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実務に正確なドラマはあまり面白くないということ (1029文字)
これは私の思い込みかも知れませんが、「ある仕事を描くドラマで、その実務に正確なドラマ(リアルなドラマ)はあまり面白くない」と思っています。
ここでは刑事ドラマに限って書きますが、たとえば人情刑事です。
私は、警察には人情刑事と形容されそうな人はほとんどいないと思います。
人情なんてその人の気持ちの問題です。
そんな担当官の気持ち一つで捜査されたら、生まれながらに人から憎まれる外面や話し方や態度をとる被疑者は立つ瀬がありません(故望月三起也氏の漫画『ジャパッシュ』には、幼児期に火事で顔に大火傷を負い悪相になり、そのせいで悪人と決めつけられる人が出てきますが、人情なんてそういう思い込みに陥りがちだと思っています。)。
でも、そうするとドラマとしては面白くなりません。
刑事事件の捜査にも、主人公が逡巡(「しゅんじゅん」ぐずぐずすること。ためらうこと。)したり執着する要素がないと盛り上がりません。
火曜サスペンス劇場の『刑事・鬼貫八郎』(けいじ おにつらはちろう)というドラマ(全18回ありました。主演は大地康雄さんでした。)は、アリバイ崩しの面白いミステリドラマでした。
毎回殺人事件があり、捜査本部もなく巡査部長の鬼貫刑事がほぼ一人で犯人に挑みます。
実際の警察ではこんな捜査はないでしょう(警察勤務の経験がないので断言できませんが。)。
でも、視聴者としては鬼貫刑事が一人で奮闘するので(自宅で深夜まで事件を考えつづけている姿に共感します。また、そういうときに奥さんが主人公の糖尿病を気にしながらも、「一杯だけよ。」と水割りを持ってきてくれるシーンに羨[うらや]ましさを感じたりします。)、ドラマに没入できます。
警察官が集団で捜査する醍醐味を描いた映画に故黒澤明監督の『天国と地獄』がありますが、あれだって実際の捜査をなぞったものではありません。
やはり、ドラマにはフィクション(fiction 作りごと。虚構。創作。小説。)がないと楽しめません。
ドラマの全部がフィクションの場合は逆につまらなくなりますが、ほどよいリアルさとフィクションの組み合わせが面白いドラマになると思います。
今話題のドラマ『ホットスポット』も、「ビジネスホテル業務のリアルな描写や、主人公ら中年女性のリアルな会話劇があっての宇宙人の存在が生きているのだ。」と思って毎週観ています。