『ノックの音が』読後の達成感と持て余した情緒 (701文字)
中学生のころ、友人に故星新一(当時は存命)さんの本を強く勧められました。その友人の語り口がうまくて「買おう!」と思いましたが、そいつは語る勢いを止められなくなってしまい、私にオチまで言ってしまうので私は内心「読む楽しみがなくなるからもうやめてくれ!」と思いましたが、なんだか面白話を中断させるのに忍びなくて結局下車予定の駅に着くまでずっと聞いていました。
駅に着くと走って書店に行き、買ったのが『ノックの音』でした。
この本は、一遍当たりのページ数があまりにも短くて、あっという間に一遍を読み終えることができます。
「こういうのをショートショートっていうのか。」と思いながら、「ノックの音がした。」で始める各遍を読み終えました。
買ったその日の夜に読み終えたことで、私はちょっとした達成感と本の内容に影響された情緒を持て余していました。
それまでの私の読書は、ミステリ、偉人伝、歴史小説、文化評論が多くて、たまにフォークシンガーの書いた本(今ならアイドル本に分類されるのでしょう。)くらいでしたので、こんなに短くて、新しい設定、そして意外なオチがある作品の存在を知らなかった自分にショックを受けました。
それからは、『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』等を買い揃え、次から次へと読みました。
列車の中で随分多くの作品の筋を聞いたので、ショートショートの本を読んでいる内に「これ、オチ知っている。」と思うものがありましたが、話で聞くのと本で読むのとは感じが違うのか結局楽しく読めました。
ちなみに『ノックの音が』で最もゾッとした作品は「人形」です。