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友達と別れがたいとき (989文字)

 単身赴任していたころ、残業のないときは仕事の後食料を買いに生協に寄ってから帰宅していました。
 生協に寄る時刻は午後6時くらいなんですが、生協の喫茶コーナーみたいな場所に高校生くらいの数名がずっと話し込んでいるのによく遭遇しました。

 時々大きな笑い声がするくらいで、特に迷惑行動をするわけではなく、たまに(生協で買ったであろう)菓子パンを食べていました。

 そういうのを見ると、友人と別れがたかった頃の自分の高校時代を思い出しました。

 あの頃は、みんな受験勉強のストレスに耐え兼ねていて、誰かに心のうちを話したかったのでしょう。
 何十年か前の初夏のある日、高校3年だった私たちは学校の後市民公園に何人か集まり、夜になるまで喋っていました。なにを喋ったのか思い出せませんが、他愛もないことだっただろうと思います。もし、深刻なことを話したり聞いたりしたら、きっと覚えていると思いますから。

 私たちは、互いに別れがたいと思っていたのか、「さすがにこりゃ帰らないと親に叱られる。」と理性が働くまで喋っていました。

 私たちは、喫茶店に行きたくとも小遣いがもったいないと思っていて(そんなカネがあったら、「解法のテクニック」とか「実践英文法」などの参考書を買ったでしょう。もちろんその代金は、後で親から貰いますが、喫茶店に行くとその支払いのために一時所持金が減るのが嫌でした。)。だから、誰言うともなく市民公園に来たのです。

 そのときは、彼らを友達だと思っていましたが、学校を卒業し、大学に行き、就職してしばらく経つと、まったく別の人間関係が構築されており、高校時代の友達関係を顧(かえり)みることがなくなりました。

 でも、あの市民公園で長時間話したことは、いい思い出になっています。話の内容とか話した人とか、そういう具体的なことはとっくに忘れましたが、あの時間あの空間ではみんなの「受験勉強から逃げ出したい」という思いが一つだったんだなぁと思います。

 そう思うと、生協にたむろしていた高校生に自分の昔を見るようで、気恥ずかしくなりましたっけ。

 コント師のビスケットブラザーズの原田泰雅(はらだたいが)さん(目がねを掛けている方)が、「公園が好きで」とよく話しておられますが、そういうとき、今でも高校3年の市民公園を思い出します。


#高校時代 #別れがたい #ビスケットブラザーズ #原田泰雅

 

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