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未『刑事マードックの捜査ファイル シーズン3 第13話#39 衝撃の事実 The Tesla Effect』 (5685文字)

 カナダの大ヒットミステリ『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン3の最終話である第13話(#39)「衝撃の事実 The Tesla Effect」の感想を書きます。

 この原稿が完成したら、このドラマのシリーズについてシーズン1、2、3の一部(第8話「危険な思想」と第9話「ミイラは眠る」は、記録したDVDが見つからないためまだ書いていません。)とシーズン5について感想を書いたことになります。

 残るは(シーズン3の第8話「危険な思想」と第9話「ミイラは眠る」を除くと)シーズン4ということになり、感想としてnoteに投稿するものがコンプリート(complete 完全な)ではないことになりますが、人間のやることに完璧を求めるのは難しいと思いますし、そもそも録画や記録をしなかった私のせいですので、次の機会を待つことにします。きっとまた再放送があるでしょう。きっと。

 そのうち、テレビの衛星放送(BS11)でシーズン6が始まるでしょうから、それまでにシーズン4(13話あります。)の感想を書き終えたいと思っています。ちょうど年末年始の休みがあるので、ゆっくりやって行きます。


 邦題の「衝撃の事実」は、この事件の真犯人の意外性を表しています。また、マードック刑事も意外な事実を知ることになります。マードック刑事にとっては衝撃だったでしょう。

 原題の「The Tesla Effect」は、直訳すると「テスラ効果」です。今回のドラマはSF冒険もののような展開なんですが、登場する新兵器も「19世紀末にこれはちょっ・・・。」と思わないではないですが、伝説の天才発明家のニコラ・テスラが登場することによりその存在感の大きさゆえに時空がゆがんだのか、「こんな新兵器があったかもしれない。」と納得させられてしまいました。これが「テスラ効果」なのかも知れません。

  物語は、一人の男が不思議な死に方をするところから始まります。
 室内の金属部分が次々と火花を散らし、そのうち男は悲鳴を上げて死んでしまいます(死ぬ描写はありませんが、きっと死んでいます。)。

 トロンの冬の夜、マードック刑事とジュリア・オグデン検視官は「SHAFTESBURY THEATRE」で芝居を観劇して出てきます。
 オスカー・ワイルドの芝居だったようです。

 帰路、ジュリアはマードック刑事に自分がヘッドハンティングされ、バファローの小児病院の外科医になることを告白します。

 そのとき、劇場のボーイから二人は呼びだしの電話が入っているという伝言を受けます。
 このことで、二人の会話は中断され、マードック刑事もジュリアも言うべきことを言いそびれてしまいます。

 室内で人(ガーバット氏)が死んでいました。でもその部屋のドアは椅子で塞がれていて、現場は密室状態でした。

 警察への通報は、部屋の中から聞こえた悲鳴を聞き付けた人からなされました。この通報についてはドラマではこれ以上詳しく語られていないので、取り合えず通報者は容疑者から外してよさそうです。

 ジュリア検視官がみたところ、外傷は見当たりませんが遺体がやけに熱っぽく、右手の甲にやけに新しい火傷のあとのような火ぶくれがありました。

 クラブツリー巡査が室内の枯れている観葉植物を触ると、温かいことに気づきました。

 この事件は、熱に関係しそうです。

 そのとき、制止しよとする巡査を押しのけて、ニコラ・テスラがやって来ました。
 テスラはマードック刑事に「研究者のガーバットに、生死にかかわる問題だと呼び出されたのだ。」と言います。

 翌日、モルグ(morgue 遺体安置所)でジュリア検視官が詳しく検視しその結果をマードック刑事に報告したことによると、遺体の数か所に水膨(みずぶく)れができていました。また、胸部を開くと内蔵が煮えていました。それだけじゃなく、内蔵の損傷具合から判断して体の内部から煮えたようです。

 マードック刑事はジュリアに転職のことを詳しく聞こうとしますが、ジュリアははっきりとは答えません。

 私はジュリアに好印象しか持っていませんが、女性がときおり大事な案件を率直に言わずにこちらをを焦(じ)らすような態度をすることにイライラします。語る気がないのなら、「大事なことがあるの。」とか言ってくれるなと思います。
 女性はこのことで、二人に深刻な対立が生まれるかもしれないとは考えないのでしょうか。

 第4分署のブラッケンリード警部の部屋にはニコラ・テスラがいて「2日前にガーバット(被害者)から電報が届き緊急の用があるから来てくれということであった。研究所にも彼は半年前から消息を絶っていた。彼は有能な研究者である。カルナキと共にいなくなった。」とブラッケンリード警部とマードック刑事に答えました。
 そしてニコラ・テスラは、マードック刑事とともに現場の再検証に同行することに同意しました。

