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61 生も苦である
私たちは、「ご出産おめでとうございます」「お誕生日おめでとうございます」などと「生」を喜んでお祝いしています。
皆さんが、「これはたいへんめでたいことなのに、なぜ「苦」だと言うのか、よくわからない」と思うのは仕方がないことです。「生は苦である」という話は単純な感想でもなく、気休めに言っていることでもありません。客観的で厳密な因果法則に則って現象の世界を知り尽くした、智慧の完成者であるお釈迦さまの言葉なのです。
一般の人は「わからない」と思っても、理解できるように頑張るしかありません。
では、「ご出産おめでとうございます」という場合、幸福を感じているのは誰でしょうか? 生まれてきた赤ちゃんには、どうでもよいことでしょう。大人が自分勝手に喜んでいるだけではないでしょうか。生まれた本人にとっては、出産そのものが耐え切れないほどの苦です。生まれるときに赤ちゃんは、“生きるか死ぬか”というほどの危険に遭遇しています。
「おめでとう」と言われるようなことではなく、実際は「何とか命拾いしただけのこと」です。
そして、そこから成長することも苦の連続です。赤ちゃんの状況を無視して大人が大いに喜んでいるとしても、「生は苦」です。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第1章 私たちの悩みを解決する《苦》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【あべこべ感覚 役立つ初期仏教法話7」(サンガ新 022, 2008年) p124】