています。泥棒側は「~~~」という風に表記しています。また、作中内で「台詞」として扱われている台詞は「」で記載しています。適宜見分けの方をお願いします。
台詞ドロボウが台詞を盗む際に特定のモーションかサウンドがあればよいなと考えています。製作段階の仮案として右手の指パッチンを採用しているため、脚本中に「左手で指パッチン」が出てきます。演出によって変更していただくようにお願いいたします。
本編
母親 「あんたに話があるんだ。あんたはね、勇者の生まれ変わりなんだ・・・・・・驚くのも無理はない。急な話だからね。だけど、本当のことなんだ。あんたは旅に出て、魔王を倒す運命にあるんだよ。行ってくれるかい?」
システム音
母親 「あんたならそう言ってくれると思ったよ。あんたは自慢の息子だ。今日はゆっくり休んで、明日の朝出発するといい。その時は村の人間総出で見送るよ」
一晩明ける
母親 「・・・・・・!」
泥棒 「どーろぼー!!!!」
母親 それは私の台詞だよ!
泥棒 俺こそは台詞ドロボウ!お前の台詞は頂いた!
母親 うちの金と薬草も盗んだろ!
泥棒 ギャラがないんだ!自分で調達するんだぜ!
母親 何が台詞ドロボウだ!ただの泥棒じゃないか!
村子 うわーん!!!
泥棒 どうしたんだい!坊や!
村子 こけて、足を、すりむいて・・・・・・
泥棒 それはいけないな!大けがだ!この薬草をあげよう!
母親 うちの薬草だろ!?
泥棒 いいじゃないか!薬草なんてどうせ余るんだ!
母親 何を勝手なこと言ってんだい!
泥棒 薬草って言うのはそういうもんだ!だいたい、薬草のひとつ、金銭のいくらかで文句を言わないで欲しいね!聞いたよ!あんたの息子さんが勇者になったんだってな!報奨金たっぷり!子供からの羨望間違いなし!ケチケチしちゃいけないよ!
母親 あんたに言われる筋合いはないよ!まだお金は貰ってないし、第一あの「・・・・・・!」
泥棒 「バカ息子が勇者だなんて世も末!」
母親 盗るんじゃない!
勇者、入場
勇者 母さん!どいつだ泥棒ってのは!
母親 「・・・・・・!」
泥棒 「あいつだよ!あいつ!あいつが台詞を奪っちまうんだ!」
勇者 なぬ!そうか!こいつが!
勇者、母親を睨む
母親 それはあたしだろ!あいつだよ!あいつ!
勇者 あいつかー!
泥棒 そうともよ!俺こそは台詞ドロボウ!台詞や運命に縛られた哀れなキャラクターたちよ!お前らを救いにきてやったぜ!
勇者 台詞ドロボウ!?台詞・・・・・・どろぼう?
泥棒 まだ俺の力を分かってないらしいな
勇者 「・・・・・・!」
泥棒 「そんなことはない!」って顔だな
勇者 くそ!これが台詞ドロボウの力なのか
泥棒 こんなことも出来るんだぜ
泥棒 あの泥棒は大事な物を盗んでいきました。私のハートです。きゃっ!奥さん乙女!
勇者 母さん!?
母親 捏造するんじゃないよ!
勇者 俺!あいつが父さんになるなんて嫌だよ!
母親 違うって言ってるでしょ!
勇者 俺はいやだ!
母親 ちゃんと話を聞きなさい!
泥棒 なはは!愉快!愉快なり!今日の所はここまでだ!また遊ぼうぜ!さらばだ!グッドバイ!
勇者 お前!「・・・・・・!」
泥棒 「覚えてろーー!!!」
勇者 ちくしょう!あいつ!なんか悔しい!母さん!俺、あいつのこと追いかけるよ!
母親 あんた、勇者としての使命を忘れたのかい?あんたは旅に出て、魔王を倒さなきゃ
勇者 勇者の伝説は小さい頃から聞いてきた。俺が憧れた勇者ってのは、困った人を放っておけない、魔王を倒すのが勇者じゃない。人を助けるのが勇者なんだ
母親 ・・・・・・
村長 よく言った
母親 村長
村長 お前に勇者の自覚が芽生えているようで何よりじゃ。時に、かの魔王に勝つために必要な者がなにか、答えられるか?
勇者 強い武器?
村長 いや
勇者 力?
村長 そりゃ、お前には有り余っておるじゃろ
勇者 ぱわー?
村長 もういい・・・・・・
勇者 魔法!
村長 お主はMPが足りんな
勇者 マジックポイント!
村長 正確にはマジックパワーじゃ
勇者 俺に足りないのはマジックなパワーだったのか
村長 違う
勇者 ちがう!?
村長 お主には力も知恵も、まぁ、勇気はあるが、仲間もレベルも、ひとまず何もかもが足りとらん
勇者 辛辣過ぎん?
村長 この旅でまずは仲間を集めるが良い。ついでに体を鍛えなさい。そしてなによりも大切な頭脳を鍛えるのじゃ。この旅はいわばお前の武者修行になろう
勇者 村長ー、質問があるんだけど
村長 なんじゃ?
