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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン1 #12 暗殺計画 The Prince and the Rebel』 (1779文字)
『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン1の第12話「暗殺計画 The Prince and the Rebel」の感想文を書きます。
今回、トロントの第4分署は、アルフレッド王子の警護に当たります。
しかし、その前に女性の他殺死体が発見されたので、そちらの捜査も並行して行われます。
アルフレッド(Alfred)王子は、第3代ザクセン=コーブルク=ゴータ公 で、1900年没だそうですから、この暗殺未遂事件の後(『刑事マードックの捜査ファイル』は19世紀の終わり頃の物語です。)すぐお亡くなりになったのですね。
日本との関係では、明治維新から間もない1869年に来日されています。
(欧米諸国の王族が日本を訪問したのはこの時が初めてとされているそうです。)
今回の事件では、アルフレッド王子暗殺阻止任務と、若い女性殺害事件捜査とが突然重なり、緊張感が盛り上がります。
重なったとされる事実の一つが、被害者(若い女性)が生前に持っていた聖書でした。
この聖書の背表紙が折ってあって、あるページがすぐ開けます。そのページの余白には何か書いた跡が残っていて、鉛筆でその溝になった部分をこすってみると「Sic Samer Tyrannis.」という文章が現れました。
これは、観劇中のリンカーン大統領を銃撃したにジョン・ウルクス・ブースが、舞台に飛び降りナイフをかかげ、観客に向かって「シク・センペル・ティラニス(ラテン語:専制者は常にかくのごとし)」と叫んだ言葉と同じです(リンカーン大統領は翌日死亡。)。
ブースがリンカーンのことを「専制者」(独裁政治との違い 専制政治とは、「身分的支配層が被治者と無関係に営む統治」です。 それに対して独裁政治とは、形式上は国民の大多数の支持による民主的手続きにより、身分が同一である独裁者へ権力が付託されます。)と呼んだのは次の理由のようだと呼んだことがあります。
「ブースは、北軍が南部のアメリカ連合国(南軍を形成)に勝利したことから、リンカーンが南部の共和制を廃止し絶対君主制をもたらすのではないかとの危惧を持ち、リンカーンをジュリアス・シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル Gius Juius Caesar。古代ローマの将軍・政治家。独裁者の地位に就いたが、反抗者によって暗殺されました。)と同じように暗殺すべきと考えた。」
ブースにとってのアメリカ合衆国軍(北軍)と同様に、被害者(若い女性)にとって、イングランドは倒すべき相手だったのでしょう。
アイルランドにとってイギリスが如何に憎むべき相手であるのかは、ここでは書ききれないのでネット等で調べてみてください。
(1997年、イギリスのトニー・ブレア首相は、アイルランドで開催されていた追悼集会において、1万5千人の群衆を前に飢饉当時のイギリス政府の責任を認め、謝罪の手紙を読み上げた。 これはイギリス政府の要人からの初めての謝罪であった。)
今回の事件では、マードック刑事の暗号解読能力が発揮されます。
シャーロック・ホームズの『恐怖の谷』に、「ある書籍の指定したページの文字を数字で特定し、その数字どおりに文字をつなげて文章にする。」という暗号があったと記憶していますが、今回マードック刑事も類似した暗号を解読します。
暗号の細かな解き方は書きませんが、解読した結果次のようになります。
DURHABTZCU
SALNHMMARY
BELLEEHMRH
INITY
WTBHC
これだけだとまったく読めませんが、オガム文字だと気が付いたマードック刑事は解読に成功します。
調べたところ、オガムは横書きではなく縦書き文字なのですが、なんと上から下へ…ではなく、「下から上へ」読むそうです。
もっとも、それを知ったところで私には解読できませんでしたが。
その後、なんやかんやで事件は解決します。
今回の暗殺犯らはアイルランド人でした。
アイルランド人がイングランド政府や王室を嫌う理由は、前述のとおりネット等で調べてください。とてもここに書くには分量が多過ぎます。
事件後、マードック刑事の火傷の治療をするオグデン検視官は、マードック刑事が無事であったことに涙ぐみます。
だんだん二人はいい感じに発展してきました。