199 認識、知識は当てにならない

 我々が一番気をつけなければいけないのは、我々の認識、知識です。私たちの知識は真っ赤な嘘です。「人に殴られて痛い」というのは、痛いのだから嘘ではありません。しかし、それについて頭の中に出てくることは、ぜんぶ嘘なのです。「人に殴られて痛かった。まあ、痛かった」。それで終わるなら正しい。でも、「この人は私に恨みを持っているのだ」とか、「この人は精神的な病気だ」とか、「私はなんて不幸な人間か。今日はついてない。朝から嫌な目にいっぱい遭って、その上、殴られた」と、いろいろなことを頭で考えるでしょう。それはすべて根拠のない、真っ赤な嘘なのです。人間が思う存分、幻覚をつくって、それで生きている。「あいつはいきなり私を殴って、私にどんな恨みがあったのだろうか。私もいつかあいつに仕返ししてやらないといけない。どうすればいいだろうか?」などと、心でいろいろ考えることは、ぜんぶ、外の世界と何の関係もない、自分だけの幻覚妄想です。ですから、人間の知識も、人間の自由な認識も、まったく当てにならないものなのです。ですから人間は、しっかりとした智慧を得なければいけないのです。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第4章 幸福に生きるための秘訣《人間の真実》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの実践心理学第四巻2008年 p208】

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