71 自利か利他かという二者択一ではない
よく質問されます。「大乗仏教では自分のことを置いておいて、人々を救うために修行すると言っていますが、それをどう思いますか?」と。私の答えは「そんな、自分のことを置いておいて人を救うなんていうことは、ちょっと成り立たないんだ」と。具体的に言えばこういうことです。自分が地獄に堕ちるような生き方をしているのに、他人のことは天国に道案内してあげられるのか、という話です。だからお釈迦様は、「自分が泥沼にはまっていて、他人を泥沼から助けてあげるということはあり得ない」と、はっきりおっしゃっているのです。あり得るのは、お互い助け合って泥沼から立ち上がるということであって、あるいはちょっとだけ自分が先に泥沼から出ていて、ということなのです。導かれて導く、救われて救うという、「自利利他」ですね。自利か利他かという二者択一ではないのです。「道」という一つの言葉に尽きるのです。『一瞬で心を磨くブッダの教え』第2章 仏教の教えを理解する《仏教》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの歩き方 立松和平氏との共著 (2006年) p172】