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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン3 第10話#36 呪われた屋敷 The Curse Of Beaton Manor』(5233文字)

 カナダの大ヒットミステリ『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン3の第10話(#36)「呪われた屋敷 The Curse Of Beaton Manor」の感想を書きます。

 邦題の「呪われた屋敷」は、この屋敷に住むビートン家の子供達が半ば信じている呪いを示しています。

 原題の「The Curse Of Beaton Manor」は、「ビートン荘園の呪い」という意味になろうと思います。こちらの方が、より物語の内容を反映させているように思います。

 嵐の夜のある屋敷。
 部屋で新聞を呼んでいたチョーンシー(次男)は停電になったので、執事のゴッドフリーを呼びます。
 ゴッドフリーはランプを二つ持ってきて、一つをチョーンシーの机の上に置きました。
 その後、風で窓が開いたのでチョーンシーが窓を閉めに行くと、ガラスに誰かの影が映ります。驚いて振り返ったチョーンシーは「ティモシー、私が悪かった。許してくれ!」と叫び、恐怖のために顔を歪(ゆが)めました。(この後ショーンシーが死んだであろうことが想像されます。)

 モルグ(morgue 遺体安置所)では、ジュリア・オグデン検視官が窓の外を立って見ています。
 そこにマードック刑事がやってきて二人で寄り添いながら窓の外を見ていると、クラブツリー巡査がやって来て「ビートン家のお屋敷で不審死があった。」と連絡しました。クラブツリー巡査は自分が二人の邪魔をしたということが分かっているのでなんとも申し訳なさそうでした。

 現場でジュリア検視官が死体をみたところ、首の骨が2か所で折れていました。
 マードック刑事達が、この転落が事故か自殺かとその可能性を話していると、メイドのクレアが「屋敷に殺された。ブードゥーの呪いがかかているのよ。」と言い出しました。
 執事のゴッドフリーはクレアが質問されていないのに発言することを快く思っていなかったのか、クレアを軽く制しました。
 チョーンシーの転落死を警察に通報したのは、この執事のゴッドフリーでした。

 ゴッドフリーは、「チョーンシー様を見つけたとき、あの窓(上階の窓)に人影が見えました。」とマードック刑事に言いました。
 クラブツリー巡査が見上げると、誰かがいてこちらを見下ろしていました。

 このシーンは、幽霊が消えずに残っていたようで怖いです。

 マードック刑事とクラブツリー巡査がその窓のある部屋に走って行くと、男が一人立っていて「自分はロナルド・ビートン、死者の兄だ。(兄の)コーンシーも自分も『自殺の家系』である。」と言いました。
 そして、コーンシーが転落したとき、自分は寝室で眠っていたと言いました。
 また、ロナルドは「心臓が悪く、今度発作がきたおしまいだ。だから兄を突き落とすことなどできない。」と言いました。
 また、「呪われているのは屋敷でなく一族だ。」とも言いました。

 別の巡査がマードック刑事に「コーンシーの落下前に叫び声がした。」と言う者がいると報告に来ました。

 ロナルドもその叫び声で目が覚めたそうです。

 マードック刑事は、客間に家族と使用人合計8名を集め、チョーンシーの叫び声を聞いた者に挙手を求めました。
 叫び声を聞いたのは、4人でした。
 使用人の一人の女性はその声はチョーンシーのもので叫んだ内容はティモシー(チョーンシーら兄弟の腹違いの弟。彼は2月に自殺して亡くなっていて、客間の壺に遺灰が入っているのだ、とロナルドが説明しました。)の名だったと言いました。
 残る兄弟は2人(ロナルド(三男)とバイロン(長男))です。バイロンは不在(じき帰宅する予定。)で、その妻がこの客間に集まった家族の中にいました。
 チョーンシーがティモシーの名を叫んだのは、ロナルドによると「罪悪感」からだそうです。
 そこにバイロンが帰宅しました。

 バイロンの妻がチョーンシーの遺体を庭のプールで見つけのだそうです。そして、兄弟3人の全員がその死に罪悪感を持っているそうです。
 ティモシーは兄弟一人ずつに遺言を残しました。その内容は、彼と母親への仕打ちを責めたものだったといいます。
 
 ティモシーは、兄弟の父がその妻の死後に、メイドに手を出し産ませた子でした。バイロンらはティモシーを兄弟とは認めず、母親ともども虐げたそうです。
 ティモシーの母親は昨年肺炎で死にました。

