見出し画像

ポルシェ914 『名車再生!クラシックカー・ディーラーズ』 (3382文字)

 『名車再生!クラシックカー・ディーラーズ』は、毎週土曜日の午後8時からBS11チャンネルで放送されている自動車レストア(restore 復活させる。特に自動車やバイク、家具などの古くなって傷んだものを修復する際に用いられる。)番組です。
 今回は、ポルシャ914のレストアでした。レストアの後は試乗して修復度合いを確認し、そして転売します。
 この番組の面白いところは、レストアの最終目的が転売にあるため、つねに 売値(転売価格)=車両代(クルマ購入価格)+修理費(レストア費用)+利益(転売利益) という恒等式(恒等式とは「変数がどのような値のときにも成立する等式」のこと。「=」に代えて「≡」の記号が使われることがあります。これに対して、ある変数についての等式にについて,「変数がどの値のときに成り立つか?」を求めることを「方程式を解く」と言いますが、「方程式を解く」対象の等式のことを方程式と呼びます。)を意識しなければならないことです。クルマは既に購入しているので、レストア費用を安くあげると転売利益が多くなります。主人公らの目的は「まっとうな商売をして利益を出すこと。」なので、車両費用を正当な範囲で買い叩き、節約の範囲内で修理費を安価に押さえ、売値は市場価格相当にし、利益を上げようとします。この設定は、自動車修理を身近に感じさせてくれます。

 私は毎週自動車修理の勉強の足しにと思い視聴しています。勉強といっても、自分で自動車修理をしようとか自動車整備士の免許を取ろうとかいうものではなくて、単に面白そうなことを深く知りたいと思っているだけです。

 今回のポルシャ914は、赤い車体色で黒色のタルガ・トップという配色です。タルガ・トップ(targa topu9)は、 風貌前面ガラスからタルガ・バーまでの固定屋根が取り外し式になっているものです。タルガ・バー(targa bar)は、ロールバーの一種ですがパイプ製ではなく、比較的幅広な鉄製バンドになっています。古い車種ですが、ホンダのシティ・ガブリオレもタルガ・トップじゃないかと思います。
 このタルガ・トップなどの言葉は番組中でそう呼ばれているだけで、特に説明がされないので、私は自動車用語事典やネットで調べるようにしています。

 クルマの購入はマイク、が担当で、4500ポンドを4000ポンド(81万円)に値切って購入しました。

 このポルシェ914のレストア箇所は次の5つです(レストアはエドが担当します。)。
(1) エンジンがオーバーヒートするので修理する。
(2) タルガ・トップの屋根が古くなって表面が劣化しているので再塗装する。 
(3) 10年間も納屋の中に放置されていたので、ネズミが入り込み室内は汚れフンまみれになっているので清掃する。
(4) シートは破れている箇所があるので補修する。
(5) ホイール表面が劣化しくもっており、小さな傷もあるので補修する。

 幸い、リトラクタブル・ヘッドライト(retractable headlights 車体内部に格納できる方式の前照灯)も、変速機やブレーキ等は無事だったようです。

 今回面白そうな修理箇所は、(1)のエンジンでした。ポルシェ914は空冷水平対抗4気筒なので、空冷エンジンのオーバーヒート修理の様子を見ることができます。

 エドは、このクルマのエンジン周りを点検した結果、オーバーヒートの主たる原因はベローズ型サーモスタット(bellows type thermostat 蛇腹型整温器。ベローズは蛇腹とかふいごの意味。 「ふいご」は金属の熱処理や精練に用いる送風器のこと。私には、巻きバネの形状をした金属に見えました。以下「ベローズ」と言います。)が機能していないことだと見当を付けました。
 ポルシェ914のベローズは、少し太めの金属を使い間隔が狭い巻きバネのような外観でした。エドが触れた状態を見ると、とても軽いようでした。