勇者 仲間よりも頭脳が大事なの?
村長 あんま言わんようにしとったがな、お前アホなんじゃ
勇者 えぇ?
村長 アホに仲間はついてこん。これは村長としてのアドバイスじゃが、皆とまとめるリーダーとは、頭脳明晰で判断力に長けてなければならん
勇者 わかったよ
村長 ついでに儂のお金も取り返してきてくれ
母親 村長も泥棒の被害に?
村長 実は台詞と金を盗まれた
勇者 ますます許せんな!
村長 その気持ちを胸に行くのじゃ!あの泥棒を捕まえるのじゃ!
勇者 おう!俺の旅はここから始まるんだ!待ってろ泥棒!待ってろ魔王!ガンガン行くぜ!
別場面、台詞ドロボウの逃亡。隣町の設定
泥棒 ここまで逃げれば流石に追ってこれまい・・・・・・やぁ
村人 「ここは始まりのまち、この辺りは平和だ。ゆっくり準備を整えていくといい」
泥棒 ありがとよ。お前もそのうち楽しくしてやるからなぁ
泥棒、町を歩く
泥棒 こちら旅の探偵です!依頼をこなした後、旅に出て別の街に行きますので後腐れなし!お悩みならばなんでもござれ!相談料無料!さぁ、いかがですか!さぁさぁさぁさぁ!
村男、近づいてくる
村男 ・・・・・・
泥棒 ・・・・・・
村男 「・・・・・・!」
泥棒 「・・・・・・」
村男 探偵さん
泥棒 はい。ご依頼で?
村男 まぁ、悩み事というか、なんというか
泥棒 周りには話しにくいことなのかな。安心して、僕は探偵。守秘義務がある
村男 ここじゃ、あれなんで、少しはずれで
移動
泥棒 さて、依頼内容を聞こうかな
村男 探偵さんに相談する話かは分からないんですけど
泥棒 いいよ。探偵って言うか、便利屋みたいなもんだから
村男 僕の、告白を手伝ってほしいんです!
泥棒 へぇ!面白そうな依頼じゃないですか
村男 受けてもらえますか?
泥棒 よかろう。報酬は今日の宿代と飯代でどうだろう。30ゴールドぐらいかな
村男 大丈夫です
泥棒 さぁ、じゃあ早速現状を聞こうかな。そしてこれからのプランを練っていこう
村男 どこから話せばいいか
泥棒 少し探偵らしい所を見せようかな。君のことを当ててみよう
村男 はい
泥棒 そうだなぁ、まず君はかなりシャイだ。どうだい?当たってるかな?
村男 そうですね。緊張しぃな方だと思います
泥棒 僕に話しかける時も、かなり緊張していたからね
村男 そういう所を見ているんですね
泥棒 あとは、そうだな・・・・・・君の恋はうまくいくんじゃないかな
村男 どうして分かるんですか!?
泥棒 僕の占いによると
村男 占いなんですか!?
泥棒 僕は占い師であり、便利屋であり、探偵なんだよ
村男 なるほど・・・・・・
泥棒 時に、君は運命を信じるかな?
村男 なんですか急に
泥棒 いいいから、答えてみてよ
村男 運命ですか・・・・・・あんまりあると思いたくはないですけどね。自分のやってることが全て無駄な気がして
泥棒 そうか。だが、残念ながら運命に似たものは存在するんだよ。例えば、自分が次に言う台詞が決まっているとしたらどうだろう。その現象が会話をしている全員に起こっていることも考えてみて欲しい
村男 それは・・・・・・どうなるんですか?
泥棒 未来が決まっているに等しいということだよ。この世が思考すら既定された人形劇になる
村男 はぁ
泥棒 僕は、またの名を台詞ドロボウ。相手の次の台詞を盗むことができる。そうして新たな無限の選択肢を提示する。既定路線からの逸脱、台詞からの解放。つまりこれは運命からの解放する能力なのさ
村男 そんなすごい事ができるんですね
泥棒 君の運命だって、僕に話かけた時点で大きく変わっている
村男 ほんとですか!?
泥棒 君が、そのあがり症のまま意中の人に告白していたとしたら、かなりの確率で失敗していたと思うのだが、どうかな
村男 その通りだと思います
泥棒 そこでだ。僕のこの能力を使う時が来た。よく聞いて、プランはこうだ
村男 はい
泥棒 君はまず勇気をふりしぼって、想い人を呼び出し告白のムードにする
村男 はい
泥棒 そこで緊張して言葉が出なくなったら、僕が君の空白という台詞を盗む。運命的な空白を盗むんだ。そうすれば君は台詞に縛られることなく、自由な告白を行える。あとはあがり症との闘いだね。指パッチンの音が聴こえたらチャンスだ。漢を見せる時だよ
村男 成功するでしょうか
泥棒 分からない。僕は未来が見える訳じゃない。次の台詞までしか読めないから。でも、きっとうまくいくさ
村男 分かりました!
泥棒 どんな子なんだい?
