不適切保育はどうしたらなくなる?
ここ数年「不適切保育」が取り沙汰され、各メディアがこぞって報道しています。不適切という言葉も流行性を持ち、テレビドラマでも「不適切」をタイトルに用いて話題になるものがあるくらいで、一種のトレンドになっています。
従来、保育士や保育所に対しては「保育士は保育のプロだから、不適切な保育なんかあるはずがない!」「福祉や教育に携わる人に悪い人はいない!」という性善説が蔓延っていたように思います。
しかし、2022年、静岡県における園児虐待と保育士の逮捕を発端に全国で不適切保育が摘発されるようになりました。
不適切保育の定義は?
「不適切保育」にはどのような定義があるのでしょうか。その前に「不適切」とはどういう意味なのか? 不適切とは、「普通じゃない」「(状況に)ふさわしくない」「常軌を逸している」「正常な状態から著しく外れている」それによって「誰かが不利益を被る」ことを意味します。
では、不適切保育とは? これには実はしっかり定義があります。『不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き』(令和5年5月こども家庭庁)で、「保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為」と定義されました。同手引きには詳しい事例も載っており、一読しておくとよいでしょう。
保育所等における、職員によるこどもに対する虐待(上記「手引き」より抜粋)
不適切な保育はもっとシンプルに言ってしまえば、「子どもだけではなく、大人もやられていやなこと」となるでしょう。これ以上、詳細には説明できません。同手引きには、いくつかのカテゴリに分けて具体的な行為が並んでいます。現場を預かる保育者であれば、一つくらいは思いあたるものがあるのではないでしょうか。
重要なことは、今、自分がやっている保育が「実は不適切ではないかな?」という点検と確認です。ゴールは、不適切な保育を認めさせることではなく、なくすことです。保育者は、完璧ではありません。感情もあります。ただし、事前に失敗や不適切な行為に対して意識的に取り組んでいくことが必要です。
実際に保育現場では次の3つがポイントとなるでしょう。
1.自分の保育が不適切ではないかと疑ってみる
2.ぼやっとしている不適切の保育のイメージを明確にする
3.不適切の解消のために、車座になって皆で話し合うこと
この3つを定期的に点検することで発生を防ぐことができます。
また、不適切保育の発生理由に待遇の悪さも指摘されますが、本当にそれだけでしょうか? 保育者としての資質や素養は関係ないのでしょうか? さらに、加えるとすれば、保育への熱い心と、保育科学に基づいた保育の専門職であるという自覚と誇りが必要だと考えます。
保育を専門職と捉えるならば保育所保育指針が最も重要です。日々の保育からリスクマネジメントに至るまで拠り所となります。保育所保育指針については、オンライン講座でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
橋本圭介
社会デザイン学修士、社会福祉法人友愛会川口アイ保育園理事長、学校法人三幸学園 大宮こども専門学校専任講師、埼玉県の社会的養護を考える会 代表
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