 エンジン始動前のエンジンが冷えている状態のとき、ベローズの巻きバネの間隔は相互に触れ合うくらい狭くなっており、ベローズ全体は短い状態になっています。
 エンジンを始動し、しばらくしてエンジンがて暖まって来るとその熱がベローズに伝わります。
 ベローズの片方の先端は固定されいますが、もう一方の先端には細いワイヤーが取り付けられており、ベローズが冷えているときそのワイヤーは引っ張られた状態にありピンと張っていますます。その細いワイヤーはエンジンに設けられたフラップ(flap ポケットの蓋。飛行機の下げ翼。このクルマの空冷エンジンは金属製のカバーに囲まれていてカバー内への空気の流入を防いでおり、このフラップがその出入口みたいな役割を担っています。このフラップが閉じていると、カバー内に外気が入らずエンジンの熱を逃がしませんが、フラップを開けるとそこから外気が流入してエンジンを冷やします。

 ベローズから伸びる細いワイヤーが引っ張られた状態のとき、エンジンのフラップは閉じた状態になり、エンジンカバーの中に空気が入らないようにしています。この状態が、エンジン温度が低いときの常態になります。

 エンジンが稼動し徐々に発熱すると、その熱はベローズに伝わりベローズを温めます。そしてベローズの巻きバネの間隔が開いて来ると(ベローズが伸びて来ると)ベローズに取り付けられた細いワイヤーの張力が弱まります。
 細いワイヤーの張力が弱まると、つまり緩(ゆる)むと、エンジンカバーに設けられたフラップが開き、外気がエンジンカバー内に入りをエンジンを冷却して、エンジンのオーバーヒートを防ぎます。

 ところで、このフラップの仕組みに疑問があります。
 番組では触れていませんでしたが、カバーに設けられたフラップは蝶番(ちょうつがい)の部分にバネが仕込んであって、常に開こうとしている常態にあるものと思われます。それを細いワイヤーとベローズに引っ張られて閉じているのだろうと想像しました。
 しかし、そう考えると「ベローズが伸びきっているからエンジンがオーバーヒートする」という状況の説明ができません。ベローズが伸びきっているから、フラップが開きっぱなしになり、エンジンはオーバークール(overcool 冷えすぎ)になるはずです。
 このフラップの仕組みはどうなっているのでしょう。

 とにかく、このベローズが伸びてしまっているので、細いワイヤーの張力はないまま、さからエンジンを冷やすためのフラップは閉じたままでした。その結果、走行中にエンジンは外気に当たることがなく、また廃熱することもできず、その結果オーバーヒートしたというわけです。
 このベローズはもう売っていないので、フォルクスワーゲン・ビートルのベローズを流用することで解決しました。
 調べてみたら、ポルシェ914はフォルクスワーゲンの既存のパーツを大幅流用していたということでした。

 他にもBピラー(pillar 支柱のことで、屋根を支え、車体の強度の一部を担っている。クルマを横から見て、前からフロント・ピラー(Aピラー)、センタ・ピラー(Bピラー)リア・ピラー(Cピラー)と呼びます。)の修理などをしましたが、直接エンジンに関係ないので、記憶に残っていません。

 レストア後の試験運転も上々で、このポルシェ914は元のオーナー(つまりマイクに売った人)が8250ポンドで買い戻しました。
 日本円に換算すると、車両代81万円、修理代26万円、売値167万円、利益60万円でした。
 
 元のオーナーは、このポルシェ914を81万円で売って、167万円で買い戻したことになります。
 上記の修理代にはエドの工賃を入れていないので(そのように転売価格を設定をしているので)、元オーナーはかなり安価なレストアをしたと思います。

 ところで、このポルシェ914、なかなかカッコイイです。
 市場導入時には2種類のエンジンが用意されたそうで、フォルクスワーゲンの1.7リッター水平対向4気筒エンジン最高出力 80PSと、2.0リッター水平対向6気筒エンジン最高出力 110PSです。

 私は、1.7リッターエンジンがちょうどいいかなって思います。

#ポルシェ914 #名車再生クラシックカーディーラーズ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?