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少し寂しくなった忘年会の話

12月はなんといっても忘年会ラッシュだ。

「飲み会続きでやるべきことが全然できてない!」

と頭を悩ませている人も少なくないだろう。

かくいう僕も例外ではない。

休む暇もなく、

当直→飲み会→当直→飲み会…

とまぁひどいスケジュールだ。

妻子が里帰りをしていることもあり、ここぞとばかりに予定を詰め込んでしまっているのもある。

そんな中、つい先日地元の友人たちと旧交を温める機会に恵まれ、すこし思うことがあったので書いていこうと思う。

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何気ないLINEがきっかけで集まって飲み会をしようという話になった。

普段からよく集まるメンバーというよりは、たまたま日程と場所の都合が良かった人々が集まるざっくばらんな10人弱の会だった。

職種は様々だが、全員がサラリーマン

経営者独立勢は一人もおらず、医者のような「手に職」系の専門職すら僕だけだった。

飲み会の序盤は何度擦ったかわからない学生時代のくだらない昔話に花が咲いた。

バカ笑いをひとしきり終えた後、必然的に話題はキャリアについての話になる。

皆30半ばであり、一般業界ではすでに立派な中堅にあたる年齢だ。

そのメンバの一人にA君という友達がいた。

学生時代は僕とは同じ運動部で毎日のように顔を合わせていた仲だ。

A君は少々ヤンチャだが運動神経もよく、我が強く芯のある男だった。

男というより漢と言った感じだろう。

外から見る彼は自身に強い哲学のようなものを感じさせ、それを曲げることがなかった。

当時の僕は彼とは特別仲が良く、彼の人目を気にしない、歯に衣着せぬ物言いが当時から好きだった。

デリカシーが無いと言ってしまえばそれまでなのだが、時に部活の上下関係すら気にせず「それっておかしくね?」と、ずばっと言い切る姿勢を尊敬したことも少なくない。

そんなA君は現在中小企業で働いていた。

「ガツガツ働いてガンガン稼ぐ」、と言った会社ではなく安定志向のいわゆるライフワークバランスに優れた会社のようだ。

当時のキャラクターを考えると、もっとハードなところで豪快に働いていそうなイメージだったが、新卒での就活がうまくいかなかった。

転職を経て流れに流れ、今の職場にたどり着いた、という形のようだった。

「仕事はどう?」

そう聞いた時に、彼は言った。

「まあまあいいよ。そんな大変じゃないし。給料は安いけど。」

ライフワークバランスを存分に活かし、当日の17時から飲み会に参加していた彼はすぐさまそう返答した。

「あれ?こんなこと言う奴だったっけな?」

ちょっとした違和感が頭を掠める。

勝ち気で強気な彼なら、上司すら実力でねじ伏せ「俺の方が実績ありますから」くらい言い放ちそうな、そんな気概の男だったはずだ。

「そんな大変じゃないし。」


という発言も、どこか自分を納得させるような言い方に聞こえる。


A君は結婚しており子どももいる。


ライフステージの大きな変化があれば、自身の考えが180度変わるというのはよくあることだ。

特に子供が小さいうちは定時退社や時間の融通が効くことを重視するのは決して悪く無い。

実際に僕だって子供が生まれ、仕事との付き合い方を見直して、今に至る。

「まあ、そりゃ誰だって時を経れば考えも変わるよな。」


そう心の中で思い直し、先ほどの違和感は脳の片隅に置いて、他愛もない話をしながら楽しい時間を過ごしていた。

お酒も回ってきた終盤。

A君もだいぶ饒舌になっており、昔の調子で強気な尖った発言が増えてきた。

そんな中で飛び出した一言に僕は思わず酔いが覚めてしまった。

それはこんな一幕である。

「俺は社長に評価されているんだよ。よくそういうふうに声をかけてもらうし、若手でも1番可愛がられている。その証拠にボーナスが周りの奴らより多いんだ。」


誇らしげに語るA君。

僕は職業柄、歩合制のボーナスとは縁遠い職場で働いてきたので、個人の業績ボーナスの関係が今ひとつわからない。

社長からの評価が高く、周囲より実績があれば相当な金額が増えるのだろうか?

