コント「喫煙者」 (2078文字)
私はタバコを吸いませんが、世間は喫煙者に厳しすぎると感じているので、こんなコントを書いてみました。
(ある会社の禁煙会議で)
進行係:これから「喫煙制限にかかる社内取り組み会議」を開催します。
ここ数年、非喫煙者から喫煙者への苦情が多くなっており、もはや看過できなくなっていますので、社内での原則禁煙実施について議論をお願いします。
社員1(喫煙者):社内での原則禁煙には反対です。喫煙には火を使うので火災の可能性を否定することはできませんが、それならヤカンで湯を沸かすことも同様の危険性があるわけで、これらは自動車の運転同様社会的に許された危険と言えます。少なくても火災のリスクという面からは社内原則禁煙とする理由はないと思います。
社員2(喫煙者):社員1の意見に賛成です。タバコによる健康被害もよく言われることですが、喫煙者自身には喫煙する自由があるわけですから、それは尊重されるべきです。喫煙が長期的にみれば「自殺」と同視できるのかもしれませんが、それは飲酒もジャンクフードも同様でしょう。喫煙だけをことさら攻撃するのは公平ではありません。また、ソバ、アーモンド、魚介類などのアレルゲンは、摂取することにより人によっては短期的に生命の危機を発祥しかねないものですが、それらは規制されているわけではありません。喫煙行為だけ厳しくするのっておかしくないですか。
社員3(喫煙者):社員1及び2の意見に賛成します。
喫煙の健康被害について付け加えますが、よく受動喫煙の危険性について言われます。医学的生理学的な知見を持ち合わせていないので、受動喫煙がどの程度健康被害をもたらすのか、そもそも健康被害をもたらすということが本当なのかは判断できませんが、ここではより安全な生活をする権利を尊重することとして「受動喫煙はしないほうがいい。」としましょう。受動喫煙は喫煙者と非喫煙者間でも、喫煙者と喫煙者間でも発生しますから、「社内では一人の場合のみ喫煙可能」という程度の規制でいいはずです。
社員4(喫煙者):賛成です。現在我が社には喫煙所が設けられていて、喫煙はそこでしか許されていません。当然、その喫煙所には喫煙者が集まるわけです。喫煙者が密室とも言える喫煙所に複数集まれば、雑談が生まれ、喫煙に必要な時間以上を喫煙所で過ごすことになりがちです。このことから「喫煙を理由にして仕事をサボっている。」というような非難が起こりがちです。これば、「喫煙所は一人使用に限定する。」となれば雑談する相手はいないわけですし、次の人のためにも喫煙に必要な時間以上を喫煙所で過ごさないということになりそうです。
社員5(喫煙者):賛成です。喫煙所では、雑談の一環として人事の話題が出ることもままあります。人事情報は発令までは秘密扱いなのに、喫煙所では気持ちが緩むのか「秘密だぞ。」と前置きして話されることが少なくありません。「喫煙所一人使用」は、そのような規律の乱れを正すことにつながるでしょう。
社員6(喫煙者):賛成です。上司と喫煙仲間になったと言わんばかりに人事情報を語る同僚などにはうんざりしていたところです。私は、そんな情報秘匿力のない上司と親しくなっても「得(とく)」がないと思っているので、そういう話になりかけるとすぐ喫煙を中断して仕事に戻るようにしています。
社員7(喫煙者):以上、社内喫煙維持についての意見が出ましたが、私も喫煙者として一つ付け加えいたいとおもいます。それは、喫煙室の掃除です。現在は外部に委託して社内掃除をしている方に年末に喫煙室の掃除をしてもらっています。掃除の前と後では、これが同じへやかと思うほど喫煙室がきれいになります。タバコのヤニで汚れていたことが一目瞭然です。
外部委託の清掃には、毎月相応の支払いをしているわけですが、それは社員(従業員)が業務に使用する場所を清掃するわけですから会社の予算からの支出は当然と思います。会社の収益性が下がれば清掃費が節約対象となる可能性がありますが、現在はそうではありません。
ところが喫煙室は、社員(従業員)全員が使用するわけではありませんし、業務で使用しているわけでもありません。また、喫煙室は社屋の奥の方に設置しており外来者はほとんど使用しません。
こう考えると会社の予算で喫煙室を掃除することは不合理に思われます。そこで、喫煙室使用を予定している社員(従業員)はあらかじめ登録しておき、その登録者は全員で年末なり四半期に一度なりに掃除するようにすればどうでしょうか。これで予算面からの喫煙室使用への不満を抑止できると思います。
なお、喫煙室使用予定者として登録している社員(従業員)で、喫煙室の清掃をしなかった者は、もちろん疾病や出張等仕方ない理由で清掃に参加できない場合を除きます、なんらかの罰則を設けます。これなら喫煙所使用者間での不平等も防ぐことができるでしょう。
社員1ないし7(すべて喫煙者):賛成です。
社員8(非喫煙者):タバコをやめた方が簡単じゃないですか。