 現場に行く馬車の中でニコラ・テスラは「私は電磁エネルギーを無線伝送するために高周波電磁波を用いた研究をしてきた。私はそれを英語圏でいう『ミニ波』ではなくドイツ流に『マイクロ波』と呼んでいる。マイクロ波は磁場をゆがめるだけでなくほとんどの物質を透過してしまう。しかも水を沸点(ふってん)まで過熱するほどの威力があるのだ。人間の体もマイクロ波を浴びたら体内の水分が沸騰する。(ガーバットの死因はそれであり、)犠牲者は彼1人では済まないかもしれん。深刻な事態だ。」と言いました。

 これって、電子レンジを大きくしたようなものですよね。

 カルナキはマイクロ波の兵器(以下「新兵器」と言います。)を開発したようです。

 現場に行ってみると、屋外の植物の一部が大量に枯れていました。
 枯れた植物は、ある方向を指し示しているように変色しています。他の植物は緑色のままですから、それがはっきり分かります。
 マードック刑事とニコラ・テスラは枯れた植物が示す方向をたどってみます。新兵器の場所が分かるかもしれません。

 枯れ草は森の中にも続いています。

 テスラが、「ガーバットはカルナキより良心的な男だった。」と言うのを聞き、マードック刑事は、カルナキが新兵器を作ることをガーバットが止めようとして始末された(殺された)のではないかと考えました。

 枯れた植物をたどっていくと一軒の建物にたどり着きました。
 中に入ってみると、作業場のような広い空間がありましたが、中はもぬけの殻(「もぬけのから」脱皮した皮のことですが、人が逃れ去った跡の家または寝床などのたとえでよく使われます。)でした。
 人を殺せるような能力の高い新兵器は、かなり大きなもののはずなのにどこに行ったのか?

 第4分署で、新兵器の所在を突き止めようとアイディアを出し合っているとき、ニコラ・テスラは「新兵器完成には、小型化と冶金(「やきん」 鉱石から含有金属を分離・精製する技術。)の専門知識が必要だ。きっとカルナキにはその方面の知識を持つ協力者がいるはず。また資金面での支援者もいるはずだ。」と捜索のヒントになることを言います。
 ブラッケンリード警部もマードック刑事も、その条件に合う人間を一人知っていますが、そのペンドリック氏は今刑務所にいます。

 マードック刑事が、第4分署に移送されてきたペンドリックに面会すると、彼は「ようやく私の無実に気づき釈放するのか」とマードック刑事をからかいました。彼は裁判でも終始無罪を主張していたのです。
 ペンドリックは「ガーバットのこともカルナキのことも知らないが、ニコラ・テスラとは何度かニューヨークで会った。電磁波の研究については、半年前に資金援助の件で相談を持ち掛けられたが話がまとまらなかった。」と言いマイクロ波を使った兵器での殺人については「(自分は)2週間後に処刑されるんだぞ!」とだけ答えました。
 彼はおそらく「そんなことやっている心境ではない。」と言いたかったのでしょう。
 ペンドリックは冷静な男で、自分を捕らえたマードック刑事にも声を荒げることがありません。あくまで自分は無罪だと静かに主張し、せいぜいわずかな皮肉をまぶした言葉を投げかけるみです。

 ブラッケンリード警部は、ペンドリックをしばらく第4分署に留置して監視することにします。

 そんなとき、テレンス・メイヤーズがブラッケンリード警部の執務室に入って勝手にウイスキーを飲んでくつろいでいました。
 この男は、政府の軍事的問題がからむ事件のたびに第4分署にやってきます。身元を明かしませんが、情報機関の人間にように思われます。
 慇懃無礼(「いんぎんぶれい」うわべはていねいなようで、実は尊大[「そんだい」たかぶって偉そうにすること。]であること。)で、横柄(「おうへい」おごりたかぶって無礼[ぶれい]なこと。)で、今のところいいところが見当たりません。

 メイヤーズによると、近々究極の殺人兵器(恐らく新兵器のこと)が売りに出される予定だそうです。
 しかも、試射により死人が出たとの情報もあるといいます。

 ひとしきり偉そうに演説してメイヤーズは帰りました。

 ブラッケンリード警部の執務室には静かさが戻りました。

 マードック刑事は一つ思いついたことがあります。
 彼はニコラ・テスラに、「電磁波が磁場を歪めるのであれば、方位磁石を町を囲むように多数配置することにより、電磁波が強まったときに方位磁石は針をそのマイクロ波兵器のある場所を示すのではないか。」と尋ねます。
 ニコラ・テスラは、「妙案だ。しかし実行するには電磁波が感知できなければならない。」と答えました。
 マードック刑事は「それにはマイクロ波兵器を撃たせるんです。危険な賭けですが。」と何か腹案(「ふくあん」心の中に持っている案)がありそうです。

