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子ども向けの世界文学全集 (1664文字)

 手元に集英社の『子どものための世界文学の森 15  シャーロック・ホームズの冒険』があります。
 奥付をみると「1995年6月14日第4刷発行」(「刷」の読みは「すり(ずり)」か「さつ」です。)ですから20世紀の終わり頃か21世紀の始め頃に、誰かが私の家に持ち込んでそのまま置いて行ったのでしょう。

 カバーの折り返しを見ると、このシリーズは、全30巻で、『1 若草物語』、『2 たから島』、『3 ガリバー旅行記』、…、『8トム・ソーヤーの冒険』、『15 シャーロック・ホームズの冒険』、『16 ロビンソン・クルーソー』、『30 三銃士』があります。このシリーズは小学低学年〜中学生向けです。
 同社からは別のシリーズとして『少年少女世界名作の森』があって、『①ああ無情』、『②クリスアス・キャロル』、『⑦宝島』、『⑬怪盗ルパン』、『⑲西遊記』等があります。

 私は、思春期まで文学とはあまり縁がなくて、高校受験のときに「名作とその作者」を暗記したくらいです。この受験対策はあまり実践的ではなかったと思いますが、その後成長してから専門書籍等を読むときに役に立ちました。

 文学書には、書かれた時代が描かれていたり書かれた時代の考え方が反映されていたりして、その作品の物語の面白さとは別に行間にこそ意義があると思います。

 学生時代に先生から「行間を読め。」と言われました。私はそれを「ある行と次の行との繋がりを読み取る。」という意味に解釈していましたが、今はそうではなく、「各行を通して作品の核になる部分を読み取る。」という意味だと理解しています。「作品には作者が言いたいこと(執筆意図)が含まれていて、読者がそれを探り出すことにこそ意味がある。」という考えです。

 『ロビンソン・クルーソー』(大人が読む本としては『ロビンソン漂流記』という題名となっているものが多いようです。)もマルクスは『資本論』で言及していますし、マックス・ウェーバーは『プロテンタンティズムの倫理と資本主義の精神』で触れています。

 マルクスの著作もマックス・ウェーバーの著作も、娯楽として読む種類の本ではないので(私は『資本論』は始めの方で挫折しました。数式を使わないで経済を語られるのがこんなに読みづらいとは思いませんでした。)、そのレベルの本を読もうとしているときに子供のころ読んだ文学書の記憶が役に立つというのは、けっこう感動します。「あの頃、親や先生の言うことを聞いて、我慢して読んでおいてよかった。」と思いました。
 もちろん、子供用の文学書は原典からみるとかなり省略されたり簡略化されて書かれていますが、「過去に読んだことがある。」という記憶は、その後の勉強に向かうとき、そのハードルを大きく下げてくれます。

 話が飛びましたが、名作の「作家と作品名」の暗記は、上記の「過去に読んだことがある。」という記憶の次に(次順位くらいで)その後の勉強の難易度というかハードルを下げてくれると思います。

 私はディケンズの『クリスマス・キャロル』を、当時の資本家(産業革命後に労働者から搾取している資本家。)の強欲に対する戒(いまし)めの書だと理解していて、修正資本主義の象徴と思っています。(当時の資本家は強欲で非人間的で、当時の工場労働者の生活の悲惨さは「社会問題」とされていました。でも、かといってマルクス主義には傾倒しませんでしたが。)
 その資本家の体現しているのが主人公のスクルージだと思っています。

 なお、私の書棚には、『クリスマス・キャロル』(村岡花子訳 新潮文庫)が2冊あります。
 恐らく、「読まなくちゃ。」と思って1冊買って、そのうち忘れてしまい、また「読まなくちゃ。」と思ってもう1冊買ったのでしょう。
 で、2冊めをちゃんと読みました。
 読書って、よくそんなことありますよね。

 私は、子供ころにできるだけ文学作品(子供向けでもなんでも)を読むことに大賛成です。

#創作大賞2024 #エッセイ部門 #ロビンソン・クルーソー #クリスマス・キャロル

 
 

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