人生の進路変更の機会 (967文字)
『工学部ヒラノ教授』(今野浩著 新潮文庫)の156ページにアメリカの大学の博士過程について書かれています。以下、その概略を書きます。
アメリカの博士過程の学生は、修士並の15科目のほかに10科目程度の上級科目を履修し、平均Aマイナス以上の成績を取った上で、2日間にわたる5時間ずつの筆記試験(博士資格試験)を受けます。この試験をパスするには、5000時間は勉強する必要があります。
資格試験に失敗した学生の多くは、退学勧告を受けます。見込のない学生には早い段階で転出をすすめているのです。
私は、これを読んでプロ野球でクビになる選手のことを思い浮かべました。
以前は、プロの選手になったのに20代でクビになる選手に対して「せっかく夢が叶ってプロ野球選手になったのに・・・。」と同情的にみていました。
でも、冷静に考えてみれば、「ひとつの道で見込がないと言われてその道を諦めなければならないことになったのなら、別の道を模索する。」のが前向きの正しい生き方です。残念がったり、進路変更を逡巡することに時間を浪費する余裕などありません。進路変更するということは、変更後の進路について人より遅れてスタートするわけですから、無駄な時間を使うべきではありません。
そんな風に思い至った頃に、この『工学部ヒラノ教授』を読んだので、博士資格試験に失敗した学生への退学勧告を「人生の方向転換って、本人にはなかなかできないことだから、それを言ってやるのがそいつのため。」って気がしました。
若いときなら、脳も柔らかいし、エネルギーも有り余っているから人生のやり直しに取り組みやすいでしょう。だから、早い時期に引導を渡すのは親心だって感じがします。
テレビで戦力外通告を受けたプロ野球選手を扱った番組がありますが、そこには同情とか悲哀といった演出を感じます。
でも、そんなこと長い人生を考えたらどうってことありません。
それにしてもアメリカの大学の勉強は厳しい。
アメリカの学生は大学入学時の学力は日本の同世代の学生と比べるとかなり低くいと聞いていますが、その後の勉強量と競争の度合いが桁違いです。
そして、人生の方向転換の判断も早くて、一度決めたら精力的に進むという印象があります。
これって、肉食だからかな。と思ったりします。
#工学部ヒラノ教授