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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン2第13話 #26 父との再開 Anything You can Do』(5184文字)

 『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン2の第13話(#26)「父との再開 Anything You can Do」の感想を書きます。この第13話でシーズン2は最後になります。


 邦題「父との再開」は、文字通りマードック刑は父ハリーと再開する顛末(てんまつ)を指しています。

 原題「Anything You can Do」は、映画『アニーよ銃を取れ』の中の歌の歌詞のようです。意味は「あんたにゃ負けない」で、これは多分マードック刑事と今回の新たな登場人物の一人とのライバル関係におけるマードック刑事の心境を指しているものと思います。

 今回は、現在起こっている出来事(もっぱら殺し屋らとの戦い。付加的にトロントでの捜査。)と、8日前にトロントで行われた捜査が交互に進行します。
 以下、その進行に合わせて「現在」と「8日前」とを区別して感想を書くので【現在】【8日前】と書き足します。

【現在】
 ドラマ冒頭は、「プリングル・クリーク」(PRINGLE CREEK)という看板のあるゴーストタウンみたいな街での銃撃戦ではじまります。
 銃撃戦の一方当事者は、マードック刑事とマードック刑事の父のハリー、そして赤い制服らしい服装の一人の男でした。マードック刑事側は空き家の室内におり、外から撃っている相手方についてはこの段階では何も分かりません。
 この銃撃戦の最中の3名の会話からすると、マードック刑事と赤い制服の男がプリングル・クリークに来たのは殺人事件の捜査のためだそうです。

【8日前】
 マードック刑事は死体発見現場に自転車で向かっています。
 死体は、秋の住宅地の落ち葉の上に仰向けに倒れた形で見つかっています。
 この段階では殺人事件か事故か分かりません。

 死体は、地質学者のハンフリー・ブリーンでした。死体の側には虫取り網がありその中には希少種の蝶であるクスノキアゲハが入っていました。この蝶も生きてはいないようです。

 この現場には、既に赤い制服の男が付近住民からなにやら聴取しています。
 第4分署の捜査権を侵害されていると感じたマードック刑事は、その赤い制服の男に誰かと問い詰めます。
 赤い制服の男は、北西騎馬警察のリニー・ジャスパー巡査部長と名乗りました。
 リニー巡査部長は、ブリティッシュ・コロンビアで起きた殺人事件を捜査中だそうです。
 リニー巡査部長の捜査とトロントとがどう繋がるのか、今の段階では分かりません。

【現在】
 プリングル・クリークでの銃撃戦が続いています。
 銃撃戦といってもマードック刑事側の武器は、赤い制服の男が撃っている銃身の長いリボルバー拳銃(西部劇でよく見かける拳銃。)だけのようです。
 この拳銃の外見から調べてみたところ、コルト・ピースメーカーに見えました。
 相手方の撃ち方が激しいので、マードック刑事らは裏口から逃れようとしますが、相手方は裏口も固めていて裏口でも銃撃されてしまいました。

 相手方の4名は銃撃に手慣れていて、マードック刑事は「敵は全員殺し屋だ。」と言いました。

 リニー巡査部長は、こんな状態でも妙に冷静です。
 マードック刑事の父ハリーが「採掘事務所で爆薬を見た。」と言うので、マードック刑事はそれで爆薬を作ることを考え、リニー巡査部長も賛成します。また、二人はその爆薬に他の薬剤を加えるアイディアを持っているようです。

【8日前】
 現場に到着したジュリア・オグデン検視官は、ハンクリー・ブリーンの遺体をみます。

 マードック刑事は、ブリーンは彼の自宅の3階から落下したと推論した可能性があるとジュリアに言います。
 リニー巡査部長は、ジュリアに「事故ではないと断言しよう。」と言います。

 マードック刑事とリニー巡査部長の対立が表面化しました。二人は事故死か他殺かで論争を始めます。
 この状況にジュリア検視官は戸惑います。

 この論争に決着を付けるべくリニー巡査部長は、もう一つの死体つまりクスノキアゲハが殺されていることに注目すべきだと主張しました。

第4分署で、ブラッケンリード警部やマードック刑事らに自分がトロントに来た経緯を説明します。
 発端はブリティッシュ・コロビアで死んだユライア・ドークスでした。彼は鉱石サンプルの分析者でした。