 翌日の第4分署
 マードック刑事はクラブツリー巡査に、呪いの件も含めてビートン家のことを探るように指示しました。
 ブラッケンリード警部はマードック刑事に「けしかけるな。」と言います。クラブツリー巡査がこういうこと(呪いなどの超常現象)が好きで信じ込む傾向があることを警戒したのです。
 でもマードック刑事は「迷信が殺人の隠蔽に使われる時もあります。」と言います。

 モルグ(morgue 遺体安置所)でジュリア検視官はマードック刑事に、「(昨日の死体は)落下の衝撃で頭蓋骨が砕け、首も骨折しているが、落下の直前に心臓発作を起こした痕跡がある。」といいます。
 心臓発作が起きたら、たいていは床に倒れ込むのだが、チョーンシーは窓から身を投げたようです。

 マードック刑事が、ジュリア検視官に「30歳の若さで心臓発作が起こるものだろうか。」と尋ねると、ジュリア検視官は「起こる。先天性とか動脈異常それにショックでも。」と答えます。また、誰かに襲われても起こりうるようです。

 ジュリアの話では、ティモシーは好きな人をバイロンに奪われたそうです。

 クラブツリー巡査の報告は「たんまり」ありました。
(1) ビートン家のもともとの名はビトンで、フランス人です。
(2) 植民地時代のハイチに渡り大農園を経営しました。
(3) 1791年に奴隷の反乱が起こると、祖国も革命の嵐で戻れずカナダに移住しました。
(4) 財産源はゴムの木で、コンゴに広大な土地を持っています。
(5) この100年の間、1人を除き男は皆50歳前に死亡。7人が心臓発作、5人が自殺、3人が事故死でうち2人が馬がらみです。
 クラブツリー巡査の結論は、(5)については呪いとしか思えないということでした。
(6) (5)の例外の1人はヘンリー・ビートンで、あの兄弟の父親です。3年前に60歳で死亡しました。死因は、おそらく心臓発作です。

 クラブツリー巡査の報告が終わった頃、執事のゴッドフリーが第4分署に来ました。
 ゴッドフリーによると、この2週間ゴッドフリーの姪のメイドのクレアが屋敷の中で「幽霊を見た」と言っているので、バイロンが怒っているそうです。 
 で、その幽霊ですが、昨夜警察が帰った後ゴッドフリーも見たというのです。
 それは、亡くなったときにチョーンシーが見た人物、つまり2月に死んだティモシーなのだそうです。

 マードック刑事は、ビートン家の屋敷の客間に家族と使用人を再び集めて、ティモシーの幽霊を見たという人をの自己申告を促(うなが)します。バイロンは「幽霊を見たといってもクビにしない(解雇しない。)。」と約束しました。
 すると、メイドのクレアが手を挙げ「先週、東の廊下で見た。亡くなったときと同じ服装だった。誰もいないのに足音も(聞こえた。)。」と言いました。

 バイロンは幽霊を否定しますが、ロナルドは超常現象を肯定的に考えているようです。
 二人の言い合いは激化し、ティモシーの恋人のことに及んだため、バイロンの妻ロウィーナは泣きながら客間から出て行ってしまいました。

 マードック刑事が玄関から外で出ると、その階段にロウィーナが座っていました。

 ティモシーとロウィーナは付き合っていましたが、バイロンが横取りしました。そのせいでティモシーは自殺したとロウィーナは思っているようです。
 ロウィーナは「(自分がバイロンに奪われたことが自殺の原因だ。)と告げた手紙をくれた。」と言います。ロウィーナはティモシーを探しましたが、庭のプールに沈んでいたのだそうです。「ティモシーの腰には石の重し。暑く張った氷が割られていた。」とロウィーナは続けました。

 ティモシーの死亡診断書はグラッズフォード医師が作ったそうです。ジュリア検視官によると、グラッズフォード医師は名医だそうです。
 ティモシーの死亡診断書は、彼を水から引き上げて1時間後の所見で、「心拍 呼吸 なし  体も冷たい」と書かれていました。
 どうやら、ティモシーは間違いなく死んでおり、屋敷に出たという幽霊は別人と考えるべきのようです。

