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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン1 #11 運命の矢 Bad Medicine』 (2124文字)

 カナダの大ヒットミステリ『刑事マードックの捜査ファイル』のシーズン1の第11話「運命の矢 Bad Medicine」の感想を書きます。

 今回の凶器はクロスボウ( crossbow 西洋で用いられた弓の一種です。専用の矢を板バネの力で弦により発射する武器です。「石弓」と呼ばれるものと構造がほぼ同一とです。)です。(私は、ボウガン(bowgun)だと思ったのですが、ボウガンは和製英語だそうで、海外ではクロスボウが一般的なのだそうです。)

 ところで、ドラマの冒頭でマードック刑事は「物体は接触時に必ず痕跡(「こんせき」何事かがあったあと。)を残す。」と言います。
 これと似た台詞が、アメリカの犯罪ドラマ『CSI 科学捜査班』の中でキャサリン・ウィロウズが言っていました。
 鑑識を担当する者はもとより捜査する者は、心に留めておかなくてはならないことなのでしょう。

 さて今回は、ダイイングメッセージあり、降霊術あり、未発達の時代の脳科学ありと盛り沢山です。

 降霊術といえば、シーズン1の第4話でコナン・ドイルと共に登場した降霊術者(霊能力者)が登場します。

 そうそう捜査の過程で、「共感覚」と「ガルトン博士」の名が出てきます。

 共感覚は、ある一つの刺激に対して、通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象です。」(「文字に色がついて見える。」という人の話をたまに聞きますが、そのような感覚です。)

 ガルトン博士はFrancis Galtonのことで、彼はダーウィンのいとこだそうです。
 ガルトン博士は1880年にNature(世界トップクラスの総合科学誌)に共感覚に関する論文を発表しています。
 マードック刑事が活躍する時代は19世紀の終わり頃ですから、マードック刑事の時代では「共感覚」は最先端の脳科学だったようです。

 今回の事件では、降霊術が登場するのと同時に、この降霊術師(美人な女性)がマードック刑事に恋愛感情を抱いているように見えることがこのシリーズの進展に大きな切っ掛けを与えます。

 どういうことかというと、マードック刑事とオグデン検視官とこの降霊術師との三角関係が形成されそうになることから、オグデン検視官がマードック刑事への好意がより強くなるということえす。
 障害があると、恋愛は燃えますよね(私はあまり経験がありませんが。)。

 なんやかんやでこの事件は解決されますが、事件解決から日を改めたある日、美人の降霊術師はマードックに「私はプラハに行く。」と聞かされます。
 どうやら、この美人の降霊術師はマードック刑事がオグデン検視官に惚れていることに気づき身を引いたような感があります。

 このとき二人は公園のベンチに座って会話していたのですが、偶然通り掛かったオグデン検視官が参加したため、二人の会話は終わります。オグデン検視官は、『まちぶせ』(荒井由実が作詞・作曲、松任谷正隆編曲。三木聖子さんへの提供曲でしたが、後に石川ひとみさんがカバーして大ヒットしました。)という曲を思い出させるような行動で、私は清々(すがすが)しい気持ちがしました。ヒロインはこうでなくっちゃ。

 オグデン検視官は、美人の降霊術師がプラハに行くということを聞き、自分がプラハにいた頃に行ったカレル橋、プラハ城、国立博物館の話をします。

 カレル橋には、 橋に沿って 30体以上の彫像があり、橋を渡る歩行者をエスコートしているそうです。

 プラハ城は、かつてボヘミア国王や神聖ローマ皇帝の居城であったそうですから、ここは私も見てみたいと思います。

 国立博物館は、プラハのど真ん中、ヴァーツラフ広場に本館があるそうです。その所蔵品は、貴族の自然科学部門のコレクションが中心となっていたそうです。

 私は「この時代の『プラハ』といえば、フロイトだな。」と思ったのですが、『精神分析入門』は1916・1917年の発行のようですから、オグデン検視官もマードックもまだフロイトをご存じなかったのかも知れませんね(このドラマの時代は19世紀の終わり頃ですから。)
 映画『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』には、ジークムント・フロイトが登場するので、マードックもフロイトを知っているものと思い込んでいました。。
 私の先走った思い違いでした。

 ここでちょっと時系列を整理します。
 『刑事マードックの捜査ファイル』の時代は19世紀末(1990年代でしょうか。)。
 オグデン検視官がプラハにいたのは、検視官になる前ですから、1980年代と考えればいいかと思います。
 シャーロック・ホームズの『最後の事件』の発表は1893年。
 『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』の時代は、小説『最後の事件』の発表の少し前(ホームズやワトソンがフロイトと会い、ホームズが薬物中毒の治療を終えた後に、ワトソンが『最後の事件』を執筆するという設定になっています。)

 比較するものがドラマと映画と小説ですから、創作されたものがたくさんあるはずです。
 でも、なんとなく時代設定に矛盾はなさそうですね。

#クロスボウ #ボウガン #カレル橋 #プラハ城 #プラハ国立博物館 #共感覚 #ガルトン博士

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