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もうフォークボールの神通力は失われたのか? (1594文字)

 野球のメジャーリーグで日本の野茂投手や佐々木投手が活躍していた頃、フォークボールが全盛でした。
 テレビの野球解説者は、「今のバッター打撃の技術が高いから、ボールが横に変化するシュートやスライダーはなんとかバットに当てることができるけど、下に落ちるフォークボークは空振りが取れるから有利だ。」と言っていました。

 でも今のプロ野球の投手は、速球と左右に変化する変化球を駆使しています。たまにフォークボールを投げる投手がいますが、「魔球」という扱いではなく「変化球の一種」という扱いです。
 もう、フォークボールの神通力は失われてしまったのでしょうか。

 例として不適当かも知れませんが、プロレスのかつての必殺技も最近は存在感が失われつつあります。
 バックドロップ、ブレーンバスター、スピニングトーホールド、ダブルアームスープレックス(人間風車)、足4の字固め、万字固め、などはかつては名手と言われるプロレスラーがいて、そのプロレスラーが掛けるとその段階で「勝負あった。」という感じでそのプロレスラーの勝ちが決まりました。
 もっと古い例では、力道山の空手チョップもそうです。
 でも、現在ではこれらの技は、決め技とはなっておらず、試合の形勢を逆転したり、技を掛けたプロレスラーが優勢な状態で次の技を掛けるための繋ぎ技のように使われていることが多くなっています。
 この原因は、①名手と言われるプロレスラーが高齢化して引退したり鬼籍に入ったりしていなくなってしまったこと、②長期間使用されていたので受け身の取り方がうまくなってきたこと、③プロレスの見せ所としてそれらの必殺技だけでは観客が満足しなくなってきたこと、などが考えられます。
 私見では③が大きいのではないかと思います。
 プロレスは、「八百長」とか「真剣勝負じゃない」と揶揄され続けている一方、それらに対して強い反対論もあり、私たち外部の人間には分かりにくい状態です(ミスター高橋の暴露本がありますが、あの本の内容の真偽はやはり外部の人間には分からないところです。)。

 フォークボールに話は戻ります。
 フォークボールの名手と言われる投手は、どんどん引退されてしまい、それ以降名手と言われる選手がいなくなったように思います。
 まあ、プロ野球やメジャーリーグの打者の技量が上がり、フォークボールの有効性が以前ほどで花区なったのかも知れません。
 また、先発投手は少ない投球数で勝ち投手の権利を得る回(イニング)まで投げつづけたいと考えるので、空振りよりも打ち損ねを狙える変化球の方が有用なのかも知れません。

 私個人は、「空振り三振を取ることがその投手の力を証明する一番の方法だ」と思っていますが、「そんなことより勝利の貢献度に関する査定をよくする方が重要だ。」という見解もあるでしょう。後者の場合、「(先発投手は)余力を残しながらも5回まで相手の攻撃を凌ぎ、自分に与えられた役割として高評価を得る。」ことが重要となり、それが自分の来期の年俸に繋がり同時に首脳陣の構想する戦い方に合致していることであり、今シーズンのチームの勝率にも貢献できることになります。

 この考え方は、リリーフ投手やクローザー(押さえ投手)の場合はちょっと異なります。
 リリーフ投手もクローザーも、「1点もやれない」という局面で登板することが多いので、空振りを狙う投球を重視することが多いでしょう。だったら、落ちる球であるフォークボール等が多用されることでしょう。
 でも、リリーフ投手もクローザーも先発投手に比べて投球数が少ないので(両者とも投球試合数は先発投手より断然多いと思います。)、投げた球種より、押さえたという試合局面の変化に注目が集まる傾向があります。

 結果、フォークボールの神通力は薄れてしまったように感じます。

#創作大賞2024 #エッセイ部門 #フォークボール
 

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