 マードック刑事はテレンス・メイヤーズと落ち合い、今夜6時に新兵器からマイクロ波が照射されるよう手配することを依頼します。

 今、マードック刑事の脳裏にはジュリア検視官の転職に関することなどなにもないかのようです。
 テレビドラマや映画の中でよく「私と仕事とどっちが大事なのよ?」と女性が男性に詰め寄るシーンがありますが、「仕事はやればカネになるが、君に尽くしてもカネにならない。」と言い返したらどなるのだろう、とよく考えます。

 午後6時。ブラッケンリード警部、マードック刑事、ニコラ・テスラの3名は第4分署で方位磁石を見つめていました。
 すると、方位磁石の針が東を指しました。
 他の箇所に配置した方位磁石についても続々と報告が入ってきます。

 各方位磁石の針が示す方向の交点には、ペンドリックの馬小屋がありました。

 ブラッケンリード警部、マードック刑事、ニコラ・テスラ、テレンス・ミヤーズらはその馬小屋に踏み込みますが、そこには新兵器はありませんでした。
 一杯食わされたのでしょうか。

 みなが馬小屋の中いるとき、クラブツリー巡査が方位磁石の針の異常な動きを見て、「兵器が作動しました。」と叫びました。
 すると、馬小屋にある金属類から火花が出ました。
 この馬小屋に向けてマイクロ波が照射されています。
 彼らは罠に掛けられたようです。

 絶体絶命です。

 馬小屋内の金属から出る火花が収まった頃、馬小屋の中の大きな水入れの水の中から全員出てきました。全員ずぶ濡れです。
 彼らは水中に潜り、新兵器の電磁波をかわしていたのでした。
 それでも、その水温が上がっていて、ブラッケンリード警部は「熱くてたまらん。」と言いました。

 彼らが水入れから出た姿は、風呂上がりのように体からゆげが立ち上っています。
 日本人の私から見ると、草津温泉のお湯くらいの温度になったのではないか思います。

 このことで、マイクロ波兵器は台車のようなもので移動しているであろうことが推測されました。

 ニコラ・テスラは、水に入る以外の方法で新兵器の電磁波から見を守る方法を考えることにしました。
 マードック刑事は、ニコラ・テスラが防御方法を考えている間に、ペンドリックを尋問することにします。

 マードック刑事が留置場でペンドリックの前に立つと、ペンドリックは「兵器が使われたのか?」とマードック刑事に尋ねました。
 ペンドリックは、カップに水を入れ、そこに針を刺したコルクを浮かせたもの(恐らく針を磁化させていたはずです。)を注視して電磁波の照射を見ていたのです。

 マードック刑事が兵器が使われたのはペンドリックの建物だったと言ったとき、ペンドリックは動揺し「有り得ない!」、「(私を)捜査に協力させろ!」とマードック刑事に叫びました。

 マードック刑事はペンドリックから情報を聴取することを諦(あきら)め留置場を去ります。マードック刑事が去るとき、ペンドリックは「私は無実だ。マードック。マードック」と叫びました。

 ペンドリックは、このとき冷静さを失っていたようです。

 その後、ジュリアは帰宅する馬車の中でマードック刑事にバファローに転職していく理由を詳しく述べます。

 こういうときの対応は難しいです。
 でも、とにかくマードック刑事は今は事件解決に集中しなければなりません。

 それやこれやでマードック刑事らは事件を解決します。

 今回の事件経過ではっきりしましたが、ブラッケンリード警部はマードック刑事の心理を代弁する語部(「かたりべ」広く、物事を次の世代に語り伝える人。)の役割を請け負っています。
 ブラッケンリード警部の言い方は辛辣ですが、マードック刑事の心の中を言い当てています。最も厳しい採点者というか評論者と言っていいでしょう。

 また、マードック刑事とペンドリック氏は似ています。似ていると言うよりほとんど同じです。いろいろな意味で。
 彼らは、お互いに相手の女性(サリーとジュリア)に心の中で依存していたことを認めざるを得ません。
 でも、世の中はそんな甘いことなど許してくれません。
 ここが恋する男の辛いところです。

#マードック #マイクロウェーブ #電磁気

 

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