村男 酒場の看板娘で、幼馴染なんです。ずっと前から、好き、だったんです。きっと思春期なんかより、もしかしたら生まれる前より、もっと前からかも。そんなことを思うぐらい好きなんです
泥棒 なんだ、案外大丈夫そうじゃないか
村男 なんですか?
泥棒 なんでもないよ。ほら、善は急げだ
村男 今は店の手伝いをしてるはずです
移動
泥棒 グッドラック
村男 ・・・・・・
村女 どうしたの?
村男 ・・・・・・
泥棒、左手で指パッチンをする
村男 効いてほしいことがあるんだ
村女 うん
村男 ずっと前から好きでした。付き合ってください!
村女 ・・・・・・はい、よろこんで
祝福の音楽
村男、探偵のもとに
村男 探偵さん。ありがとうございました。おかげでうまくいけました
泥棒 いや、実はね、僕は台詞を盗んでないんだ
村男 え?
泥棒 なんか、放っておいても告白してた
村男 え?
泥棒 意外と自分が思ってるより、自分は勇敢なもんさ
村男 そうですか
泥棒 もう覚悟は決まってたってことだよ
村男 今日、彼女の誕生日だったんです。だから、絶対今日にしようと思ってたんです。そしたら、探偵さんが来て
泥棒 偶然だね
村男 とても運命的ですね
泥棒 ・・・・・・そうだね。でも、幸せになったのは運命のおかげじゃない。自分の勇気のおかげだよ。自分で選んで掴んだ未来なんだ
村男 はい
泥棒 もう数件仕事をしてから次の旅に出ようと思うんだけど、いいかな
村男 はい!ありがとうございました!占い師で、便利屋で、優しい探偵さん。最後に名前を聞いてもいいですか?
泥棒 名前?名乗るものはないよ。台詞ドロボウ。探偵さ。困ったことがあればおいで。僕はいつでもbarにいる
泥棒、少し町を歩いた後、宣伝を開始する
泥棒 依頼をお待ちしております。旅の探偵でございます
村妻 依頼、いいですか?
泥棒 はい、勿論
村妻 不倫調査と頼みたいんです
泥棒 よろしい、受けましょう。調査対象は?
村妻 主人です。最近帰りが遅くなっているのが気になって、少し自分で探りを入れてみたんですけど、結構怪しいかなって感じで
泥棒 私のスキルはこういう調査にぴったりと言えます。私はまたの名を台詞ドロボウ。台詞を盗むことができます
村妻 その能力を使ってどうするんですか?
泥棒 まず、変装をして旦那様を尾行します。安心してください。私はプロですので、奥様も一緒に尾行することも可能です。そして、旦那様が浮気相手と会った場合は、少し離れて監視を続けます。最後に僕が旦那様の台詞を盗み、奥様の前で話します
村妻 するとどうなるんですか?
泥棒 旦那様にとびきりの恥をかかせられます
村妻 それでいきましょう
旦那を尾行開始
泥棒 おや?旦那様が若い女性と話していますね
村妻 あの女、うちの店の常連です。旦那目当てだったんですよ!
泥棒 まだ確証が持てません。台詞を盗んでみましょう
旦那 「・・・・・・!」
泥棒 「愛してるよ。うちの嫁なんかよりずっと綺麗だし、気が利くし、出会う順番が違ったら、そのもしもがあったら、僕たちの運命も違っていたんだろうね」
村妻 ・・・・・・
泥棒 どうしましょうか、奥様
村妻 話(ナシ)を付けてきます
泥棒 ごゆっくりどうぞ
村妻 なんてことしてるの!あなた!
旦那 ひぃ!
村妻 あんたも、二度とうちの店に来るんじゃないよ!この泥棒猫!
何かに気づく泥棒
泥棒 来たか!勇者!
村の入り口、勇者が来る
勇者 ようやく次の町に辿り着いたぞ。次の町なのかここ?ここ、どこだ?やぁ
村人 「ここは始まりの町。この辺りは平和だ。ゆっくり準備を整えていくといい」
勇者 そうか、ありがとう。ところでここに泥棒が来なかったか?
村人 「・・・・・・!」
泥棒 「ここは始まりの町」お前はどこから来たんだ?田舎もんのあがりっぺ!
勇者 あ!あいつ!やっぱりこの町に来てやがったなぁ!
村人 どういう事だ!俺の台詞が盗られたぞ!あいつ!さっき来た探偵じゃねぇか!
勇者 探偵って名乗ってたのか。だが、違うよな!そうだよな!台詞ドロボウ!
泥棒 そうともよ!名乗ってやろう!俺は台詞ドロボウ!お前らの台詞を盗みに来たぜ!
村人 台詞ドロボウだと?
勇者 あんた、さっき台詞を盗まれてたろ?あいつが犯人ってわけだ。って誰が田舎ものじゃ!ごらぁ!
村人 俺じゃないよ!好き勝手に付け足せるだろ!
勇者 なるほど、それもそっか
村人 ひょっとしておまえ、アホか?
勇者 なんだと!?
泥棒 町の人間ってのはこれだから嫌だね
村人 なんだと!?
勇者 いや!俺じゃないって!
村人 しょうがねぇから信じてやるよ
泥棒 なはは!愉快なり!いいじゃないか!みんな生き生きしてるぞ!
