襲の色目
最近、襲(かさね)の色目の本を買いました。
「かさねの色目 平安の配彩美」です。
気取っている訳じゃないんだけれど、こういう本はかなり好きです。
襲の色目については、今更、説明を繰り返すのも口幅ったいので省略しますが、学生の頃から、参考書などで色合いや名前を見比べるのが好きで、元から色については興味があったのかと自分で今更気づいています。若い頃、カラーコーディネーターの通信講座の資料を取り寄せた事もありますね。結局、通信は受けなかったけど。
この本では、かさねの色目の事を、
「重」で袷仕立ての衣の表と裏の裂を重ね合わせた色
「襲」で装束としてその衣を何枚も重ね着してその表にあらわれる衣色の配色
というふうに分けているので、読みやすく理解しやすかったです。
襲の色目についてだけではなく、平安時代の女房装束についても細かい説明が入っていたのもいいですね。
私の周りでは、文を書く女性が、学生の頃に一回はまるのが、色の名前だったような気がします。
普遍化は、出来ないんだけど。
色の名前にこだわり、画数とか字の見た目にもこだわっていく感じ。
それも暖色ではなく寒色系、紫と蒼(青)は特に強かったですね。マイナーな色の名前を調べてはっきり細かく書いていく。
なぜ知ってるのかというと、私も経験者だからですけど(笑)
襲のような純和風のものだけではなく、カタカナの名前も調べた事があります。それは後々、htmlやcssでサイト作りをしたときに役に立ちましたね。
襲の色目の面白いところは、春夏秋冬の式目と、通年の式目があるところで、そういう色合いのところから季節感を出す事は、現代のファッションでも出来るか……? と思って確認してみたところ、誰もが同じ事を思いついてるようだけど、生かせる人は本当に勉強した強者のようです。
例えば、今は四月ですから、暦の上では初夏。
卯の花ならば、表/白 裏/青(平安時代の青はほとんど緑)で、現代で着こなしても、涼しげかもしれません。
他に
葵 表/青 裏/淡紫 や、楝 表/薄色 裏/青 も、温暖化している現代の初夏にはあっていると思います。
一方で、若蛙手 表/淡青 裏/紅 とかは、これ、緑が淡いけど……現代の感覚で言うとクリスマスカラーですね。ビリジアンではないけれど、それが薄くなったような緑に、紅色。
他にも、全体的に、しっかりした色合いが多いようなので、薄く軽い色合いは少ないと思います。
今並べたのは、四月~五月頃に着たと言われる襲の色目ですが、その頃から夏に向かって、蓬、薔薇、橘、撫子……と現代でも、はっきりと季節を感じさせる色目の名前が続きます。
蝉の羽、なんて本当に透明感あふれる涼しさを感じさせますね。
これ、檜皮色に濃紫なんですけど、「蝉の羽」という名前だけで、一気に盛夏になってしまう。ちなみに、平安時代の色名で、動物にちなんだのは「玉虫色」と「蝉の羽」だけなんだそうです。
昔読んだ本で、当時の人々は、色を見たまま感じ取るだけではなく、頭で理解しながら色などを選んでいたということです。だから、色の名前も、聞いているだけで、和歌などを思い出してしまうようなセンスを感じます。
和歌に関しては全く不勉強の身の上ですが……美しい言葉とともに、時代を超えた色彩を感じられるのは、とても幸せな事ですね。