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軟球でフォークボール (1090文字)
かなり以前ですが、人事異動で行った職場に野球部があり強制的に入部させられました。それは、9人部員を揃えないと試合できないからなので、野球が好きか嫌いかどころかできるかできないかさえも問題にされませんでした。
私の野球知識は、アニメ『巨人の星』で観たことだけ。そういうわけで、てんで役に立たない新入部員でした。だいたい、投手が1、捕手が2、一塁手が3・・・といった守備の番号も知らなかったため、「6、4、3のダブルプレー」とかいう意味も分かりませんでした。これは「遊撃手がゴロを補給し、二塁手に送球し一塁走者を封殺し、そのまま二塁手は一塁手に送球。一塁手が一塁に触塁した状態でそのボールを補給し、まだ一塁に到達していない打者走者をアウトにした。」ということなのですが、私としてはそんなことどうでもよくて、毎回練習のときに「なんでこんな目に・・・。」と思っていました。
そんなあるとき、少年用の野球教本にフォークボールの握り方があるのを見つけました。この本は、あまりにも野球のことを知らなかったので、すこしは勉強しようと思い守備編と打撃編のセットを買ったなかの守備編です。
とにかく、当時はプロ野球でもフォークボール全盛で、野茂投手がメジャーリーグに行ってトルネード投法で一世を風靡していた時期だったので、「どうせ何もできないんだから、試してみるかな。」とフォークボールの握りでボールを持ってみました。
私はバレーボールをやっていたので、指の柔軟性はかなりある方です。そのため、軟球のボールが思いのほか深く人差し指と中指の間に収まりました。
練習でフォークボールを投げてみると、「なんか落ちてる。」と先輩から言われ、ついついその気になってバッティング投手をすることになりました。
急速は100キロから110キロくらいですから、草野球でもスピードは遅い方です。でも、ちょっとだけ落ちるフォークボールがあるので、はじめて練習で充実感を得ました。
そうなると、もう止まりません。
練習のない日は一人でランニングするようになりました。野球の教本にも「ランニングが基本」と書いてあったので、ひたすら走りました。
数ヶ月もすると、体の切れがでてきていい感じに軟球を投げられるようになりました。
直球もまぁまぁの速度が出るようになり、フォークボールもいい感じの落差を出せるようになりました。
そんな感じの3年目の終わり、私はまた異動になりました。今度は、野球どころかバスケットもできないような人数で、「やっと自由になれる。」と思いました。
私は、運動するなら一人の方が好きです。