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『刑事マードックの捜査ファイルシーズン5 第12話 #64 誇りと裏切り Murdoch Night in Canada』 (3822文字)
『刑事マードックの捜査ファイル』のシーズン5 第12話 (#64)「誇りと裏切り Murdoch Night in Canada」の感想を書きます
邦題の「誇りと裏切り」は、アマチュアスポーツとしてのアイスホッケーに対する気持ちとそのアマチュアリズム(amateurism スポーツなどを営利目的ではなく、趣味として純粋に愛好しようとする考え方や精神を指します。)を裏切る商業主義を指します。
原題の「Murdoch Night in Canada」は、恐らくカナダ放送教会(CBC)が放送するナショナルホッケーリーグ中継番組の「 ホッケー・ナイト・イン・カナダ(Hockey Night in Canada)」を捩(もじ)ったものだと思います(ただし、これは私の推測です。)。
上記のとおり今回はホッケーチームの事件です。私はホッケーとアイスホッケーとは分けて考えていたのですが、英和辞典(ジーニアス第5版)によると、hockeyには①アイスホッケー、②ホッケーと書かれており、第一義的にはアイスホッケーを指すようです。
でも、ドラマの終わりに第4分署の職員が土の上でホッケーをしていたので、「ホッケーといえばアイスホッケーのことだ。」と言い切ることはできないような気がします。
ドラマの冒頭は、アイスホッケーチーム「ウェリントンズ」のロッカールームです。
午後5時頃、ちょっとしたことで選手のエディ・ドリスコルは主将のアーチボルド・シンプソンを殴ります。
殴られたシンプソンは柱に頭部を打ち付けて昏倒(「こんとう」目がくらんで倒れること。)してしまいます。
しかし、シンプソンは直ぐ目を覚まし「大丈夫だ。」と言います。
そして、後からパブ「マングース&フェレットに向かうと言います。チームの他のメンバーの多くは先にパブに行きます。
パブでは、クラブツリー巡査とエディ・ドリスコルが会話しています。二人は古い友達でした。エディは二人の共通の友人であるリディアという女性と去年結婚していました。
今回は容疑者というか登場人物が多いので、以下にまとめて書いておきます。
(1) エディ・ドリスコル:ホッケー選手。ウェリントンズに入団してまだ1か月です。
クラブツリー巡査の旧友で、同じく旧友のリディアと去年結婚しています。
午後5時頃主将のアーチボルド・シンプソンを殴って昏倒させています。
アリバイについては、ドラマの終盤まではっきりしません。また、ミステリの内容に関することでもあるので、ここに書くことはできません。
(2) アーチボルド・シンプソン:ウェリントンズの主将です。午後5時頃ドリスコルに殴られて昏倒しました。
(3) リディア・ドリスコル:エディの妻です。エディとクラブツリー巡査の旧友で去年エディと結婚しています。
リディアは、夫エディの浮気を疑っています。
(4) ジェローム・ブラッドリー:ウェリントンズの選手です。グレース検視官の元婚約者で、エディを嫌っています。
彼は、事件のときパブ「マングース&フェレット」にいましたが、途中財布を取りに行くためパブを出ています。彼が午後6時15分頃シンプソンの遺体をロッカールームで発見しました。
また、亡くなったシンプソン主張の後任の主将になります。
彼は、身分のしたの者には見下した態度を取ります。グレース検視官が結婚を取りやめたのも頷けます。
(5) ラングストン・ウィレス:ウェリントンズのチームオーナーです。彼はケンカ直後のシンプソンと話をしています。また、彼はスタンレー杯(Stanley Cup、 旧名Dominion Hockey Challenge Cup NHL(北米プロアイスホッケーリーグ)において、プレーオフトーナメントの優勝チームに与えられる賞のことですが、このドラマの当時はプロではないので、この前進の賞なのだと思います。)をシャムロックスと競うつもりですが、そのためにはエディ・ドリスコルがいないと試合に勝てないと考えています。
彼は、事件当日の午後6時頃は帰宅途中だったと言っています。
また、彼はジャイルズ長官(ブラッケンリード警部の上司に当たります。)の友人でもあります。
(6) ジャイルズ長官:ブラッケンリード警部やマードック刑事の上司です。彼はブラッケンリード警部とマードック刑事が、拘留中の殺人犯が脱走した件でなんらかの関与をしていると疑っています。