僕は純粋な疑問で聞いてみた。

「それって具体的にいくらくらいプラスでボーナスに反映されるの?」


A君の答えに、思わず僕は絶句してしまった。



「大体5万くらい俺は周りより多くもらってるよ。」

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5万という額を馬鹿にするわけではない。

5万は大金だ。高級レストランでディナーもできるし、ブランドの衣服だって買えるだろう。

それに勤め人としての給料以外の副業で5万を稼ごうと思うと、それはかなり大変だ。

その辺は身に染みてわかっているつもりである。

ただ、日々勤め人として月金9時17時で仕事をし、その中で「自分は評価されている」と自身で誇れるほどの働きぶりに対して「ボーナス+5万円」という事実を僕はどうしても理解できない。

超人達が言うように、ただ5万収入を増やすだけなら、それこそ”タイミー”でバイトした方が早い。

半年どころか、ひと月で5万くらい容易に稼げるだろう。

「もらった金」を誇りにするのであれば、半年で5万というのは、どう考えても割に合わない。

昔の彼なら、

「いや、それっておかしくね?」


そう一蹴していたような額に感じられてならないのだ。

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本来、勤め人であることの強みは給料それ位自体ではないはずだ。

「事業自体のリスクを負わなくて良い」とか、「会社というレバレッジを効かせて大きな仕事が出来る」といった点が現行のルール上での強みだろう。

解雇規制が厳しい現在では「安定」もそのひとつかもしれない。(この神話も近い将来崩れるだろうが)

給料が上がることは喜ばしいことだ。


僕だってもちろん嬉しい。それはわかる。


ただ、「上からの評価→もらえる金が増える」という餌に囚われていては、いつまで経ってもラットレースから抜け出せない。

お駄賃を当てにして生きるだけでは普通の大人は満足出来ないだろう。

本質的な「稼ぐ」という意味からは随分と遠いところにいる。


ここ半年で、僕自身の「給料」という概念に対するイメージがガラッと変わってしまった。


SNSやセミナー、リアルな飲み会で関わる人たちの影響が大きい。

皆、独立や副業という「個人で稼ぐ」を達成するために懸命に努力しており、そのための自己投資すら厭わない。

日々食っていくための繋ぎとしての給料は必要だが、その先を見据えて努力している。

同業である医者界隈も確実に外の世界へと動き出している。

崩壊しかけている保険診療、自身を取り巻く待遇の悪化に伴い、第2第3の手札を身につけようと長い労働時間の合間を縫って課外活動に参加している。


ついついそう言った人たちに囲まれていると、この考え方がスタンダードになっていく。

そんな環境から、一気に"普通の"同世代との宴でその温度差を体感することになってしまった。

程なくして宴会は終わった。

飲み過ぎたせいかもしれない。A君の「ボーナス発言」以降、僕の記憶は曖昧だ。

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僕だって副業を始めたばかりで大した額を稼いでいるわけではない。

それだけで食っていくのなんて夢のまた夢だ。


だからこそ、必死こいてやっている。

「副業」や「独立」は数年前まで「自分ごと」として捉えていなかったし、実際にリアルで「個人で稼ぐ」人たちをみかけるまでは現実的なイメージが持てなかった。

ただ、勇気を出して一歩飛び出してみると、そこにはたくさんの独立成功者たちがいた。

これからの未来は勤め人にとってますます厳しいものになる。

生半可な仕事はAIに代替される。解雇規制が緩くなれば、首はどんどん切られるだろう。

DX化がすすみ雇用の必要性も低下する。

人余りの時代がもうすぐそこまできている

そんな未来では、A君も「目先の金」よりもっと本質的な何かを必要としているかもしれない。

まだまだ目指すレイヤーの底の底にいる今の僕に彼を啓発する資格はない。



唯一できることといえば、

彼がこの先の人生で「5万円で納得させていた勤め人としての生き方」に疑問を持ち、人生を変えようと志したその時に、

「そういえばあいつなんかやってたな。ちょっと話でも聞いてみるか。」


そう思われる人間になることだけである。

僕自身も一歩前に進み出したのはつい最近だ。

人はいつでも変われるはずだ。


そしてそれを証明するには僕自身が変わらねばならない。

昔のように人目を憚らず我が道を進んでいくあの時の彼にもう一度巡り会いたい

心の底からそう思うのである。




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