勇者 おい、これからあいつを取っ捕まえるから、巻き込まれたくなきゃ離れておきな!
村人 わ、分かった
勇者 さんざっぱら逃げてくれやがって!覚悟しろ!
泥棒 勇者!いい物を見せてやるぜ!おい!勇者、あれを見てみろ!
勇者 えー!
町の至る所で自分たちの事情で騒ぐ住民たちのカオス
村女 私のこと、いつから好きだったの?
村男 え?
村女 教えてくれてもいいんじゃない?
村男 それは、その
村女 シャイもほどほどにしなきゃ
村男 実は・・・・・・
旦那 すいませんでした
村妻 いつから浮気してたんだ?
旦那 いったん落ち着きましょう
村妻 落ち着いてるよ
旦那 一年ぐらい前からです
村妻 いつからあの女を意識したんだい?
村男 一目見た時から
旦那 一目見た時からです
村女 ほんと?ありがと
村妻 なんてこった
村男 気になったんだけどさ
村女 うん?
村男 なんでオーケーしてくれたの?
村妻 あの女のどこがそんなによかったのさ
旦那 そのなんというか
村女 優しい所かな
旦那 優しい所かな
村男 優しい所?
村女 これまであった中で一番やさしい人だったから
村妻 あたしが優しくないってか
旦那 いや、別にそうは言って・・・・・・
村女 これからデートしよっか
村男 いいね
村妻 家で詳しく話そうか
旦那 はい・・・・・・
勇者 あ、お幸せに・・・・・・あ、冷静にお話するんですよ。暴力に訴えかけちゃダメですからね。お二人さん、ああなっちゃダメですよ。浮気、だめ、絶対。あの、はい・・・・・ははは
村の住人たちがはけていく
勇者 なんだこのカオスは。これも全部お前の仕業か!台詞ドロボウ!
泥棒 そうだ。俺がこの町にある悩み事を解決して回ったのだ。探偵としてな
勇者 この町の秩序を取り戻すためにも、今日は捕まえてやるぞ!
盗賊、登場
盗賊 「なんだか今日はうるせぇな。おい、ちょっと待った」
勇者 誰だ、お前
盗賊 「・・・・・・!」
泥棒 「俺は盗賊だ」
勇者 お前が人の物を盗んでいるというのは、俺がよーく知っている。だから黙っててくれ
盗賊 「・・・・・・!」
泥棒 「違う!俺は盗賊だ。泥棒ってのはあいつのことだろ!?」
勇者 だそうだが?お前、泥棒なのか?
盗賊 お前はアホか!俺が盗賊、あいつが泥棒!
勇者 そうか!あいつが泥棒か
盗賊 知ってたんだろ!もとから!お前、あいつを追ってきたんじゃなかったのか!?
勇者 そうだそうだ、そうだったんだ。よくも騙したな!
泥棒 騙したって言うか、なんていうか
勇者 もう許さん!そこで待ってろ!今行くからな!
盗賊 「・・・・・・!」
泥棒 「おい、待てって!」
勇者 待たん!
盗賊 おい!それは俺の台詞だ!
勇者 お前も一緒に来るか?いいぞ!ちょうどソロプレイ中だ!仲間なら歓迎してる
盗賊 違う!落ち着け!話を聞け!
勇者 なんだ
盗賊 このまま追っかけて捕まえられると思うか?
勇者 思う
盗賊 ・・・・・・
泥棒 捕まるわけないだろ
勇者 なんだと?
泥棒 そいつが言ったんだよ
盗賊 言ってはいないが、同じことを思ってた
勇者 じゃあ、どうしようってんだよ
盗賊 俺が手伝ってやる。のんびり休んでたのに、あいつが来てうるさくなったからな。作戦は単純だ。ここは原始的かつ古典的な、挟みうちで行こう
勇者 「・・・・・・!」
泥棒 「挟みうち?卑怯じゃないか」
盗賊 へん!泥棒にかける情けも人情もないのだ!
勇者 あいつ!また台詞を取りやがって
盗賊 なに?じゃあ今の台詞は、まさかお前か?
勇者 ああ。よし、挟みうちだな。気が進まんがそれでいこう!
盗賊 ああもう!バレちゃしょうがねぇ!行くぞ!
勇者 おう!
泥棒 そう簡単に捕まえられると思うなよ!
どったんばったん(舞台の形状、演出の幅などを自由に使う)
盗賊 おい!そっち行ったぞ!
泥棒 こっちに来た!
勇者 おい!そっちじゃねぇか!
泥棒 さらにアクセント!くらえ!目くらましの術!
目くらましの演出(スモーク、ひきわり幕、暗転など)
勇者 くそ!小癪な!
盗賊 ちょこざいな!
泥棒 さぁ!楽しくなってきたぜー
勇者 左手側に逃げたぞ!
盗賊 左手側ってどっちだよ!
勇者 町の入り口を背に左だ!
盗賊 「・・・・・・!」
泥棒 「そっちにいったぞ!」
勇者 こっちか!?
盗賊 待て!台詞を盗まれた!
泥棒 違う!俺も台詞を盗まれたんだ!