 検視報告には「酒に酔い鉄道線路上で意識を消失」と書かれていました。しかし、リニー巡査部長は「ドークスは何年も(酒を)飲んでいない。」と主張します。また「死後硬直(の状態)から考えてドークスは線路に入る前に死んでいた。」と結論づけています。リニー巡査部長は、きれいな状態で残っていたドークスの左腕を独自に調べたのだそうです。
 
 ドークスが最後に目撃されたのは、ブリーン(さっきの死体)の会社でした。
 また、ドークスの服のポケットにマードック刑事の名刺がありました。

 リニー巡査部長がトロントの第4分署管轄内に来てドークスの死体と出合ってもおかしくありません。

 ブラッケンリード警部は、北西騎馬警察に連絡したところ、身元と用務の確認ができたようで、マードック刑事にリニー巡査部長に協力するよう指示しました。
 リニー巡査部長の上司は、「生意気だがたいていは正論をいう。」と言っていたそうです。
 ブラッケンリード警部は、その上司の気持ちが分かるような気がしているようです。

 モルグ(morgue 遺体安置所)で、ジュリア検視官はマードック刑事にクスノキアゲハの他殺の確証があると言います。
 マードック刑事は 「何いってんの?」という顔をします。

 ジュリア検視官の根拠は、クスノキアゲハの胸の部分部分が少しつぶれていることから、これが標本を作るときの手法であるという知識とを勘案(「かんあん」あれこれを考え合わせること。)したのだということでした。
 上記の標本を作るときの手法だということがリニー巡査部長から出た知識だということが分かった瞬間、マードック刑事の負けじ魂に火が付き、捕虫瓶(ほちゅうびん)の底に入れるのが、結晶状の青酸カリなのか青酸カリを水溶液にするのかで、また「Anyuthing You can Do」の精神に火が付きます。

 この後、マードック刑事とリニー巡査部長は、ブリーンの会社である「バンダレー&ブリーン測量・地図製作会社」でバンダレーに質問します。
 バンダレーによると、ブリーンはエライア・ドークスにプリングル・クリークの鉱石の評価をしてもらいましたが、その鉱石は平凡過ぎて報告も不要だということでした。
 その鉱石はアルコナ鉱業がプリングル・クリークから採掘したものでした。

 一方ブラッケンリード警部はマードック刑事に、事故死に見せかける殺しの手口に心当たりがあるので調べてみると言いました。

【現在】
 マードック刑事の戦術は、アルミニウムと酸化剤を結合させて発熱させるというもので、リニー巡査部長も「過塩素酸カリウムがいい。」とマードック刑事の戦術に賛成しました。

 しかし、道具がないので、3人とも納屋まで走りました。
 納屋ならなにか道具があるだろうと思ったようです。
 で、ハリーは、納屋にあったヤスリでアルミニウムを削り粉にしました。

 ハリーが言うには、自分がプリングル・クリークにいたのは、友人の今は亡きユライア・ドークスの死の手がかりがないかと探しに来たのだそうです。
 ハリーはドークスから、アルコナ鉱業は採掘のためプリングル・クリークの土地を買い占めているので、ここの土地を買っておけばカネが貰えると教えられていたのです。
 ハリーが会ったとき、ドークスはソーダ水を飲んでいました。
 しかし、ハリーはドークスが酒によって事故死したことを知り、「なにかある。」と思ったのでした。

【8日前】
 マードック刑事とリニー巡査部長は、アルコナ鉱業で社長のフレモントに質問していました。
 フレモントは、ドークスというという人は知らないと言います。ブリーンは長年地質調査を依頼しているので知っているそうです。

 第4分署で、マードック刑事とリニー巡査部長はブリティッシュ・コロンビアの地図でプリングル・クリークを探しますが、見つかりません。

 ブラッケンリード警部は、殺し屋のアレクサンダー・Wがカナダに戻っていることを突き止めました。アレクサンダーは通称「事故死偽装屋のアル」と呼ばれています。
 アレクサンダー・Wがドークスとブリーンを殺した犯人だと断定していいと思われます。
 また、マードック刑事とリニー巡査部長は、ブラッケンリード警部が持ってきたアレクサンダー・Wの似顔絵から、さきほどバンダレー&ブリーン測量・地図製作会社のビルにいた男が殺し屋のアルだと気づきます。

