巨大集中から分散へ システムの進化のパターン(1299文字)
かつてコンピュータといえば大型コンピュータのことでした。
室温が調整された部屋の中に箪笥みたいなコンピュータと周辺機器が並び、白衣を着た技術者が操作する。側には窓から磁気テープが回転しているのが見える外部記憶装置がいくつも設置されており、コンピュータ自身はいくつものライトが点滅を繰り返していて、素人には幻想的にすら見える高価な装置。それがコンピュータでした。最初期のコンピュータであるENIAC(「エニアック」。Electronic Numerical Integrator And Calculator)などがその原型になっていると思います。(エニアックには磁気テープはなかったかと思いますが。)
古いSF映画では上記のようなのがコンピュータが登場して、それとなく映画を盛り上げていました。
このコンピュータ像はかなり長い期間愛用されていて、私の知る限りテレビドラマ『秘密指令S』くらいまではそういうコンピュータでした。
時代は前後しますが、この大型コンピュータが得意だったのがバッチ処理で、大量に準備された計算を一気に処理するやり方です。
それが、最初の東京オリンピックで、即応処理をするリアルタイム処理が実用化されると需要はリアルタイム処理に集まりだしました。
そして、半導体技術が進歩して、集積度が高いLSIを使ったコンピュータが実用化されるとコンピュータは半導体の集積度に応じる形で小型化していきます。それと、ベトナム戦争の頃アメリカで生まれたマイコンが進化するのと相まって、パソコンが誕生します。
パソコンが登場するまでは、大型コンピュータの多数の端末が繋がる形態が一般的なコンピュータのリアルタイム処理の方式でしたが、パソコンを端末とするようになると、単なる入力装置の端末と違いパソコンは自分で計算処理ができますから、だんだんと大型コンピュータの存在を脅かすようになります。
そして、ネットワーク技術の発展によりパソコン同士の連携で大型コンピュータの処理を代替できるようになりました。
ただ、扱うデータ量が膨大になるため、また、通信環境を維持管理するためサーバマシンが必要になりましたが、それでも大型コンピュータよりは安価でしたので、このやり方が普及しました。
現代は、スーパーコンピュータとインターネットとパソコンが、軍用や研究用などの一部を除いて、コンピュータの全てといってもいいくらいです。
このコンピュータの歴史をみると、大物が中央にいて小物がその周辺を取り囲むという形態から、優秀な小物がたくさん集まって連携するという形態に変化していくのがいろいろなものの進化の過程ではないかと思えます。
これって、兵器にも言えるように思えます。
今、航空母艦は空母打撃群(Carrier Strike Group CSG)を構成していますが、これって昔の大型コンピュータのシステム形態に似ているような気がします。
そうなると、そのうち、小型空母で構成される打撃群にならないとも限りません。
なにしろ、運用管理費は圧倒的に小型空母の方が安価ですからね。