盗賊 むむ!?騙されるか!そこだ!
勇者 手を挙げる泥棒はもはや盗賊に同じ!でりゃ!
双方殴り合う
盗賊 ・・・・・・
勇者 「・・・・・・!」
泥棒 「どうして、こうなるの?」
二人、倒れる
泥棒、盗賊の服を弄る
盗賊 おい、何をする
泥棒 こいつはギャラに貰ってくぜ
盗賊 まて、そいつは「・・・・・・!」
泥棒 「俺の生活費」にさせてもらうぜ。台詞とギャラは頂いた!さらば!
泥棒、どこかへ逃げる
盗賊 おい、旅人
勇者 なんだ盗賊
盗賊 俺もやつに借りができた
勇者 ついてくるか?
盗賊 もちろんだ
勇者 今日のところはこれぐらいで勘弁してやるか
盗賊 ところでだが、俺は今金がねぇ
勇者 俺もだ
盗賊 は?お前一文無し?
勇者 そうだ
盗賊 ひとまず、今日は俺がとった宿に泊まろう
勇者 先払いだったか
盗賊 明日は早朝から動くことになるぞ!準備をしておけよ
勇者 ?おう!
盗賊 夜が明けたらここから近い町へ出よう。どうせこの町には戻れねぇ
勇者 分かった。俺は勇者。絶対あいつを捕まえる。そしていつか魔王を倒すんだ。これからよろしく頼むぜ
翌日
次の町
盗賊 よし、着いたぜ
勇者 まさか勇者が宿屋から逃げることになるとはな・・・・・・
盗賊 ま、追われるのも勇者の宿命かもな
勇者 多分そういうことじゃねぇ
盗賊 ここは宴の町、ハマンだ
勇者 ハマンか、賑やかだがいい町じゃないか
盗賊 一応取引して現金が出来た。飯でも食うか
勇者 助かるよ。腹減ったぁ
盗賊 魔物でも食えばよかったじゃないか
勇者 やだーー!
店に入る
店主 「旅の人か。何か食べていくか?ここは宴の町、酒と飯ならいつでもいいぜ」
盗賊 ありがとよ。あんまり金がねぇんだ。安く頼むぜ
村人 「おい、向こうがすごいらしいぜ」
飲み比べをしている
盗賊 飲み比べか、いいねぇ
勇者 近くで見てみようぜ
酒豪 「・・・・・・!」
泥棒 「まだまだいけるぜ」
酒豪 「・・・・・・!」
泥棒 「おい、ペースが落ちてるんじゃねぇか?」
「なんだこりゃ?」
「おい、どういうつもりだ!」
勇者 おい、あいつ!
盗賊 ああ、見つけたぜ!
勇者 すごく酒強いな!
盗賊 よく見ろ!あいつ泥棒だ!
勇者 なに!?ほんとだ!あいつ酒が強かったのか
盗賊 いや?ベロベロっぽいぞ
泥棒、倒れる
盗賊 あ!倒れた!
酒豪 お前!変な術を使いやがって!
盗賊 気を付けろ!そいつは台詞ドロボウ!俺たちの台詞を奪っちまうんだ
泥棒 そうともよぉぉぉぉ!俺様は!王様!ひっく
勇者 あいつ王様だったのか
盗賊 酔っ払いだろどう見ても!
泥棒 そうともぉぉぉぉ!俺は台詞ドロボウ!この世の台詞は全ていただきます!ごちそうさま!
酒豪 あいつ、ひょっとしてすげぇ酒が弱いんじゃねぇのか
盗賊 多分よっぱらってあんたの台詞を奪っちまったんだ。おかげで素面の黙った酒豪と、べろんべろんの台詞ドロボウの完成だ
勇者 なるほどなぁ
泥棒 盗賊!ごちそうさま!
盗賊 てめぇ!ひょっとして俺の金で!?
酒豪 ん?あいつは本当の泥棒でもあって、お前の金を盗んだということか?
盗賊 ああ、そうだ
酒豪 それはハマン憲兵隊長として許せんな
泥棒 やべぇ!おまわりだ!
勇者 俺は勇者。あいつを捕まえるために来たんだ
酒豪 一緒に捕まえようぜ。俺は戦士。この町の兵隊長だ
盗賊 やつは逃げ足がはやい。いこう
泥棒 失礼!アデュー!
泥棒逃走
勇者 追うぞ!
盗賊 おう!
戦士 いくぜ!
町の外へ、ざっざっざっざ
勇者 待てこらぁ!
泥棒 おい!戦士!もう町の外だから管轄外だろ?
戦士 俺に管轄なんてもんは存在しないぜ。たとえ火の中!水の中!なんとかの中!
泥棒 ちくしょう!自由人め!もっと隊長っぽい人材はいなかったのか!
戦士 うちの離職率は四割だ
泥棒 ドブラック!
勇者 なんでそんなことになるんだよ
戦士 酔っ払いの喧嘩でもめ事が多いのと、アル中になるやつが大量にいてな
盗賊 ああぁ
戦士 さらにタチが悪いのが、元憲兵がアル中で揉めるもんだから大変でなぁ
勇者 そりゃなぁ
戦士 さらに最近結婚を機に辞めるやつも多くてなぁ。もっと職務に精を出して欲しいもんだ
泥棒 こりゃだめだ。素直に祝福してやれよ。気遣いのできないやつはモテないぞ
盗賊 うるせぇ!
