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回顧的野球論者の見解でプロ野球は生き残れるのか? (2003文字)

 プロ野球解説者がよく「コリジョン」と言いますが、これって「 collision rule 「コリジョンルール」)のことで、本塁での衝突(コリジョン)を防止するための規則をいいます。日本野球機構(NPB)において2016年から採用されました。 
 私の持っている「公認野球規則」の本は、2019年のもので古いのですが、これによると6.01(i)に規定されています。
 なお、本塁以外の塁上でのプレーに関しても「コリジョン」と言われることがあります。これは6.01(j)「併殺を試みる塁へのスライディング」の規定によるものと思われますが、こっちの方は「インターフェア」と呼ぶべきではないかと思います。

 コリジョン(collision 衝突)という言葉は、上記の6.01(i)には書かれていません。日本語で「衝突」と書かれています。
 だから、「コリジョン」というのは、この規定に関する俗称ということになります(アメリカのルールブックには当然ながら collision と書かれていると思います。)。 

 長い前置きになりましたが、この投稿で書きたかったのは、このコリジョン・ルール導入時のプロ野球解説者ら(以下「プロ野球OB」といいます。)の議論のことです。

 私の知る限り、多くのプロ野球OBらは、ご自身の現役時代の回顧を基本にして話されていたように思います。
 「必死に本塁を守るのが捕手としての仕事だ。」とか「ランナーは本塁に突っ込んで来るのが当たり前で、そこを怪我せずにアウトにするのがプロの技術だ。」と言って、「コリジョン・ルールというのは捕手の守備能力の弱体化に繋がる。」といいたげでした。

 しかし、と私は思います。
 野球は、固いボール(硬式野球の場合)、固いバット、金属の爪がついたスパイクを使うスポーツなので、ただでさえ凶器になりうる道具を使っているのだから、それらによって怪我しないのは「危険行為をしない」という野球選手のスポーツマンシップに依存しているわけです。
 しかし、野球をする人はすべてスポーツマンシップを持っているかというと、そうとは言えません。
 例えば巨体の選手は、その巨体を利用してプレーをしようとするでしょうから、本塁突入のときにはその自重を利して得点確率を上げようとするでしょう。そもそも、野球は報復死球がある(と私は断言します。)スポーツです。
 本塁上の交錯プレーは格闘技と同じだと考える選手なら、敵チームの捕手の脳震盪くらいなら気にしないのかもしれません。
 そんな粗野なプレーヤーが出場する試合が存在し得ると考えると、自軍選手の損傷を回避しようとするのは当然だと思います。

 でも、プロ野球OBは回顧的で、ご自分の過去の経験が考えの中心にあるようで、時代の変化というか社会の変化に鈍感です。
 こういう種類の人って、経済界では会社を潰す代表取締役(会長や相談役となっている人を含めます。)なんだろうなぁ、と思います。

 プロ野球を興行として考えると、企業としての球団の収益性を抜きにしてルール変更の適否を考えることはできません。
 しかし、企業性というか収益性が前面に出るとカネの匂いが鼻についてファンが離れてしまいそうです。
 一方、過去のやり方を踏襲しようとすると、今度は若いファンが離れそうです。若いファンは古い考えに否定的ですから、そういうことには敏感です。
 では、ベテランのファンはどうかというと、ベテランファンは高齢ですから自然減していきます。若いファンは離れ、ベテランファンは何もしなくても減少するので、結局プロ野球ファン全体の減少傾向に拍車を掛けてしまうと言えます。

 現在、スポーツの興行はプロスポーツの他にアマチュアスポーツの大会も多く、また人気スポーツは多様化しています。
 つまり、観客獲得の市場競争は熾烈になってきています。
 そんなとき、回顧的な考えで新しいルールを批判するというのは、社会に受け入れられるとは思えません。
 以前見た研修用ビデオでに、旧来型の管理職が「俺の若い頃は足を棒にして顧客回りをしたもんだ。今の若い奴は何かというとパソコンだスマホだと楽をすることばかり考える。」と憤っているシーンがありました。
 この会社の株主は、こういう管理職の存在を恐らく好ましくは思わないでしょう。

 プロ野球OBも、今より投手の球種が少なく、速球の速度も145キロメートル前後で、フォークボールが魔球だった時代を回顧して、現代野球を語ろうとしても、それについて来る人はごく少数だろうと思われます。
 多くのスポーツファンは、「説教臭いこと言うなら、野球じゃなくてバスケットボールの試合を見に行く。」という風に、他のスポーツ興行に行ってしまいます。

 プロ野球OBでも、日々勉強をしている人がいると思いますが、そういう人って少数派のようです。


#コリジョン #コリジョンルール


 

 

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