大阪圭吉 (701文字)
故大阪圭吉さんについては、「残された作品は多くはないが、大阪圭吉は戦前を代表する本格派の一人で、・・・。プロ野球に沢村賞があるのだから、ミステリ界に大阪圭吉賞があってもいいのでは、とさえ思う。」(『有栖川有栖の密室大図鑑』有栖川有栖 文 磯田和一 画 創元推理文庫 212ページ)ではじめて知りました。
この文は、故大阪さんの『燈台鬼』という短編ミステリについて書かれたものからの引用です。(故大阪さんは1912年生まれで、1945年にフィリピン・ルソン島で病没されています。)
私はこの文章で興味を持ち、故大阪さんのミステリ本を3冊買いました。
なお、沢村賞というのは、正式には「沢村栄治賞」(さわむらえいじしょう)といい、その年の日本プロ野球で最も活躍した完投型先発投手を対象として贈られる特別賞の一つです。
故沢村栄治さんは、野球ファンでない私でも知っている剛速球投手で、ベーブ・ルースやルー・ゲーリック等のメジャーの強打者を討ち取った凄い投手でした。
沢村さんも、三度の応召を経て1944年に戦死されています。
大阪さんは本格ミステリ作家、沢村さんは剛速球投手というお二人ともその分野の王道を行く実力者だったこと、戦争のため若くして亡くなっていること、もし生きておられたなら復員後にはきっと素晴らしい仕事をされたであろうことなどお二人には共通点があります。
私が『燈台鬼』を読んだかなり後に万城目学さんの『八月の御所グラウンド』を読みました。『八月の御所グラウンド』には、沢村さんが即席の草野球チームに参加するために仲間を連れてやってきます。
物語の中ですが、沢村さんが野球をしたくて現世に戻って来たのなら、別の物語で大阪さんもミステリを書きたくて現世に戻って来ないかなと思います。
分野が違う本なので離れてはいますが、私の書棚には大阪圭吉と沢村栄治がいます。
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