勇者 痛烈なディスが盗賊に流れ弾となって襲い掛かった
戦士 余計なお世話だ!うちの隊の後輩が、家族の写真を入れたペンダントを持っていても、気を遣えない人が嫌いと言われてから、「この戦いが終わったら結婚するんだ」って言った隊員を後方支援に回していたとしても、何も気にしてないやい!
勇者 そんな話をしてる場合じゃないぞ!
戦士 あの野郎!絶対捕まえてやる!よし、ここは呪文を唱えてやろう。まずは俺達の足を速くする魔法だ
勇者 そんなことができるのか!?
戦士 まぁ、戦士のたしなみだな。速度魔法
戦士 「・・・・・・!」
泥棒 「タンゴ!」やっふぃ!
盗賊 あいつの足が速くなったぞ!
戦士 ちくしょう!盗まれた!
勇者 走りやすくなった気がするぞ!
盗賊 気楽でいいな。お前
戦士 これじゃ迂闊に魔法が使えない
盗賊 こうなったら、戦士。あれを頼む
戦士 おう!・・・・・・あれって?
盗賊 詠唱破棄だ
戦士 出来るかぁ!
戦士 くそぉ!もう一度だ
泥棒 懲りない奴め
戦士 盗めるものなら盗んでみろ。「(ぼそぼそ)魔法」
戦士 じばく!
戦士 あ
泥棒 逃げろぉ!爆発するぞ!
盗賊 何してんだよ!
戦士 泥棒が盗る!自爆する!俺達が捕まえるって計算だったんだよ!
勇者 あんまり頭良くないんだから!余計なことを考えるな
盗賊 そういうのを浅知恵っていうんだぜ
戦士 てめらぁ!道連れじゃ!
勇者 こっち来んなよ!
戦士 誰か!蘇生呪文を唱えれる奴は?
勇者 そんなのいる訳ないだろ!いのち大事に!いのち大事に!
戦士 後は頼んだぞ!
戦士、舞台袖にはける
ぼかーん!
勇者 戦士ー!
勇者、遅れ始める
勇者 もうだ、だめだ・・・・・・腹が減った・・・・・・
盗賊 俺も
泥棒 俺はアルコールが回って
全員止まる
泥棒 げっほげほげほ
盗賊 ぜーはーぜーはー
勇者 ふー
全員一度顔を合わせて、暗黙の了解とばかりに全員でもう一度呼吸を整える
勇者 なぁ泥棒
泥棒 なんだよ
勇者 なんで騒ぎを起こすんだよ。なんで人の台詞を盗むんだ
泥棒 ・・・・・・決まってんだろ。楽しいからだよ
勇者 迷惑なやつだ
泥棒 別に、俺だけの話じゃない。皆を幸せにして、俺も楽しくなりたいんだよ
勇者 わがままで自分勝手で、子供みたいだ
泥棒 俺にはそれでもいいかもな
勇者 ・・・・・・
泥棒 お前ら、運命ってどこまで信じてる
盗賊 俺は信じてねぇ
勇者 俺は信じてる
盗賊 信じてのかよ
勇者 俺は運命に選ばれて勇者になったから
盗賊 それもそっか
泥棒 俺は信じちまってる。次に発言されることが決まっている言葉を、俺は台詞と呼んでる。俺が盗んでいるのは、その台詞ってやつだ
盗賊 なに?
泥棒 例えば、町の入り口でひたすらに町の案内をするやつ。たとえば宿屋で値段の話ばかりするやつ。旦那の浮気に確証が持てず、問い詰められないやつ。皆、その台詞を言ったばかりに運命の言いなりになっちゃうんだ
勇者 よく分からん
泥棒 お前も運命に愛された人間だから。そういう奴だっているんだよな。
勇者 だからって、行く先々で騒ぎを起こしてたんじゃたまらないよ。これじゃ、俺はいつまで経っても魔王を倒せない。俺たちの邪魔をしないでくれ!
泥棒 騒ぎを起こさないことだけが良い事だと思うなよ!問題はとっくに起きている!いつだって事件ってのは現場で起きてるんだ!その解決を目指すのは、勇者じゃない。ヒーローだってそうさ!俺達にだって解決できる!
勇者 勇者の使命ってのは、困った人を助ける事。それだけだ
泥棒 お前の使命は魔王を倒すことだろ
勇者 それだって勇者の使命だ。勇者の使命は一つじゃない
泥棒 そうか。勝手にしてくれ。選ばれた勇者様よ。俺も勝手にやらしてもらう
勇者 待て!まだ話は終わってないぞ!
盗賊 勇者、決着をつけて来いよ
勇者 俺はお前を捕まえる。ここでケリをつけてやる
泥棒 上等だよ。最後の勝負だ
盗賊、退場
追いかけっこのスタート。最初こそ早足だが、徐々に歩きに変わっていく
泥棒 根性あるじゃないか!勇者!
