『刑事マードックの捜査ファイル シーズン5第2話 不可解な弾道』 (1295文字)
カナダの大ヒットテレビミステリ『刑事マードックの捜査ファイル』のシーズン5 第2話は「不可解な弾道」です。
「弾道」という言葉通り、マードック刑事らは狙撃による犯罪を捜査します。
この回は、スチール写真、映写機、ろう管レコードなど近代的な道具を駆使した科学的捜査が行われます。
このドラマの時代は19世紀後半なんですが、指紋照合などはすでに実用化されているようですし、検視官が弾丸の入射角を調査するなど、だんだんミステリドラマ『科捜研の女』みたいになってきました。ただ、『科捜研の女』と違って、捜査は刑事や巡査(ときには警部も)が主体的に行います。
ところで、今回のドラマを3回くらい見返しましたが、捜査で割り出された狙撃地点について理解できませんでした。
これは、おそらく映写フィルムとスチール写真とを照合しているときに、マードックが「向かって左から」と言っているのを「被弾した人の左から」と私が解釈してしまい、その理解を修正するのに手間取ったことが原因だと思います。
言い訳をする分けではありませんが、それまでは弾丸が飛んできた方向を、被弾した人から見た方向で表し「その人の右方向から」というように言っていました。また、狙撃当初にジョージ・クラブツリー巡査は「銃声は被害者の右方向から聞こえた。」という人がいることをマードック刑事に報告しています。このときマードック刑事は「それは反響だ。」と判断しました。
つまり、真の狙撃地点として被弾者の左側の可能性が示唆(「しさ」それとなく気付かせること。)されていたわけです。
だから「私の理解力の問題ではない。ドラマの進行途中に提示された手がかりに誘導されただけだ。」と言いたいくらいです。
とにかくマードック刑事とオグデン検視官におり発砲トリックの方法と意図は分かりました。このときオグデン検視官から「二人は名コンビですもの。」という言葉が発っせられます。
それはそれとして、この時代のカナダで司法取引が行われていたとは驚きでした。司法取引はアメリカのしかもアル・カポネの時代くらいにできた制度だとばかり思っていました。
これ以上書くとドラマの内容に触れないわけにはいかないので、自粛(「じしゅく」自分で自分の行いをつつしむこと。)しますが、今回はトリックとその謎解きが素晴らしく、見応えがありました。
ところで、今回の話の終わりでオグデン医師がマードック刑事に、検視官を辞めてトロント市内でクリニックを開くと言うシーンがあります。
後任としては、見習いのグレース検視官(見習いとはいえ、弾丸の入射角を調べたのは彼女ですから、一人前の検視官といっていいでしょう。)がいるので検視に支障はないと思いますが、マードック刑事はこういうときオグデン医師に理性的な言動をするので、観ている方が辛くなります。
かといって、前シーズンの最終話でのオグデン医師の結婚式のときに、映画『卒業』みたいに花嫁略奪をするってのは、マードックらしくないような気がするし。
微妙な気持ちです。