傷を負ったら、放置すべきか消毒すべきか (1262文字)
私が子供のころ、転んだりして傷を負ったらすぐ消毒するように言われました。
だから、傷には消毒薬という組み合わせは必須のものだと思っていました。
ところが、テレビのバラエティ教養番組等で現役の医師や医療専門家と称する人は「傷に薬を付けると白血球も死んでしまい、傷の直りが遅くなる。」というようなことを言いはじめました。
消毒薬はばい菌とそれ以外の微生物とを区別して殺すわけではないと思うので、消毒薬が白血球にいい影響を与えないということは理屈として分かります。
また、白血球は体内の異物を攻撃して体を守ってくれるので、その機能を減じるようなことは避けたほうがいいことも分かります。
でも、消毒が傷の回復を遅らせるのであれば、そもそも消毒という概念もそのための医薬もこの世になかったはずです。
それに、「かつて親や先生からあれほど消毒の重要性を叩き込まれたことには意味があるはず。」という気持ちが抜けなかったので、ずっとモンモンとしていました。
そのモンモンとしていた間も、私は「傷には消毒」とずっと信じていて、自分が傷を負っても他人が傷を負っても消毒していましたし、消毒するよう奨めていました。
それが『人は、こんなことで死んでしまうのか!』(上野正彦著 株式会社三笠書房)の「破傷風で死ぬ」(p55)に、「(破傷風に)感染する機会は常にあるので、傷を負ったらすぐにオキシウルで消毒することが必要だ。」「『ツバをつけとけば治る』などと言って放っておくと危険な目に遭う。」と書いてあるのを見て、「そうだよね。」と思いモンモンでなくなりました。
この文庫本のカバーに「2024年2月5日第1刷発行」とあるので、内容が古いということはないと思われるのと、著者の上野正彦氏は監察医(不審死体や変死体の検案や解剖を行い、死因を解明する医師)だった方だと著者紹介にあるので、上記の「傷には消毒することが重要」という内容は信用していいと思います。
現在でもスペインなどの闘牛士は破傷風用のワクチンを打たれるといいます。闘牛士は注射器の針を刺されることを、牛の角に刺されることにつながるとして嫌がるというエピソードも聞いたことがあります。
どうして闘牛士に破傷風用のワクチンを打つのかというと、闘牛場には牛の糞(ふん)があり、そこに破傷風菌がひそんでいるからです。
私の子供のころは、日本脳炎や小児麻痺それに破傷風から子供を守ることが強く言われていました。
そういえば、私が小学生だったころ、他のクラスに車椅子の女子生徒がいました。
その子は小児麻痺で両足が動かないと聞きました。恐らく一生動かないでしょう。
私は、こういう大きな鎌を持った死神が驚くほど近くにいるような状況下に子供時代を過ごしたので、「動物の肉を食べないことを他人の強要したり、人間を襲う熊の駆除に反対する」連中のことをニュース映像で見る度に、「独りよがりな見解を他人い押し付ける連中がどんな最期を遂げるか見届けたい。」と強く思います。