 クラブツリー巡査がメイドのクレアから聞いたことによると、ティモシーはいとこのシャンテの息子だったそうです。
 また、クレアはティモシーとともに何度かハイチに逝ったことがあり、ゾンビについても知っていました。

 クラブツリー巡査は、幽霊の目撃証言を屋敷の図面に日付と目撃内容(姿を見たのは赤印、足音を聞いたなどは青印を付けています。)とともに表示しました。かなり整理された図になっています。
 それによると、最初は11月8日(10日前)です。
 目撃されるのは常に深夜で0時から3時ころです。
 全部で9件。ほぼ毎日目撃されています。
 これを見たブラッケンリード警部は、「屋敷に泊まり込もう」と言います。本当に幽霊なら留置場に取り付かせてやる。」と息巻きます。

 夜遅く、ブラッケンリード警部、マードック刑事、クラブツリー巡査それにヒギンズ巡査はビートン家の屋敷に出向き張り込みます。
 クラブツリー巡査とヒギンズ巡査は屋敷の東側を、ブラッケンリード警部とマードック刑事は西側を見回ることにしました。

 見回っているときの会話から、ブラッケンリード警部の故郷がヨークシャー(イングランドの北部にある地方で、一地方としてはイングランドで最大の面積をもち、様々な固有の文化を持っています。)だということが分かりました。

 私は、ヨークシャーというと、ヨークシャーテリアしか連想できません。「ヨークシャーテリアは、遊び好きで非常にエネルギッシュですが、決して落ち着きがないわけではなく利口なため、初めてペットを飼う方でも飼いやすいといわれています。 非常に頭が良く記憶力、学習能力ともに高いため、飼い主さんが教えたことはきちんと実行することができます。」ということですが、私は雑種犬しか飼ったことがありません。

 クラブツリー巡査とヒギンズ巡査がチョーンシーの部屋を調べていると、窓ガラスに入口に誰かが立っている姿が映りました。
 二人はその人を追いましたが、廊下の角を曲がったところで消えてしまいました。

 屋敷の廊下の曲がり角で人が消えるというとガストン・ルルーのミステリ小説『黄色い部屋の秘密』が思い出されますが、今回はそういうのとは状況が違います。

 ヒギンズ巡査がブラッケンリード警部とマードック刑事を呼んできて、4人で「なぜ人が消えたのか」話し合っているときに誰かの悲鳴が聞こえました。
 ブラッケンリード警部とマードック刑事が声のした方に向かうと、ロナルドが廊下に倒れて死んでいました。
 見たところロナルドは自然死でした。

 翌日第4分署でマードック刑事は、「整理すると、4人兄弟の3人が死亡 2人は この3日の間で」と言いました。
 すると、ブラッケンリード警部は「残った1人が財産を独占か。バイロンを引っ張れ。」とマードック刑事に言います。

 そこにビートン家の弁護士が来ました。ブラッケンリード警部が話を聞くために呼んだようです。

 その弁護士によると、遺言により、遺産は合有財産の形でご子息4人に譲られたそうです。
 合有財産というのは、夫婦の財産形式のように、一方が死ぬと他方が引き継ぐ形式で、ビートン家なら残った兄弟が引き継ぐことになるそうです。このような遺言にした理由は二つありました。
 第一は屋敷のためでした。土地や屋敷(家具を除いて)だけで6万ドル相当の財産です。土地や屋敷を売ればその代金を分配することができますが、そうするとビートン邸の名が消えてしまいます。

 第二は、子息の1人が懸念を示したからです。その懸念とは末弟のつまり混血のティモシーが、自分の取り分を使用人に譲る気だというのです。ティモシーが兄達より長生きなら問題ないが、先に逝ったら大混乱になると。その懸念を示したのは長男のバイロンです。

 第4分署で、マードック刑事はラテックス・ゴムを使いティモシーのデスマスクからお面を作っています。そこにジュリア検視官が来て、ロナルドの死因は、強烈な心臓発作で即死だったろうと言います。

 完成したお面はブラッケンリード警部が驚くほど上出来でした。


 そして、あれやこれやでマードック刑事は犯人を逮捕します。

 事件後にブードゥーの呪いが起こしたようなシーンがありました。
 ビートン家の呪いは本当にあるのかもしれません。
 

#マードック #ハイチ #ブードゥー #ゾンビ  
 
 


 
 

 
 
 

 
 


 

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