(7) マクタビッシュ、ダントン、マッケナ:この3名もウェリントンズの選手です。彼らは午後5時半から午後7時までパブ(マングース&フェレット」にいたとマスターが証言していますので、アリバイがあります。
(8) ファレル:ウェリントンズの選手です。身長173センチでチームで最も小柄です。事件のあった日は居残り練習し、犯行時刻(午後6時頃)にはpブラッケンリード警部に向かっていたと言っています。ただし、証人はいません。
また、ファレルはジェローム・ブラッドリーがシンプソンを恨んでいたとクラブツリー巡査に話しています。初代の主将の後釜にブラッドリーがなるはずだったのに、シンプソンが主将の座を要求して主将になったことがその恨みの理由だと言いました。
(9) J.R.ロバートソン議員:シンプソンが、「オーナーのウォレスがある選手にカネを払いプレーさせている。」と苦情を申立ててきたと言いました。もしそれが事実なら、オンタリオホッケー教会から即時に永久追放になります。しかし、それには確かな証拠が必要だとシンプソンに言ったそうでdす。カネを渡した相手の選手名もこのときにマードック刑事に答えていますが、ここではそれは書きません。
なお、マードック刑事がJ.R.ロバートソン議員に会いに行ったのは、クラブツリー巡査がシンプソンの荷物からオタワ行きの切符を見つけだしたからです。
その切符は11月29日と11月30日の日付のもので、パンチ(日本では改札のときに有効な切符かどうかを判断して、有効な切符で有れば使用開始の印を付けます。この印は自動改札機の場合は穴を開けたり、駅員さんの場合はスタンプを押す行為なのですが、かつての多くの鉄道では改札パンチで切符に切り込みを入れていました。カナダの場合は、切り込みではなく穴を空けていた用です。)の穴が空いていました。
また、その裏には「JRR221」といういメモがありました。これを見たブラッケンリード警部は、すぐにJ.R.ロバートソンを言い当てました。
その切符の映像はごく短い時間映るのですが、それもマードック刑事の手で隠れているので全部を見ることはできませんでした。
映像で確認できるの文字は次のとおりです。
Grand Trunk Rilway(グランド・トランク鉄道は、カナダの鉄道会社です。)
GOOD FOR ONE RETURN TRIP ONLY (一往復限りよい)
ONLY ON PRESENTATION OF THIS TICKET (この切符の提出のみ)
Toronto(トロント)
To(まで)
OTTAWA(オタワ)
このあと、二つほど書き残したいエピソードがあります。
1.ジャイルズ長官が、単にブラッケンリード警部やマードック刑事の間違いを探しだそうとしているのではないということがわかります。
ジャイルズ長官「真相を突き止めろ。・・・私の友人でも法を犯せば・・・」
マードック刑事「わかりました。」
ジャイルズ長官「私は君らとは違う。自分が忠誠を誓った職務に私情は差し挟まない。」
これには、ブラッケンリード警部もマードック刑事も従わざるを得ません。何しろ、二人は以前の事件捜査で私情を挟んじゃったことがあったのですから。
2.クラブツリー巡査が、グレース検視官によりを戻そうと言い寄って来るジェローム・ブラッドリーとモルグ(morgue 遺体安置所)で戦い、圧倒的強さで制圧し警官と女性への暴行容疑で逮捕します。アイスホッケー選手に勝つとは凄いです。
この活躍で、グレース検視官はクラブツリー巡査に惚れたと思います。
それやこれやでマードック刑事は犯人を捕まえますが、今回はドラマ終了3分前に犯人が分かるという難事件でした。
また、今回はアイスホッケーを含むアマチュアスポーツ選手の悪い面を強調しているように思います。アマチュアスポーツ選手は、裕福な家庭の子供が選手になっていることが多かったので、富裕層の尊大さも強調されています。
これが19世紀末のカナダの社会だったのですね。
ところで、今回は次のような謝辞がありました。
「脚本のアイディアをくれたハーパー首相に謝意を」
Thank you to Prime Minister Stephen Harper
who inspired this episode about the ealry
history of professional hockey in Canada
投稿者訳:カナダのプロホッケーの初期の歴史についてのエピソード(1回分の話)の着想をもたらしてくれた(inspireの他動詞の意味 ③…の着想をもたらす。)ステファン・ハーパー首相に感謝します。
なお、ハーパー首相は、カナダの第28代首相(2006〜2015)です。
#マードック #スタンレー杯 #ホッケー