『お寺の掲示板』(11) ー言っていることではなく、やっていることが その人の正体。ー
『お寺の掲示板』(江田智昭著 新潮社)の項番11 東京妙円寺の掲示文です。
映画監督故黒澤明の『生きる』に主人公のお通夜のシーンがあります。主人公は映画中盤で亡くなり、映画後半は参列者が主人公の生きているときの言動を回想するという展開になります。
この映画の時代では、お通夜は故人の自宅で行われ、親族の他に会社などの職場の人も手伝いに来ているようです。
通夜ぶるまいで主人公の部下が飲みすぎ、酔っ払って主人公の偉大さを述べ、「よーし、僕もねぇ、明日からやるぞー。やってやるんだ。」と決意を語ります。
でも、その部下は翌日以降も職場でなにもやりません。いつものとおりわさわさと超効率の悪い仕事をするだけです。
彼は、通夜ぶるまいの席では燃えていました。職場の変革を主導するかのような意気込みでした。
でも、「やっていることがその人の正体。」そのものです。
この映画の主人公は、胃癌で余命半年でした。本人もそれを知っていました。自分の人生の終期を知ってから、彼は変わりました。
主人公は、自分の余命を知りながら、周囲には何も言わず土地の入り組んだ利権を苦労して整理してまとめあげ児童公園を作って死にました。
それが主人公の正体でした。
以上
#お寺の掲示板
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