ミュンヘンオリンピック 男子バレーボール準決勝の試合
オリンピック前から大人気で、『ミュンヘンへの道』というアニメも放送される過熱ぶりだった、全日本男子バレーボールチーム。
あまりの人気に、メディアは悪評を立てる始末。昔から、メディアはろくなことをしませんでした。
全日本の宿敵はソ連(どっちかというとソ連が少し優勢)。そのソ連は東ドイツに分が悪く、日本は東ドイツに強い。という三すくみが当時の世界の男子バレーボール界でした。
それが、オリンピック準決勝で、ブルガリアに負けそうになっている全日本。深夜のテレビ放送を見ていて信じられませんでした。全日本が負けるなら、相手はソ連しかないはずでした。
全日本の速攻も決まらず、ブルガリアのエースアタッカーのズラタノフ選手のスパイクは矢のように決まります。
弱り目に祟り目、全日本が選手交代に手間取ったところ審判からタイムアウトと認定されてしまうなど、誰もが「もう負ける。負ける要素しか見当たらない。」と思ったことでしょう。松平監督も池田コーチも敗戦を覚悟したことでしょう。
そんなとき、諦めない男が第3セットからコートに入ってきました。
かつて守備練習の苦しさに泣きだし、合宿から逃げ出した南正将でした。 彼は、東京オリンピック(東洋の魔女で有名な大会の方です。)での男子バレーボール銅メダリストで、身長は2メートルに少し足りないくらい。三島由紀夫の背を伸ばしたら南正将になるといっていい外観で、世界に顔が売れている選手です。最高齢ながらキャプテンにもなれず、時間差攻撃のオトリとしてジャンプし相手ブロッカーを引き付けるのが役目。のはずでした。
神懸かりというのは、南正将の活躍のことをいうのでしょう。
ブルガリア戦を持ち直したのは、南正将のおかげ。第5セットを取れたのは南正将と大古誠二のおかげといっていいと思います。
日本が準決勝のブルガリア戦に勝ったとき、私の魂は抜けてしまいました。嬉し泣きしてまぶたを腫らして学校に行ったのを覚えています。
決勝戦の相手は、準決勝でソ連に勝った東ドイツでした。
決勝戦がいつはじまったのか、いつ終わったのか全く覚えていません。見たことは見たと思います。最後のポイントは、嶋岡選手がボールを相手のブロックに当てコート外に出して取りました。
全日本男子バレーボールが取った金メダルはこのときのものだけです。
それにしても、「金メダルを取りに行く。」と宣言して、本当に金メダルを取った全日本。有言実行でこれ以上のものを見たことはありません。
後日、池田コーチがブルガリア戦を振り返って、「日本に帰ってどうやって謝ろう。」と思ったと語っていました。やはり、あのとき「負ける」と思ったんですね。
でも、松平監督は、そういうことを言ったの聞いたことありません。リーダーって、負けそうなときも「勝てる!」というものだそうですが、松平監督はリーダーですね。
ミュンヘンオリンピックでは、不幸なテロ事件があり、手放しで日本の金メダルを喜べませんでしたが、もういい頃でしょう。
ここに名試合として記したいと思います。
以上
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