『刑事マードックの捜査ファイル シーズン2 #16 第3話 野望と嫉妬 Dinosaut Fever』 (3789文字)
『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン2第3話(#16)「野望と嫉妬 Dinasauto Fever」の感想を書きます。
前回(シーズン2第2話(#15)「ヘビとハシゴ」)で恐竜展の舞踏会に参加するため、マードック刑事とジュリア・オグデン検視官はダンス教室に通いました。(このことは感想に書かなかったような気がします。二人の恋愛の発展は、事件捜査に関係ないと思ったので、多分書いていないでしょう。)
この恐竜展はトロント市の今年一番の催しだということです。
恐竜展のチケットは、ブラッケンリード警部がマードック刑事に2枚渡されました。この段階で(「ヘビとハシゴ」事件の捜査の期間中です。)恐竜展を「来週」と語られているので、今回の事件は「ヘビとハシゴ」事件の翌週ということになります。
ここでも殺人事件が起こりますから、トロント第4分署は大忙しです。
そうそう、題名についての説明をしていませんでした。
邦題の「野望と嫉妬」は、古生物学者同士の争いを指しています。
原題の「Dinosaur Fever」(恐竜熱病)は、古生物学者だけでなく、マードック刑事も含めた一種の恐竜愛を指しています。
はなしを戻します。
ドラマ冒頭、マードック刑事とジュリア・オグデン検視官は舞踏会でダンスをしています。
やがて視聴者である私たちは、これが恐竜展の舞踏会だと分かります。
この恐竜展では、恐竜ハンターのバークレー・ブレイク氏の発見した化石が公開されます。
そこに、礼服を来ていないサットン氏という考古学者も来ています。彼は、バークレー・ブレイク氏とは仲が良くないようです。
この恐竜展がトロントの今年一番の催しと言われる通り、カナダの首相も出席されているようです。
そしてちょっとした揉め事があるのですが、その際展示されているテラーサウルスの骨格標本の口にくわえられた死体が発見されます。悪趣味な死体の置き方です。
ドラマの字幕では「テラーサウルス」とありましたが、これはおそらくティラノサウルスのことだと思います。
現場でざっとみたところ、その恐竜の口にくわえられていた死体(発掘隊の助手であるルーカス・ドウィット)の頭部(右頭部)には丸い穴が開いていました。これをみて、マードック刑事は射殺だと思ったようです。また、その穴の周囲に火薬痕がないので、私は至近距離で撃たれたのではないなと思いました。
このあと、関係者からの事情聴取の過程で、オスニエル・マーシュとエドワード・コープとの「化石戦争」(Bone Wars)と呼ばれる争いについて語られます。
これは、19世紀末にアメリカの2人の古生物学者、エドワード・ドリンカー・コープとオスニエル・チャールズ・マーシュとの間で繰り広げられた恐竜の化石の発掘競争のことです。別名「化石争奪戦」とか「骨戦争」とも呼ばれます。詳細はここに書きませんが、結局最後には2人とも資金を使い果たし、破産したそうです。
これは、二人が愚かだったのか、この当時は化石の発見にそれほどの価値があったのか分かりませんが、破産はしたくないですね。
この回は、化石に関するいろいろなことが語られます。以下にそれらに触れながら書いていきます。
獣脚類(じゅうきゃくるい)。獣脚類の学名はラテン語でTheropodaです。意味は「野獣の足」で、鋭い鉤爪の様子から1881年に命名されました。「獣脚類」は、これを直訳したもので、獣竜(けものりゅう)とも言うそうdす。
恐竜の分類について、以前から疑問に思っていたことを今回いい機会なので調べてみました。
【恐竜の分類について】
(1) 恐竜とトカゲの違い
恐竜とトカゲの違いは、脚の付き方や膝(ひざ)の角度だとされます。
恐竜は、脚が下向きに生えており、膝をまっすぐに伸ばして 全体重を支えていました。
トカゲは爬虫類で、脚が横に伸びており、膝(ひざ)は90度近く曲がっています。
(2) 恐竜の分類の仕方
恐竜は、骨盤 (こつばん) の特徴から大きく「鳥盤類(ちょうばんるい)」と「竜盤類(りゅうばんるい)」の2つのグループに分けられています。それぞれ、現在の鳥の骨盤、トカゲの骨盤に形が似ているということで名付けられました。
