出場機会と人事異動 (1576文字)
プロ野球でもプロサッカーでも、監督の構想にはずれた選手は試合に出る機会がなくなります。プロ野球ならいち軍登録、プロサッカーなら日本代表への召集などでその監督判断で物議(世間の評議)を醸す(「かも-す」 ある状態や雰囲気などを作り出す。)こともあります。
「なぜ、あの選手を出さないんだ!」とファンは騒ぎ、スポーツ新聞などは「監督との確執か?」などと書き立てて監督と選手の対立関係に話を持っていこうとします。
しかし、サラリーマンなら人事が非情であることは知っているはずです。サラリーマンでない人も、取引相手に無理強いされたり貸金を踏み倒されたりといろいろ理不尽なことを経験しているはずです。
だったら、プロスポーツの世界で人事権を持っている監督がその人事権を行使した結果が、ファン等の見解と一致しなかったからといって騒ぐのはおかしなものではないかと思います。
プロ野球のトレード(trade 貿易、取引。プロ野球で、球団が選手を移籍・交換すること。)についての受け止め方は、現在は「出場機会のあるチームに行ける。」というポジティブ(positive 積極的、肯定的。)なものになりつつありますが、かつては「チームから追放される。」というネガティブ(negative 否定的、消極的。)な印象でした。
でも、選手として所属しようとする球団と取り交わした契約書には、トレードのことも書かれているはずで、当事者の合意があったことについてその契約条項が発動されたとして何が問題なんでしょう。
かつて巨人が超人気球団で、巨人に属することで得る利益が計り知れなかった時代なら、選手は「巨人軍から出たくない。」と思ったかも知れませんし、巨人ファンも「あの選手を他球団に渡したら、相対的に巨人の戦力が低下する。」と思ったかも知れません。
でも、選手の残留希望は、トレードも人事異動に含まれると解釈することができるので、「仕事と私情とは別だ。」と思います。
また、戦力については巨人軍の首脳陣はすでに考えているはずで、素人が口を出すことではないと思います。
過去にサッカー・ワールドカップで主要な日本選手が外されたということがあり、「監督は無慈悲だ。」とか「なぜあの二人が外されるんだ。」という声がありましたし、スポーツ新聞にも書かれました。
そのワールドカップでは、日本は一勝もできなかったので、その監督の選手選択が余計に批判されました。
しかし、サラリーマンの人事異動では、家族の病気といった事情は一応考慮されますがそれでも厳しい異動というものがあります。「会社を辞めろ!」と言わんばかりの異動もあります。そうやって従業員のプライドを傷つけて「だったら辞めてやる!」と言うのを会社は待っているのかも知れません。
プロスポーツの世界も実業界も、神経を逆なでされるようなことが沢山あります。そこに悪意がないとは思いますが、そっちの善意がこちらからみすろと悪意に見えることもあります。
かつて糖尿病を患いながらも、「この仕事を終えたら病院に行く。」と言い仕事を続けて亡くなった先輩職員がいました。葬儀のとき、その先輩のお子さんがまだ小さかったのを見て、「私は、仕事なんかより健康をとる。」と決めました。
だから、不本意な人事異動になったとしても、別の就職先が見つからない限り、今の仕事を辞める気はありません。
きっと、不本意な環境にあったり不満なトレードがなされたとしても、私と同じ考えの選手なら、辞めないで「(監督や球団に)目にもの見せてやる」(「目に物見せる」 ひどい目にあわせて、思い知らせる。)と、より練習すると思います(「ひどい目にあわせて」というのは、「試合で大活躍して」という意味です。)。