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ホンダと日産 (2658文字)

 2025年2月8日現在、自動車会社である「本田技研工業株式会社」 (以下「ホンダ」といいます。)が同じ自動車会社である「日産自動車株式会社」(以下「日産」といいます。)を子会社化するというホンダの提案を日産が拒否したということが大きな話題になっています。

ネットの記事によると、
 「複数の関係者によると、従来の持ち株会社傘下に2社が入る形ではなく、日産を子会社化する案をホンダが日産に打診。ホンダ主導がより明確になることで、経営の自主性が失われることに対して、日産側の反発が高まったことが決定打になった。」
そうです。

 上記記事では分かりにくいのですが、記事中の「従来の持ち株会社傘下に・・・」の「従来の」は「持ち株会社」に係るのではなく、「持ち株会社傘下に2社が入る(経営統合案)」のことを指しています。
 これは、ホンダと日産の基本合意書(MOU Memorandum of Understanding 契約や条約、協定などが正式に締結される前段階の合意文書(覚書)のこと。)に「2026年8月に共同持株会社を設立する。」とあったので、現段階ではホンダと日産の株を所有するであろう持株会社は存在していないことになります。

 なお、持株会社(もちかぶがいしゃ)というのは、他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社を指します。よく「〇〇ホールディングス」といった商号になっています。
 最近「株式会社フジ・メディア・ホールディングス」という商号(会社名)をよく耳にしますね。フジ・メディア・ホールディングスは、株式会社フジテレビジョン(フジテレビ)の株をすべて持っている完全持株会社(純粋持株会社)です(正しくは認定放送持株会社といい、総務大臣の認定を受けた放送持株会社で、基幹放送事業者を傘下に置くことができる持ち株会社です。)。
 

 この件に関するYouTube動画を観ていると、「この経営統合の話し合いの破綻によりホンダが日産に足を引っ張られることがなり、ホンダにとって良かった。」という論調のものが多いようです。
 さらには、日産の経営陣の意思決定速度の遅さ、日産の技術力の低さ(日産の技術は、プリンス自動車(後述)の技術に依存している。日産はカルロス・ゴーンの時代に新技術の開発をほぼ放棄している。)、日産の役員報酬の高額さ(業績をあげられないくせに高い報酬を受け取っていて、現役員らは日産を食い物にしている。)、といったもので、日産を悪く評価しているものが(私が観た中では)全部でした。

 プリンス自動車工業株式会社(プリンスじどうしゃこうぎょう)は、日本の自動車メーカーで1947年に創立、以後変遷を経ながら1966年に日産自動車と合併しました。人気車種であるスカイラインは元々はプリンス自動車工業株式会社の自動車です。


 YouTubeの動画やコメントを見る限り、世論は「ホンダの味方が圧倒的多数で、日産の味方は圧倒的少数」という風に感じます。

 私は、両社の財務諸表を見ているわけではありませんし、両社が海外市場としているという北米での売上高の推移を観察しているというわけでもありません。また、両社の経営統合の経緯について個別情報を持っているわけではありません。
 さらには、仕事が自動車関連というわけでもないし自家用車を持っているわけでもないので、ホンダと日産がどうなろうと私の生活にはほとんど関係がありません。

 ただ、この経営統合のきっかけが経済産業省の働きかけがあったのであれば(ネットではそう語られています。)、「この経営統合案は筋(すじ)が悪いのだろうなぁ。」と思います。

 役所が民間経営に口を出して来ると、純粋な経営とは別に役所や役人の利益を計ろうという卑俗(「ひぞく」いやしく俗っぽいこと。)な要素が入り込むので、大体悪手(「あくしゅ」碁・将棋などで、不適当な悪い手。ここでは「まずいやり方」という意味で使っています。)になります。

 私も組織で働いているので、「決裁の過程で無能な上司が入ると起案者の考えが台なしになる。」という場面を何度も見てきました。だから、「日産の取締役の人数が他社と比較してもかなり多く、さらに業績が悪化しているのに役員報酬がこれまた他社と比較してもかなり高い。」ということを見ると(前述のように私は日産の財務諸表を見ているわけではないので、このことはYouTubeで知った知識です。)、日産という企業の未来に絶望的なものを感じます。

 企業が経営悪化した場合経営者は、①不良資産の処分(無意味な管理運用費用の節約)、②人員解雇(人件費の節約)をまず考えなければならないことです。
 でも、①も②も痛みを伴います。
 小泉純一郎総理のときには「米百俵の精神で」(後述)とか「痛みに耐えて・・・」と言って不良債権処理を断行しましたが、これと似たようなことを数多くの取締役でできるのだろうかと思います。

 「米百俵の精神」といのは、次の故事のことを指しています。
 北越戊辰戦争に敗れ困窮した長岡藩に、見舞いとして百俵の米が送られてきました。貧窮していた藩士らはその米の分配を求めますが、 長岡藩大参事の小林虎三郎は「教育こそが最終的には地域を繁栄させ、人々の生活をよくする」としてこの米を藩士らに分配せずに売却し、国漢学校設立資金の一部に充てました。
 このとき、小林虎三郎は藩士らに切り殺されるかもしれない状況にありましたが、長岡藩の藩風である「『常在戦場』([じょうざいせんじょう] 戦場の生活を予測して、平素から質素倹約を励行し、ともに心身の鍛錬をして、教養を向上させようという考え方。)の精神を忘れたか!」と一喝し、藩士らの目を覚まさせたといいます。

 経営能力のない経営者は、仕事ができない労働者より何百倍も罪深い存在です。

 このまま行くと、日産は台湾の大手電子機器メーカー「ホンハイ精密工業」と提携することになるかもしれません。

 私としては、日産には日本の企業として残ってほしいと思うので、次の定時株主総会までには経営陣を大幅に入れ替え、規模を縮小しさらに役員報酬を引き下げて「企業としての日産を立て直す」という意気込みを示してほしいと思います。

 現在の日産は、ホンダの子会社になった方が未来が明るいような気がしますがどうなんでしょう。

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