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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン2 第5話 #18 緑の妖精 The Green Muse』 (3876文字)
『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン2 第5話(#18)「緑の妖精 The Green Muse)の感想を書きます。
邦題の「緑の妖精」は、今回登場する酒である「アブサン」を飲むと現れるという幻覚のことです。
たくさんの人たちを虜(とりこ)にしたアブサンですが、原料のニガヨモギに含まれる香味成分・ツヨンが強い向精神作用を引き起こすとされ、20世紀初頭に製造・販売・流通が禁止になりました。しかし1981年、WHО(世界保健機関)によってツヨンの残存量に基準が設けられ、製造が解禁されて復活を遂げたそうです。
向精神作用とは、精神の機能に影響を及ぼし、気分や情動、感覚、意欲、思考などを変化させる作用を指すそうですから、この時代のアブサンを飲むと「緑の妖精」ぐらい見そうですね。
この時代、覚せい剤も麻薬も未だ法規制されていなかったので、いろいろなもので依存症になる人が多かったことでしょう。
産業革命以降人類の個体数は飛躍的に増加したといいますが、健康な人は意外に多くはないのかもしれません。
原題の「The Green Muse」のMuseは、「ミューズ」で芸術・学問をつかさどる女神ということですから、原題も邦題と同じようなもんです。
今回は、「ウェストン音楽院」(WESTON MUSIC ACADEMY)で起きた殺人事件から物語が始まります。
「ウェストン音楽院」は、音楽学校ではなく娼館(「しょうかん」子供がこの文章を読むことを考えると説明が難しいのですが、俗にいう「いかがわしい店」です。これ以上詳しいことはお兄さんかお姉さんなど比較的年齢が近い年長者に聞きましょう。お父さんやお母さんそれに先生には聞かないようにしましょう。)
ある日の深夜、このウェストン音楽院に窓から火炎瓶が投げ込まれます。
そこのオーナーであるウェストンさんという女性の指示で全員が建物の外に避難しました。
ウェストンさんは、避難した女性の中にコーラ・デブローさんがいないことに気づき、逃げようとし出口に急いでいる女性達に「コーラは?」と尋ねますがだれも分からないようです。火炎瓶による炎がそれほど大きくなかったこともあり、ウェストンさんは2階に上がってコーラ・デブローさんを探そうとします。そして、ある部屋のドアを開けて呆然(「ぼうぜん」)とします。そこには、血だらけのコーラ・デブローさんがベッドの上に横たわっていました。
その後、火事は鎮火(「ちんか」火が消えること。)し、警察が来て現場検証が始まります。マードック刑事もジュリア・オグデン検視官もやってきます。
オグデン検視官は、現場で死体(コーラ・デブロー 23歳)をみて、死体の頸動脈(けいどうみゃく)と頸静脈(けいじょうみゃく)両方ともワイヤーで切断されていること、首まわりに前にも襲われた痕(あと)があると言いました。
頸動脈(けいどうみゃく):心臓から脳に血液を送る重要な血管です。あごの付け根あたりを流れ、手で触れるとドクドクと脈を打つのが分かるほど皮膚の近くに位置しています。
頸静脈(けいじょうみゃく):首にある太い静脈で、脳や頭部の深層、筋肉などからの血液を集めています。
ウェストンさんによると、コーラさんは以前はモントリオールにいましたが、客の暴力から逃れるために半年前にトロントに来たそうです。
コーラさんには、画家のアーサー・ウェブスター氏という常連の客がいました。当夜も来ていましたが、ウェブスター氏はしつこくコーラさんに付き纏ったので、午後10時頃にこの店(音楽院)を追い出されました。
(以下、登場人物の敬称を省略します。)
この店から避難した者や顧客のリストを作ると、その中にコーラ・デブローの客の中にウィルソン判事がいました。
翌朝、ウィルソン判事に確認すると、判事はそれを
否定しました。
そういうときに、禁酒同盟のビーチャーという男が第4分署のブラッケンリード警部の前に現れます。
ビーチャーは、署内に次のようなビラを配ります。
THE TEMPE RANCE(禁酒) LEAGUE(連盟・同盟)
WANTS YOU TO KNOW (あなたに知ってほしい)
