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「トドはかわいいから。」は通用するのか (2108文字)

 2024年パリ・オリンピックの女子槍(やり)投げで金メダルを取った選手が、競技中の待機時間にフィールドで横になってカステラを食べている画像について、テレビ番組である歌手が「トドみたい。かわいい。」と言ったことが話題になっていました。

 この場合の話題というのは、賛同とか共感ということではなくて、金メダリストを侮辱しているという憤りによるものと思われます。

 この歌手は次の週の番組放送開始直後に当該発言について悪意がなかったことを説明し謝罪しました。

 当該槍投げ選手は、オリンピック終了後にチェコに行っているので日本でこのようなことがあったことを承知しているかどうか分かりません。また、私は芸能界やスポーツ界の出来事に精通しているわけでもないので、この歌手と当該槍投げ選手とのやり取りなどは分かりません。

 このような前提で、人をトドに例えることについて考えてみます。

 トドを可愛いと感じるのは、その歌手の主観です。
 同時に人間をトドに例えることは不適切だと考えるのは、その歌手以外の人の主観です。
 だから、金メダリストをとどに例えたことの是非は、その歌手とそれ以外の人とで見解が異なった場合お互いの意見が交わることはないと思います。

 また、当該歌手がその発言時に悪気がなかったということは恐らく多くの人はうすうすは理解しているでしょう。しかし、悪意がなければ免責されるのかというと、そうではありまえん。世の中には過失責任というものがあります。過失は故意よりも行為者に悪意が少ないということで多少責任が軽くなります。
 (ただ、ちょっと注意すれば防げたことなのにそれを怠った場合は過失の度合いが著しいから故意と等しく非難されるべきとされていて、「重過失」として故意とほとんど同じ責任追求がなされます。)

 だから、「悪意はなかった。」という言い訳は、過失だから故意よりは多少責任が軽くなるかもしれない、という程度の意味しか持ちません。決して免責される理由にはなりません。

 この歌手は過去にも不用意な発言をして非難されています。その不用意さは、その歌手が高齢者となっていることからくる思考力の衰えではないかと思われます。

 以前同じ番組に人気脚本家(女性)がゲスト出演した際に、この歌手が対談形式で会話しているとき、
 人気脚本家「(私の本業は脚本を書くことだから、テレビ出演は緊張する。だから、)このようなテレビ出演は仕事じゃないと思うようにしているのよね。」
と、テレビ番組出演時の心理的心構えを語ったときに、
 この歌手「ちょっとまってください。これは仕事ですよ。」
と相手の話を遮りました。

 この人気脚本家は、テレビ出演を(仕事でなく)遊び半分でこなしていると言っているわけではなく、本業(脚本執筆)とは違う仕事について不慣れからくる過度の緊張をほぐすための心構えを語っているのに、この歌手はテレビ出演がビジネスかどうかという類型の認識を正そうとしました。

 この歌手のこの発言は、この人気脚本家の会話の調子を乱し、無駄に時間を消費しただけでした。この対談を聞いているこちらもイライラしました。この歌手の司会者としての能力が疑われても仕方がありません。

 この歌手には、そういうところがあります。

 漫才師のオードリーが若手だったころ、ネタ見せの場でこの歌手がお笑い作家やテレビ局員とともに審査していて、春日さんがゆっくり出てくるというやり方に対し「君、自分のペースで歩いて来ているけど、それいいと思ってんの?」と尋ねました。
 春日さんは、胸を張ってゆっくり話すキャラクターを演じているので、そのキャラクターのまま答えていたら、その歌手が「その態度はなんやねん!」怒り出したそうです。
 これはある番組において、その歌手もオードリーのお二人も語った内容です。
 最終的には、この歌手は春日さんがキャラクター崩さないようにしていたという事情を理解し、あるテレビ番組で共演したオードリーに謝罪していましあ。

 私が知るだけでも、この歌手にはテレビ放送以外のところでも他人や企画と噛み合わないことが結構たくさんあります。そして、短気です。

 私は、人をトドに例えるといううのは、その人の巨体を揶揄(「やゆ」からかうこと。)していると感じるので聞いていて不快です。それに、投擲競技(「とうてききょうぎ」フィールド競技の中で、砲丸投・円盤投・ハンマー投・槍投などの総称)で飛距離を出し、外国勢と互角以上に戦うにはそれ相応の肉体が必要なはずです。
 だから、その歌手の「とどみたい。・・・。」という発言を聞いたときは(私は偶然そのテレビ番組を観ていました。)、「(その競技のことを)知りもしないくせにテレビコメンテーター程度の上っ面な感想など言うなよ。」と思いました。

 その歌手がこの後、テレビ司会者をやめて歌手業に専念するか、発言に気をつけながら歌手業とともにテレビ司会者業も続けるか(私は引退する必要はないと思っています。)は、本人の考え一つなので、事務所の社長とともに慎重に検討されることを望みます。

 私はもうあの日曜のお昼のテレビ番組は観ませんが。

#トド #投擲競技
 

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