鳥盤類はさらに、ステゴサウルスなどを含む「装盾類(そうじゅんるい)」(背中に並ぶ特殊な骨を持っています。)、イグアノドンなどを含む「鳥脚類( ちょうきゃくるい)」(2足歩行も4足歩行もできます。)、トリケラトプスなどを含む「周飾頭類 (しゅうしょくとうるい)」(頭の骨が後ろ報告に張り出しています。)に分けられます。また竜盤類は、ブラキオサウルスなどを含む「竜脚形類(りゅうきゃくけいるい)」(長い首と小さな頭を持ちます。)と、ティラノサウルスなどを含む「獣脚類(じゅうきゃくるい)」(かぎ爪と中空の骨を持ちます。)に分けられます。これらのグループも、それぞれがさらに細かく分類されています。
このような系統分類は、骨格同士の似ているところや違うところを探し出して整理する中で形作られています。
蹄状体(「ていじょうたい」普通の呼び名は「かぎ爪」だそうです。)ドラマ内では、アルバートサウルスのものだということでした。
蹄状体は、調べても分かりませんでした。
かぎ爪(claw)は、動物の肢の先端において、根元から先にかけて内側に湾曲した爪のことなので、恐竜の爪を想像すればいいのだろうと思います。
私は親や先輩らから、昔のプロレスラー「フリッツ・フォン・エリック」の必殺技、「鉄の爪アイアンクローの話を聞いていたのですが、そのうち、「爪ってネイル(nail)じゃないの?」と疑問を持ちました。「ネイルサロン」とか言いますもんね。
でも、親や先輩にその疑問を言うと、ものすごく長い時間プロレス談義をされるので、ずっと黙っていました。そして長い月日が流れやっと疑問が解けました。なるほど、「アイアンクロー」って、「鉄のかぎ爪」ということだったのですね。
そうそう、被害者のルーカス・ドウィットは富豪の子弟で、実家から派遣された医師によって解剖するよう通達されます。つまり、オグデン検視官は直接解剖できないわけです。オグデン検視官はとても立腹しますが、主任検視官の署名入りの文書が届いているので逆らえません。
そこで、オグデン検視官は、病院に配備されているレントゲン装置を使用して、被害者の頭部に残っているであろう弾丸を調べようとします。
レントゲン装置(又はエックス線装置)についてはここで書く必要がないくらい有名だと思うので説明は省略します。
ブラッケンリード警部とマードック刑事とジュリア・オグデン検視官は、被害者の頭部のレントゲン写真を撮影します。
このとき、ブラッケンリード警部が普通の服装のまま防護服などを身につけずに写真乾板(「しゃしんいかんぱん」 写真術で用いられた感光材料の一つで、ガラス板に光に感光する物質を塗布したものです。)様の板を持っていたのですが、被曝(「ひばく」とは放射線にさらされること、つまり放射線を浴びることを意味します。なお、被爆は、広義では爆撃など爆発物による被害全般のことを指しますが、一般的には原子爆弾、水素爆弾によって被害を受けることを言います。)していないか心配です。
でもよく考えてみたら、レントゲン撮影に同席したみんなに被曝の可能性があったわけです。
なお、恐竜に関していえば、クラブツリー巡査が現代にも恐竜がいるかという話題を出したとき、ブラッケンリード警部は「ネス湖にはいそうだ。」と言います。
ネッシーと呼ばれたネス湖の恐竜は、20世紀にはなってから話題が拡散されたので、マードック刑事の活躍する19世紀終わりのこの時代でブラッケンリード警部が「ネス湖」の名を出したのは偶然ということになります。
話を戻します。恐竜展でテラーサウルスの骨を発表しようとしていたバークレー・ブレイク氏を嫌うサットン氏は、ブレイク氏と同時期に近い場所で双子葉(そうしよう)植物を掘っていたと言っています。
双子葉植物というのは、2枚の初期葉もしくは子葉をもつ植物のことです。
黄麻布(おうまふ)とは、ジュート植物又はサイザル麻の葉の皮で作られた織物です。麻袋に似ているのだろうと思います。
一応補足として、従犯(じゅうはん)についても書いておきます。従犯とは、正犯が犯罪を実行しやすくした人(幇助犯「ほうじょはん」)のことです。この事件では事後従犯(じごじゅうはん)が問題になると思います。日本の刑法63条では「正犯の刑を減軽する。」とあります。つまり従犯は、犯罪行為を実行した人(正犯)より多少刑が軽くなるってことです。
あれやこれやで、マードック刑事は事件を解決します。
ドラマの終わり頃、マードック刑事は後年の自分が化石発掘をしていることを想像します。場所はおそらく、世界屈指の化石発掘地であり、今回の事件でバークレー・ブレーク氏が発掘作用をしていたカナダののアルバータ州バッドランドです。
彼は小さな息子と妻とともに発掘場所のテントにいます。
その妻が誰かは分かりません。