 バンダレーは執務室で倒れた書棚の下で死んでいました。手には「W・T・マクダナガル選集」という本を持っていました。
 リニー巡査部長は、「バンダレー氏の詩の趣味はひどいな。」と言います。   
 マクダナガルという詩人の評価は、次に書くように西洋社会では定評があるようです。

 ウィリアム・トパーズ・マッゴナガル( William Topaz McGonagall、1825年3月 - 1902年9月29日。ドラマの字幕ではマクダナガルとありました。)は、スコットランドの詩人。彼は、自分の作品に対する同業者の評価を認識せず、気にも留めない、極めて悪質な詩人として悪名を馳せたそうです。
 アイルランド系スコットランド人で、「史上最低の詩人」としてギネスブックに記載されているマッゴナガルが書いた詩は約200編あり、その中にはテイ橋の崩落事故にインスパイアされた詩『テイ橋の惨事(英語版)』や「有名なテイの鯨(英語版)」などが含まれており、これらは英文学の中でも最悪の物として広く知られています。スコットランド中のグループが、彼に自作の朗読を依頼した事は、多くの聴衆がマッゴナガルのミュージックホールにおけるコミカルなキャラクターとしての能力を高く評価していた事を物語っている。 今でもマッゴナガルの詩集は人気があり、数冊が販売されています。

【現在】
 納屋から戻るとき、マードック刑事は撃たれて転倒します。
 ハリーとリニー巡査部長は、マードック刑事を連れて保安官事務所に入り、立て篭もります。

 マードック刑事は、モルグ(morgue 遺体安置所)からこっそり持ってきたジュリア検視官の本で弾丸が止まり命拾いしました。

 その本は、
A CRITICLA AND 
EXPLANATORY
ACCOUNT OF 
THE POETRY OF
 LOAD GEORGE 
GORDON BYRON AND 
PERCY BYSSHE SHELLY
で、ドラマの字幕では『バイロンシェリー作品解説』とありました。
 シェリーは、『フランケンシュタイン』の作者でもあります。

 ジュリアはシェリーの詩が好きなようです。このことは、リニー巡査部長も知っていました。

 日が暮れてきました。
 暗い中、4名の武装した男たちがマードック刑事らのいる保安官事務所に歩いてきます。一人はライフル銃を持っています。残りの者は拳銃のようです。

 さぁ、決戦です。

それやこれやで、事件は解決します。
トロントではブラッケンリード警部とクラブツリー巡査が殺し屋に殺しを依頼した主犯を逮捕し、プリングル・クリークではマードック刑事らが4人の殺し屋を捕らえました。

 残るマードック刑事の関心事は、ジュリア・オグデン検視官と一緒にいることが多いレジナルド・パウンゼットという男です。
 クラブツリー巡査は、マードック刑事の不在中にパウンゼットについて調べた結果をマードック刑事に渡します。
 ブラッケンリード警部はニヤニヤ笑いながらマードック刑事を見つめます。この笑顔の原因は、犯人逮捕の満足感だけではなさそうです。

 原っぱの一画に、
POUNDESETT
SCHOOL OF
AERO NALITICKS
(パウンゼット航空術学校)
という看板があります。

 ジュリア検視官は、パウンデットから気球に乗る指導を受けていたのでした。
 二人は付き合っているのではないのでした。

 安心したマードック刑事は、思わずジュリアの乗る熱気球に飛び乗ります。

 気球は空高く浮かんで行きました。

 そうそう、書き忘れましたが、リニー巡査部長はマードック刑事と腹違いの兄になります。
 つまり、二人の父親はともにハリーでした。
 しかし、これはハリーの不貞が原因ではありません。
 ハリーにはハリーの人生があったのでした。

 それにしてもマードック刑事とリニー巡査部長(リニー・ジャスパー)に共通する論理性と行動力という警察官の資質が、ハリーの遺伝子によるものだとは意外でした。

#マードック #ブリティッシュ・コロンビア #シェリー

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