勇者 うるせぇ泥棒!
泥棒 お前、勇者の伝承って知ってるか?
勇者 当たり前だろ!子供の頃の何回だって聞いた
泥棒 この状況、第八代の勇者にめちゃくちゃ似てないか?
勇者 あぁ、魔王が近くで逃げてるにずっと捕まえられないやつか
泥棒 行く先々で良い人ばっかり殺していくんだよなぁ
勇者 でも、あのブラックさも割と好きだなぁ
泥棒 俺は十一代の物語が好きだな
勇者 ああ、この世界のどっかには情けない王子がいるのかなぁ、会ってみたいもんだ
泥棒 会えるんじゃないか?勇者だからな
勇者 そう願ってるよ・・・・・・
泥棒 どうだ、勇者になった実感ってのは
勇者 実感がねぇよ
泥棒 大物だねぇ。選ばれた勇者様なんだもんな
勇者 お前のいう事はトゲばかりだ。なんで、そんななんだよ
泥棒 なんでもねぇよ。気まぐれだ
勇者 じゃあ、台詞ドロボウをやめるか?
泥棒 いやだね。俺は世界中の台詞を盗むんだ
勇者 じゃあ、捕まえなきゃな!
泥棒 はぁはぁはぁはぁ
勇者 はぁはぁはぁはぁはぁはぁ
泥棒 お前の方がばててるな
勇者 ばか言え、俺の方が回復が早いんだ
泥棒 お前はどんな勇者になるんだよ!
勇者 ガキの頃からなりたかった、困った人を助けるヒーローさ!
泥棒 勇者になってまですることがそれかよ!
勇者 何が言いたいんだよ!
泥棒 お前なんか、所詮、歴代の勇者よりもダメダメだってことだよ!
勇者 なんだと!聞き捨てならんな!
泥棒、視界の隅に怒られてる子供を見つけて立ち止まる
勇者 なんだ?観念したのか?
泥棒 あれ、見てみろよ・・・・・・
勇者 あれって、どれだよ
村の子供と母親の会話。それを眺める勇者と泥棒
村母 「教会を友達と抜け出して村の外に言ったんだって?」
村子 「・・・・・・」
村母 「しかも、お友達が怪我をしたんですって!?」
村子 「・・・・・・」
村母 「なにをやってるの!」
村子 でも、
村母 「言い訳しない!」
村子 「・・・・・・」
村母 「あんたは黙ってていいねぇ。お母さんはこれから牧師さんと、友達のお母さんに謝りにいかなきゃいけないんだよ」
村子 「・・・・・・ごめんなさい」
勇者 何があったんだ?
泥棒 あの子が友達と一緒に村の外に行って、モンスターに襲われたんだと。それで怪我を負っちゃったもんだから、お母さんがカンカンだ
勇者 そりゃ、叱られてもしょうがねぇよ。俺もよく怒られた
泥棒 あの子は何の言い分も聞いてもらえない。言いたい事はあるけど、言えない。言ったらママに怒られる。ママを騒がせたくない。だから、黙ってる。沈黙と謝罪の台詞を繰り返してるんだ。たぶん、これからも。悲しいだけの運命だよ
勇者 ・・・・・・
泥棒 だから俺は台詞を盗むんだ
村子 「・・・・・・!」
泥棒 「・・・・・・」
泥棒 この後、どうするのか、何を言いたいのかはあの子次第
村子 お母さん!勝手に外にいってごめん!僕ら、勇者になりたくて・・・・・・
勇者 勇者になりたくて・・・・・・か
泥棒 誰だってそうさ、あの頃、僕らは勇者だったんだ。魔物と戦って、村を平和にしたかった。困ってるやつを助ける。勇者ってのはヒーローだったんだ。でも、大人になるにつれて気付いてく。自分は勇者じゃないって
泥棒、子供に近づく、それに勇者がついて行く
泥棒 やぁ、少年。怒られてしまったね。君は勇者になりたいのか?
村子 うん!
泥棒 じゃあ、まずは沢山食べて大きくなることだ。あと、沢山寝ること
村子 分かった!お兄ちゃんは勇者なの?
