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『刑事マードックの捜査ファイル シーズン5 第3話 知られざる王女の呪い』 (990文字)
カナダの大ヒットミステリーテレビ『刑事マードックの捜査ファイル』シーズン5の第3話です。
この前の回(第2話)でオグデン医師(検視官)がクリニックを開くために第4分署の検視官を辞め、今回の検視はグレース検視官が行います。
今回の事件は、エジプトの遺跡から発掘された王女アマトのミイラにまつわる呪いで連続殺人が起こる、ような感じです。
現代では、ミイラの呪いといっても真剣に受け止める人は少ないでしょうし、その呪いのとおりに人が死んでも「偶然か、連続殺人だろう。」と考えられてしまうので、呪いという道具立てだけでは物語の牽引力としては不足です。
でも、この事件では殺人を犯す動機を持つ者が複数いるのと、犯人が単独犯か複数犯かが最後まで分からないので、そこにミステリの風味がありました。
今回はオグデン医師がまったく顔を出さない代わりに、美人考古学者が登場します。
マードックがその美人考古学者を第4分署に呼んで話を聞こうとしたところ、マードックの上司のブラッケンリード警部が「お前は知的な美人に弱いところがあるから気をつけろ。」というシーンがあります。
ブラッケンリード警部は、今シーズンの第1話でマードックをかばって上司に虚偽の報告をしているのでマードックは恩を感じています。だからマードックは、ブラッケンリード警部の助言を黙って聞き入れるしかありません。
一方、クラブツリー巡査は、勤務外に書いた本がヒットして女性達からキャーキャー言われますが、仕事はちゃんとできているようです。かなり頼れるようになってきました。
マードックの周囲の人物の人間関係がいい感じに固まってきました。
そうそう、今回はグレース検視官の能力が遺憾無く発揮され、その結果が犯人の特定に繋がりました。
でも、グレース検視官はフェミニストのようですので、今後なにか揉め事の種になりそうです。
なお、この時代のフェミニストは女性に参政権がなかったり、仕事をするときに男性と平等に扱われなかったりという現実に存在した社会的差別の是正を求めるものだったので、その主張の正当性については認めなければならないと思います。
当時の欧米社会の女性への閉鎖性こそが問題だと思いますが、それでもそれを是正するには混乱がつきものですから、グレース検視官の行動には穏やかでないものを感じます。