『中学歴史 H30度検定済不合格教科書』 (2339文字)
『中学歴史 平成30年度文部科学省検定不合格教科書』(発行人 武田恒泰 発行所 令和書籍株式会社)は、価格が1800円しました。
今となってはなぜ買ったのか覚えていません。
恐らく、竹田さんの執筆労力に少しでも報いたいという気持ちが働いたのだと思います。私自身はあまり大部の論文を書いたことはありませんが、教科書1冊分の執筆料(教科書にはその内容の全部に資料等の裏付けが必要ですから、一種の論文と言えますね。)
なお、竹田さんの中学の日本史教科書(『国史教科書』)は、2024年に第6版と第7版が検定に合格しています。
『国史教科書』は、中学の日本史教科書としては来年から使われることになります。
ここでは平成30年度検定不合格版について、書きたいと思います。
(『国史教科書 第7版』はこの夏頃に発売されるそうですから、この本とは別にそちらも購入したいと思っています。)
『国史教科書』の特徴(9ページ〜)について
(1) この教科書の執筆趣旨として「日本人の日本自による日本人のための教科書」ということが書かれています。
この立場に賛成します。
私が中学で使った日本史の教科書が、非日本人的であったという記憶はありませんが、そもそも自国の歴史を学ぶのは国民としての一体性を共有するという意味があると思いますので、この教科書の執筆趣旨に賛成します。
(2) 時代区分を日本国史の視点から区切りなおしたところ
この時代区分のやり方を支持します。
平安時代の終わりが古代の終わるとき。江戸時代が終わるときが近世が終わるとき。という区分のやり方は納得できます。
(3) 縦書きであること
私は教科書が縦書きであっても、ノートは横書きでとりますので縦書きの教科書に違和感がありません。ただ、試験の問題用紙や回答用紙が縦書きだと高校受験の際に生徒が不利になるかもしれないので、この教科書を採用する学校では定期テストや学力テスト等では問題を横書きでお願いしたいと思います。
(4) 幕府ではなく朝廷を軸にした
この点も賛成です。
幕府の将軍は、征夷大将軍であり朝廷から授かるもののはずで、江戸時代は将軍が政治の実権を握っていたと思いますが、形式的には朝廷がいてこその将軍ですから、日本史全体でこの観点を維持することは筋がとおっていると思います。
(5) 自虐的歴史用語を排除
自虐かどうか分かりませんが、「日中戦争」という表記は妥当性を欠くという指摘は正しいと思います。
当時は「戦争」という言葉を使わないように注意していたはずですし(だから「支那事変」と言っていました。)、竹田さんが書かれているように当時は「中国」という国はなくしたがって日本と中国の2国が戦争したという事実はありません。あったのは紛争となります。「戦争も紛争も同じだろ。」という人がいるかも知れませんが、戦争は国家間で行われるとであり、当時の国際法では区別されていたので用語(法律用語)の使用には神経質にするべきと思います。
(6) 先の大戦について
私は、アメリカ軍による東京大空襲と核爆弾2発の投下は、非戦闘員を大量殺害した戦争犯罪と考えています。この本の190ページ以降の記述に否定的な意見はありません。
(7) イロハニホヘトを採用
これについては、五十音でよかったのではないかと思います。
イロハと五十音とを比べると、中学生になじみやすいのは五十音だと思います。
(8) 紀年法は元号を軸に
『国史教科書』では元号で表記し西暦は「年」を省いて括弧書きにしています。でもここは西暦表記で元号括弧書きでよかったと思います。
世界史では当然ながら西暦表記だけですし、コンピュータのファイルを管理するときにファイル名に年月日を付加する場合も西暦を使用する人が圧倒的だろうと思いますから、年月日表記は統一的な方が扱いやすいと思います。
以下、少々私が「なるほど」と思った箇所を書きたいと思います。
40ページ「土器が使われるようになると、煮る・蒸す・炊くといた調理法が加わっただけでなく、汁ものの調理が可能になり、木の実などのあく抜きもできるようになって、効率よく栄養を摂取できるようになりました。」
48ページ「従来、水田稲作は朝鮮半島経由で日本にもたらされたとされてきましたが、近年の研究により否定されることになりました。」・・・私も稲作が朝鮮半島経由で日本に伝わったということには疑問を感じていました。朝鮮半島北部は寒冷で稲作には向きません。ですからそこ経由となると、稲を盛った人が朝鮮半島を縦断して日本列島に来て稲作をはじめたのかと想像していました。でも、これってかなり不自然です。
70ページ 「七世紀に入ると、古墳は衰退し、ほとんど造られなくなっていきます。・・・。日本に仏教が伝わった結果、豪族たちは古墳よりも氏寺を造るようになったことも関係しています。」・・・仏教の伝来は日本に大きな社会的変革をもたらしあのだろうと思っていましたが、古墳の衰退に関係しているとは意外でした。
79ページ「このときの日本は、かつての日本とは違う立派な国に成長していました。中央集権化した律令国家をすでに築き上げていたのです。」・・・中央集権国家の強さというか強力さは、『君主論』で有名なマキャベリがフランスの進攻を恐れていたことを読み感じていましたが、律令国家というワードと絡んで説明されるとこの時代の日本の進んだ社会体制を感じました。
ほんのいくつかですが、これらは私が中学・高校で日本史を学んだときには教科書にも書かれておらず、先生の説明もなかったはずです。