目に映るもの全てがキラキラしていました。 空から落ちてくる大粒の雪。 それをみて、凄い!とカメラで撮るあなた。 楽しそうに笑う子供。 それをみて、幸せそうな親。 それをみて、微笑むあなた。 屋台で買った牛タン串。 硬くて飲み込めないというあなた。 光をバックに写真を撮る人々。 その空間が少し気まずく、イルミネーションにカメラを向ける私。 そこに、入ってくるあなた。 どの雪よりも、どの子供よりも、どの牛タン串よりも、どのカップルよりも、どのイルミネーションよりも、どの
私は、光っていないただのクリスマスツリーだ。 扉が開く度に、外のキラキラした世界が見える。それと同時に、凍りついてしまうほどの風が体を刺す。 帰ってきた人々は、矢継ぎ早に傘の雨粒を振り落としている。 雨が降っているようだ。 様々なオーナメントで装飾された自分の体を眺め、近くにあるランプの光に眩しさを感じながら、ふと扉の外の世界に目をやる。 装飾は私の方が多いはずなのに、キラキラと輝くクリスマスツリー達だらけだ。気に食わない。 これほど着飾っているのに。 私も光っ
あの喫茶店にてまたお会いしましょう。 あの時間に、 あの席に座って待っています。 待つのは得意なので、 あの本を読みながら時を過ごします。 あなたが来たら、 あの飲み物を頼んで、 あの会話で盛り上がり、 店自慢のあの食べ物を食べ、 お腹いっぱいになって、 あの時間にふと帰りたくなり、 帰り際に次の予定を立てる。 では、またお待ちしています、 あの喫茶店にて。
誰にも 見えない 誰にも 気づかれない あの子を 見つめては 目が痛くなって 擦った 何度も破れては 何度も縫い綴った 心が 心が 静かに崩れる音がした 柳に風が吹いては ゆらゆらと 動く感情を 引き出しに詰め 鍵をかけた 今は失いたい 語感に入る君 あぁ もうだめだ
空が青と赤のグラデーションをつけ始める頃、僕はいつも散歩に出かける。 そんな散歩中、道路を横切る猫に毎回出くわし、ハラハラするのだが、今日は一風変わった猫に出会った。 こちらを見つめながら、僕のハラハラ顔を見て、反応を楽しんでるかのように、道路を横切り走り去る猫だ。 まるで、どれだけ人間をハラハラさせることができるかチャレンジしているようだった。 そんな猫に見惚れながら歩いてると、頭に痛みが走った。 電柱にぶつかった。
先日、笑顔でこちらに手を振っていた 夏の背中が遠くに見える。 夏の後方から遠慮がちに現れた秋は、 緑の葉を赤や黄色に変えていく。 秋がいうには、 『もうすぐ冬が来る』 らしい。 その時、秋の遥か後ろから あたり一面を白色に変えながら、こちらにゆっくり歩いてくる冬の姿が見えた。
外で鈴虫が鳴いている。 超人がバク転する前に、観客に求める手拍子のようなリズムで鳴いており、 そこではおそらく虫界隈でのバク転選手権が開催されている。 優勝は間違いなくダンゴムシだろう。 あの選手は、転がることに関してはスペシャリストだ。 ただ、誰かが、押してくれないと自発的に回ることはできないのがマイナスポイントだ。 と、誰も興味がなさそうな大会の優勝虫を予想していたら、 また、次の選手が手拍子を求め、鈴虫が鳴き出した。