HOW(どんなに) DRINK(酒) LEADS TO IMMORALITY(不道徳) (どんなに酒が不道徳に導くか)
「禁酒同盟は、あなたにどんなに酒が不道徳に導くかを知ってほしい。」
字幕では「飲酒が背徳をもたらす。」となっていました。
ブラッケンリード警部は酒好きなので、ビーチャーの言うことが気に入りませんが、ビーチャーの音楽院閉鎖の要求は飲まなければならないようです。この時代でも娼館は違法な存在だったんですね。
飲酒について、キリスト教国では好まれないというのは一応理解できます。それは、酒に酔っていては神への祈りが疎(おろそ)かになるからです。
しかし一方、酒に酔うことで辛いことから一時的に回避できるので、酔いがさめてから祈りなり仕事なりに精を出すこともできます。長期的に見れば、酒を飲んだ方が宗教的にも経済的にも安定することが多いのではないかとも思われます。
ただ、飲酒を禁じる宗教もありますから、飲酒の必要性って本当にあるのかと問われると答えられません。
ただ私は、偽善者面した人間から「飲酒は悪習だ。」と言われたら、もっと飲みたくなるという人の気持ちは分かります。
そういえば、ブラッケンリード警部の奥さんも禁酒同盟に入っていましたっけ。
ブラッケンリード警部に同情します。
さて、ジュリア・オグデン検視官のコーラに対する検視結果です。
被害者コーラは、死の直前に薬草系の酒を飲んでいました。
それを聞き、マードック刑事はその酒は被害者の部屋に残されていたアブサンではないかと言います。
オグデン検視官は、この段階ではマードック刑事の質問に答えることができなかったようですが、アブサンについて「緑の妖精ね。飲むと現れて詩人にひらめきを与えるの。」と言います。
昨日の事件現場の娼館で、マードック刑事がウェストンと親しそうだったので、オグデン検視官は二人の関係を疑い、そのことを口にします。
すると、マードック刑事は、ウェストンは過去の殺人事件の被害者であったこと。ウェストンの友達の売春婦が殺されたがウェストンは救えたこと。をオグデン検視官に語ります。
オグデン検視官は、勘繰(気をまわしてあれこれと邪推する)ったことをマードック刑事に謝罪します。
現在の日本のテレビでは誤っても謝罪しない人を多く見るので、オグデン検視官のように潔く謝罪する人を見ると、ドラマとはいえ清々(すがすが)しい気持ちになります。
オグデン検視官は、コーラの足にムチによる傷痕があることをマードック刑事に伝えます。
ブラッケンリード警部は、売春婦についても独自の認識を持っていて「客お求めに応じて自ら危うい状況に身を置き、気づいたら手遅れだ。」と言います。ムチの傷痕も、客の求めに応じた結果だということなのでしょう。
マードック刑事は、「(コーラがいた)モントリールでなにがあったか調べる必要があります。」と言います。すると、ブラッケンリード警部は「照会してみよう。」と答えます。
ブラッケンリード警部は、口では突き放したようなことを言いますが、こういうところが仕事に熱い男です。
そこへ、ウィルソン判事(今朝ほど、コーラの客だったことを否定しました。)の息子のポール・ウィルソンがマードック刑事に面会を求めてきました。
ポールは、昨夜遅くに父が帰ってきたこと。最近、父は明け方に帰宅することが多いこと。父のクローゼット(closet 衣類や生活雑貨を収納するために間取りされた空間です。「物置部屋」「押し入れ」もほぼ同義であす。)で見つけたという血の着いたシャツを持参していました。
マードック刑事は、ウィルソン判事を署に呼び尋問します。判事はコーラの客だったことを認めましたが、昨夜は酔い潰れてしまい、記憶がほとんどないと答えました。
火炎瓶で放火した理由。
アブサンを飲んだのだとしても、判事が前後不覚の状態で帰宅したことや昨夜の記憶がまったくないということの不自然さ。
画家アーサー・ウェブスターと被害者との関係など、謎が山積です。
このあとも新たな謎が出現します。
事件は二転三転しますが、あれやこれやでマードック刑事は事件を解決します。
でも、私としては当時のトロント市の町の風景として、「J.バーリントン雑貨店の看板について書いておきたいと思います。
テレビでは一瞬しか映りませんでしたが、看板には次のように書かれていました。
J.BARRINGTON GENERAL STORE
STAPLE BOOTS
AND AND
FANCY SHOES
DRY PAT
GOODS MENDS
(カナダの)主要な穀物 ブーツ
と と
はでな 靴
乾いた PATはこの場合どういう意味か分かりませんでした。
品 医薬品