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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン3 第5話 #31 引き裂かれた心 Me,mMyself and Mudoch』 (2482文字)

 カナダの大ヒットミステリ『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン3第5話(#31)「引き裂かれた心 Me,mMyself and Mudoch」の感想を書きます。

 邦題の「引き裂かれた心」は、容疑者の心的外傷を現しています。

 原題の「Me,mMyself and Mudoch」は、「「Me, myself and I」(「私だけ」「自分以外に誰もいない」「ひとりぼっち」という意味のフレーズに掛けています。ということは、「自分とマードック刑事」という意味と解釈すべきと思います。

 事件は、ある家の主(「あるじ」) アレグザンダー・テイラーの60歳の誕生日にその主が2階の自室で胸が血だらけで死んでいるのを家族に発見されて始まります。
 発見したのは妻(バーニース・テイラー 誕生祝いのケーキを持ってきました。)と息子(ジョシュア)それに使用人(農場労働者) 2人(コップスとクライブ)です。

 マードック刑事のみたところ、他殺で凶器は斧(おの)のようです。
 
 妻のバーニースは、娘(シャーロット)が犯人だと主張します。娘は部屋に閉じこもっているそうです。
 しかし、息子のジョシュアはその見解には反対のようです。バーニースは、シャーロットは狂暴だとマードック刑事に言いました。
 この母は、妙に娘に冷淡です。

 マードック刑事と巡査らがシャーロットの部屋にはいると、シャーロットは血の着いた斧を持ってベットに座っていました。その服にも血が付いています。
 そして、シャーロットはマードック刑事に「ごめんなさい。パパを殺したわ。」と言います。
 そして、「私の中に悪魔がいるわ。」と言うと、マードック刑事に向かって自分が持っている斧を振り下ろそうとしました。
 しかし、マードック刑事はその斧を避け、シャーロットはすぐに警官に取り押さえられました。
 そのとき、シャーロットは押さえ付けていたクラブツリー巡査の右腕を噛みました。

 シャーロットは急に狂暴になりましたが、悪魔憑きか薬物によるようにも見えます。

 翌朝、第4分署内でマードック刑事はシャーロットを尋問します。

 シャーロットは、昨晩自分がクラブツリー巡査の腕を噛んだことを覚えていました。

 シャーロットは次のように供述しました。

 「自分は、昨夜父親の胸を斧で斬りつけた。
 犯行の理由は、悪魔に取り付かれたことによる。
 ほかのことは覚えていない。」

 モルグ(morgue 遺体安置所)では、ジュリア・オグデン検視官が被害者の検視を終えていました。
 死因は、肺動脈断裂による失血死です。
 マードック刑事の疑問は、容疑者(シャーロット)がほとんど返り血を浴びていないことでした。
 解剖台に仰向けに置いてある被害者の死体の左胸には縦に大きく割れた傷痕が見えます。画面上、斧は心臓に達しているように思えますが、傷の中は見えませんでした。これは、テレビドラマですから当然といえば当然です。

 ジュリアの見解では、斧を振った人間が被害者からの血しぶきを避けたとは考えにくく、犯人は血まみれになったはずだということでした。

 第4分署に来たジョシュアは、父は暴力的な人で死んでも悲しくないと言いました。

 クライブは、犯人はシャーロットではなく母親(バーニース)だと言いました。

 バーニースは、マードック刑事に事件当夜の行動と午後7時40分ごろ服を着替えに部屋へ戻ったことなどを話しますが、証人はいないと言います。

 第4分署でマードック刑事は、これまで調べたことを黒板に書きブラッケンリード警部やクラブツリー巡査に説明します。

 夫人は台所にいました。
 シャーロットは書斎の斜め向かいの部屋にいました。
 ジョシュアな自室にいました。
 (凶器の)斧はポーチ(porch 玄関先の屋外部にあって、上部が屋ねでおおわれている部分。)の横にありました。
 犯人は、外へ斧を取りに行き階段を上がって書斎へ行き犯行に及んだはずです。
 犯行にかかった時間は2分足らずでしょう。

 つまり、当夜家にいた全員に犯行が可能です。

 ブラッケンリード警部がシャーロットを尋問し追い詰めると、シャーロットは、彼女の守護天使マディと名乗りブラッケンリード警部を平手打ちします。二重人格者のように見えます。

 マードック刑事がマディに父を殺したのかと尋ねると、マディはシャーロットに戻りました。

 シャーロットの精神を診察するためにロバーツ医師(精神病院の医師です。シーズン1の降霊術にまつわる事件のときに登場しました。)がやって来ました。
 ロバーツ医師はシャーロットに催眠術をかけてマディを呼びだそうとしたとき、クラブツリー巡査は地下室から血だらけの白いエプロン(割烹着のように胸まであるやつ。)が発見されたとマードック刑事に知らせます。

 夫人は、そのエプロンを「ケーキを焼いたあと寝室に置いたの、シャーロットが持ち出したんだわ。」と言います。
 シャーロットが犯人だということに疑いを持っていないようです。

 その後のロバーツ医師の質問でも、シャーロットもマディも事件の記憶がないことが分かりました。

 そこにジュリア検視官がやって来て、マードック刑事に被害者が肝硬変であったことを伝えます。
 マードック刑事はジュリアに「ここに来た用件はそれだけかい?」と尋ねました。ジュリアの行動に別の意図を感じたのです。
 実はジュリアは、容疑者が二重人格者だということを聞き、興味を持ち、見学したいと思ったのでした。

 再び催眠術を掛けられたシャーロットは、ジュリア検視官を見て「ママ」といい、自分は「ガーリー、3歳。」と言いました。

 ガーリーは、地下室にあるマディという人形を探します。
 この三番目の人格の発現によりマードック刑事は、事件のあった家の地下室の本格的な捜査の必要を感じました。

 それやこれやでマードック刑事は事件を解決しますが、今回の事件は悲惨過ぎて、犯人に同情を禁じ得ません。

 個人的な感想ですが、この事件の犯人は情状を酌量され大きく減刑されるべきです。

#マードック #二重人格者



 

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