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テレビ番組『スパイ大作戦』と映画『ミッション・インポッシブル』 (1556文字)

 現在、映画『ミッション・インポッシブル』から得れ日ドラマ『スパイ大作戦』を連想する人は少ないのでしょうが、かつては「impossible」といえば『スパイ大作戦』でした。

 『スパイ大作戦』は、ドラマのフォーマットがほぼ固定されていました。
 まず、アメリカの大型コンバーチブル車に乗った銀髪のフェルプス君が人気のない倉庫や電話ボックスなどで(おそらく上部の組織から)指令を受けます。
 その指令は、オープンリール小型のテープレコーダーと大判の写真で示されます。(これらは多分に視聴者にこれからのドラマを視聴するための材料提供の要素が強いものでした。)

 小型テープレコーダーからは「おはようフェルプス君。その男〇〇〇は、(ここで画面はフェルプス君が見ている写真を大写しになります。)・・・。(と指令内容が示されます。)なお、君もしくは君のメンバーが捕らえられあるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なおこのテープは自動的に消滅する。成功を祈る。」で指令の再生とテープが終わります。(この「おはようフェルプス君」で、私たちは銀髪の男がフェルプスという名だと分かります。映画『ミッション・インポッシブル』でも、CIAのお偉いさんがこの台詞を言うシーンがあります。)
 指令を聞き終えた後、フェルプス君がテープレコーダーのスイッチを止めると、小型テープレコーダー本体から白煙が立ち上り、指令内容が録音されたテープも消滅します。写真の方はフェルプス君が始末するのか、持ち帰るのかしたのでしょうが、視聴者には知らされません。(この白煙は、スタッフがタバコを吸って吐き出した煙りだそうです。)

 そして、フェルプス君は指令内容を実現する計画を立て、メンバーを選びます。このメンバーを選ぶときに見える資料カバーに「Impossible Missoin Force」とあるのが分かります。映画版ではよく「IMF」と言っていますが、テレビ版ではこのときしか組織名が表示されません。ドラマのオープニングで番組名が表示されるときもまず、「Mission」と表示され、そこに斜めに「Impossible」と表示されるだけです。見た感じは、荷物の配達先の表示にスタンプで「至急」と押したようです。

 指令の実行は、秒単位の計画で行われまさに神業(かみわざ)。

 映画版との違いは、チーム力で指令に対応するというところと、ほとんど殺人をしないところでしょうか。
 テレビ版では、IMFのメンバーは敵を制圧するとき相手の首をチョップで打って気絶させます。

 テレビ版のメカニック役の俳優は黒人(役名はバーニー)でした。当時は頭脳を使うという設定の役に黒人を使うことがありませんでした。(この後に放送された『鬼警部アイアンサイド』にレギュラーだった黒人青年は、主人公アイアンサイドのクルマの運転を業務にしていました。)
 あるとき、バーニー役の俳優がレストランで食事をしていると、身なりのいい黒人が彼のテーブルにやってきて、「君はたいへん素晴らしいことをしている。」と握手を求めてきたそうです。

 私は、このバーニーの仕事ぶりを見て「電子工学」に憧れた覚えがあります。

 こういう非人種差別的な制作姿勢も私が『スパイ大作戦』を好む理由です。

 映画版の『ミッション・インポッシブル』は、「①実行不可能なことを頭脳と体力の限りを尽くして実行する。②科学技術を駆使した道具類を使用する。」という点を移植したアクション映画だと思います。
 テレビ版は非暴力的かつ頭脳的、映画版はずば抜けたアクション、という衣を纏(まと)っていますが、「実行不可能な指令を受け、頭脳と頼力の限りを尽くしてこれを遂行するプロフェッショナル」という点は共通しています。

#スパイ大作戦

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