泥棒 いや、俺は台詞ドロボウだよ
村子 お兄ちゃん、勇者みたいだね
泥棒 そっか。ありがと
勇者 あんまりお母さんを困らせるんじゃないぞ、少年
村子 うん。じゃあね
村子、はけ
勇者 分かったよ。お前が俺にやたら絡んでくるわけ
泥棒 ・・・・・・言ってみろよ
勇者 お前も、勇者になりたかったんだな
泥棒 ・・・・・・そうだよ。いつかなれるかもって思ったんだ。でも、新しい勇者が選ばれた。俺はもう勇者になることはない。悲しかったし、うらやましかったよ。だからかな、俺は台詞ドロボウになれた。魔王は倒せなくても、困った人を助けられるような、楽しくない世界を変えられるような、勇者じゃなくても、人を救えるような、そんなヒーローを目指したんだ。そのためなら寂しい一人旅だって受け入れた
勇者 俺は、町で起きた問題なんて解決してねぇな。お前がしてたのか
泥棒 浮気調査、不倫調査、告白応援。昔には素材集め、探し物、その他etc。勇者っぽい事がしたかったんだ
勇者 俺は、お前ばっかり見てたなぁ。子供も見落として、町の人の悩みも見落として。反省しなきゃな。帰ったら村の事を手伝うのも悪くないかもしれない
泥棒 お前はバカで真面目であほで素直だなぁ
勇者 なんだよ
泥棒 なんでかな、勇者っぽいよ。すげぇ勇者っぽい
勇者 急に褒めるな
泥棒 一勇者物語ファンとして認めてやる。お前は勇者だよ
勇者 ありがとよ。ただ、俺はたまたまそういう運命に選ばれただけだ
泥棒 俺は運命ってやつが嫌いだ。なんでもかんでも運命で、ろくなことにならない。俺がいくら頑張って運命から外れようとしても、結局それも運命だ。でも、台詞ドロボウは楽しかった。これが運命なら悪くない。そう思える。ようやく俺の生き方を見つけれた気がするよ
勇者 なぁ、泥棒
泥棒 なんだよ
勇者 お前、勇者のパーティに入れよ
泥棒 なに!?
勇者 ほら、せっかくならどうかなぁと思って。お前、よく考えたら金を盗んだこと以外悪い事そんなにしてないし
泥棒 だいぶ重罪じゃない?
勇者 確かに、その分働け
泥棒 ほんとに俺が勇者のパーティにはいってもいいのか?
勇者 ああ、勿論だ
泥棒 まじかよ
勇者 受けてくれるか
泥棒 ああ、こちらこそ、勿論だ
勇者 よし!泥棒!ゲットだぜ!これでパーティーが四人そろった!
泥棒 さて、どうやって顔合わせようかな
勇者 普通にしておけばいいって。戻ろうぜ。戦士生きてるかなぁ
泥棒 さぁ?
勇者 癪だけどよ。お前を追っかけてる時は楽しかったよ。たまには騒ぎも悪くねぇ
泥棒 そりゃどうも
パーティーメンバーと合流
盗賊 お、取っ捕まえてきたか
戦士 ちくしょう。えらい目にあったぜ
勇者 ということで、台詞ドロボウを仲間してきた
泥棒 よろしくー
戦士 えー!?
盗賊 そんな気はしてた
戦士 まじかよぉ
勇者 というか、戦士復活してんじゃん
戦士 盗賊さんにお世話になりまして
盗賊 俺が教会まで連れてってやったんだよ
戦士 なぁ、俺も仲間に入れてくれねぇか
勇者 よし、許そう。というか、お前もう仲間だろ
戦士 よっしゃ、これから面白くなりそうだ。さっそく辞表を書いてくるぜ
盗賊 さて、パーティーが四人になったのがいいが、この先どうするんだ?
勇者 俺は一度村に戻ろうと思う。着の身着のまま飛び出してきたし
盗賊 俺もついて行こうかなぁ。どっちにしろ行く宛てもないし
戦士 俺も、すぐ戻ってくるよ
泥棒 俺どうしよっかなぁ
勇者 お前も来いよ。どうせ顔なんて誰も覚えてないって
泥棒 まぁ、顔を隠していいならいこうかな
勇者の生まれた村に戻る
母親 あら、お帰りなさい
村長 おお、お連れの方は仲間かな
勇者 ただいま。そうだよ
村長 台詞ドロボウはどうなったかの?
勇者 逃げられちゃったよ
村長 そうか。まぁこうして無事に戻ってきただけで十分じゃ。しかも仲間まで連れての。どうじゃ?ちょっとは頭は鍛えられたかの?
勇者 全然。なんにも変わった気がしない
村長 そうか。それでも仲間はついてきてくれてるんじゃな
勇者 一人でダメダメだった時に助けてもらったんだ。そういうリーダーもいるんじゃないかな
母親 どのぐらい村にいるの?
勇者 荷物を取りに来ただけ。すぐに出るよ
勇者 じゃあ、行ってくる
母親 いってらっしゃい
勇者 はーい
泥棒 どうして俺の事、言わなかったんだ?
勇者 ん?別に言うことでもないだろ?もう水に流れてどっか行っちまったよ
泥棒 ありがとう
盗賊 随分悪知恵が働くようになったじゃないか
戦士 こっからが本当の勇者の旅立ちってことか
盗賊 勇者一行(いっこう)の運命やいかに!
勇者 運命だってよ
泥棒 悪かろうが、よかろうが、起こったこと、なすこと、それが全て!運命があろうがなかろうが関係ねぇ!精一杯生きるだけだ!運命なんてこりごりだ!
勇者 そうだ!目指せ!打倒魔王!ガンガン行こうぜ!
盗賊 そういえば、泥棒。お前、俺に金返せよ
泥棒 え?
勇者 そういえば俺も
泥棒 え?
戦士 飲み比べしようぜ
泥棒 それはやだ
勇者 ひとまず今日の飯は泥棒のおごりだ
泥棒 そのお金はそういう運命だったってことで・・・・・・
勇者 うるせぇ!
勇者のパーティーがRPGのように歩いていく。
完