64 人と比べると生きづらくなる

 Māna 慢とは、「計る」「比べる」という意味です。生きている、認識しているだけで、「私」という概念が生まれてくる。その、「私」が生まれたところで、「私」を中心にして、「私」という殻を作って、その中から情報を比べること、計ることが始まるのです。Māna 慢という計りで「私」と他人を比べるのです。そういう思考態度は、「比べる」生き方というのは、すごく汚いのです。捨てた方がいいものです。みんな、とにかく比べる。それはすごい苦しみのもとなのです。比べる気持ちが入ったら、生きづらいのですよ。「あの人は上手ですよ。この人は下手ですよ。私はこうですよ」と比べたら、どれほど苦しいことか。その苦しみはみんな、比べること・慢から生まれるのです。慢を捨てれば、結構生きやすいのです。人と比べるのではなく、「自分にできることをやればいいし、できなければやめればいいし」という生き方だと、楽です。苦しくないのです。でもみんなすぐに比べるから、それで生き方がすごく難しくなる。しかし、よりよい、より正しい結論に達するために客観的に比較してみることは、知識を開発する手段の一つです。それは間違いではありません。「私」が自分を他人と比べることが間違いなのです。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第1章 私たちの悩みを解決する《苦》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの実践心理学 第三巻 心所の分析 p117】

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