司法の武器化とモンテスキュー (1829文字)
今年(2024年)のアメリカ大統領選ない関するYouTube動画をよく観ます。
多くの動画はトランプ大統領候補びいきなので、「アメリカ民主党がこんなに悪いことやってますよ。」的な内容が多いです。
その民主党の悪行(と動画制作主が考える民主党の行為)の中に「司法の武器化」というものがあります。
「司法の武器化」というのは、アメリカの州法や連邦最高裁の判例を曲解したり無視したりしてトランプ候補を告訴したり、それ以外にもアメリカ共和党の重要人物を罪に問うなどということを繰り返していることというか手法を指した言葉です。
私はアメリカの法制度については、「陪審員がいる」くらいしか知識がありませんが、それでも地方検事がトランプ候補の不利益やアメリカ共和党の不利益のために違法な捜査を指示したり違法な起訴をするなんて考えられません。
でも、動画を見ているうちに「そうなのかもしれない。」とその可能性があると思うようになりました。かつてBLM(Black Lives Matter)運動の元になった白人警官による黒人容疑者への暴行致死事件についても、①被疑者が薬物による異常行動をしていたこと、②被疑者を俯せにして警官がその首を膝で押さえていたからその被疑者が窒息死したと言われていましたが、別角度から撮影された動画によると当該警官は被疑者の背中を膝で押さえていたこと(この制圧方法は警察のマニュアル通り)が確認される、などという批判があるといいます。もしそうなら黒人運動が、当該警官への捜査・起訴・裁判に影響を与えていたと思われます。
でもアメリカは西部劇で観るように、武装した大衆の「犯人は今すぐ絞首刑にしろ」という抑圧に対して、保安官は容疑者の裁判を受ける権利を守るためにライフルと拳銃で立ち向かう、という法による統治の精神が守られているはずではないかとも思います。
トランプ候補については、「AV女優口止め料事件」があることを知っていましたが、①口止め料支払い自体は犯罪ではない、②トランプはその口止め料支払いに関してビジネス文書に虚偽記載している、③ビジネス文書の虚偽記載自体は軽犯罪で時効が2年間である、④トランプが大統領候補になった時点でその2年間が経過していて時効が成立しており地方検事はトランプを起訴できない、⑤だがビジネス文書虚偽記載が他の重犯罪のためになされたのであれば別の犯罪となりその時効は5年間となる、⑥⑤であればまだ時効が完成していないので地方検事はトランプ候補を起訴できる、だから地方検事はビジネス文書虚偽記載の元になる重犯罪を特定することなく起訴した、⑦裁判官も民主党びいきで反トランプの人なのでその地方検事の起訴を却下せずに審理し、陪審員には当該重犯罪についての立証が不要であることと、トランプ候補に対する有罪無罪の審判は全員一致でなくてもよいと指示するという訴訟指揮を行ったといいます。
これは、事実であれば法による統治の重大な危機です。
アメリカの少なくない人は「トランプに対しては何をしてもいい。」と考えているのかもしれませんが、大衆の熱狂や暴力が法律制度に影響を与える ような国なら、資本家も安全な生活を望む人々も逃げてしまうでしょう。国家の崩壊です。
テニスの大阪なおみは、BLM運動についていまでも支持しているのでしょうか。BLM運動は何の試練もなく継続されているのでしょうか。日本にいるとよく分かりません。
世界でも、法制度がまともに機能している国はあまりないというのに、アメリカの司法が特定の政治的思考で曲げられるなんて。
私の法律的精神は大きく動揺しました。
法律は一種のイデオロギーというか、思想や宗教などから独立して考えなければならないのに。
「反トランプでも民主党びいきでもいいけど、それを法廷に持ち込むな。」と強く思います。
で、私の動揺した法律の精神を安定させるために、モンテスキューの『法の精神』を買いました。
でも、内容が難しい。
どう難しいのかというと、哲学用語や哲学概念が何の説明もなく使われているので、論理の筋を追えなくなるのです。
結局、ネットで哲学用語を調べることになるのですが、哲学用語だと思ったものがそうではなくて、日常単語だと思ったものが哲学用語だったりしてもう大混乱です。
まったく、モンテスキューは一筋縄では行きません。