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盛岡

 数年ぶりに盛岡を訪ねた。好きな街だ。開運橋から、遠くの岩手山と北から流れてくる北上川を眺める。橋のたもとに説明板があり、別名を「二度泣き橋」と呼び、「転勤で盛岡に来た人が『遠くまで来てしまった』と泣きながら渡り、住んでみると盛岡の人の温かさと優しさに触れ、去る時は『離れたくない』と泣きながら渡る」と、由来が書いてある。住んだことのない私だが、心情は後者の方だ。

 今回は、秋田と青森の山間やまあいの温泉をめぐる旅の最後に立ち寄った。温泉旅館というのは、豪勢な夕食が出るが、そんなに食べきれない。また、夕食メインの旅館は押し並べて高価だ。そこで、街中のビジネスホテルに泊まり、宿代を節約した分、夜の街に繰り出して、好きなものを少量食べるという旅スタイルに変更することにした。

 初めて盛岡を訪れた時は、少し北上した好摩こうまから、八幡平を抜けて秋田県の大館おおだてを結ぶ花輪線を走る蒸気機関車を撮影するためで、盛岡市内では、わんこそばを食べた記憶しかない。二度目は、好きだった宮澤賢治の記念碑やゆかりの地を巡る旅で、盛岡市内の思い出はほとんど無い。

 ずいぶん経ってから、友人数人と秋田県の乳頭温泉郷に向かう途中立ち寄った。この時は盛岡冷麺を食べたいと言う明確な目的があり、冷麺だけでは飽き足らず、じゃじゃ麺の名店に梯子はしごした。友人の一人は、さらにわんこ蕎麦にも挑戦し、「盛岡三大麺」制覇した。

 一番最近は仕事で訪れ、気仙沼や釜石・宮古あたりの三陸から仕入れた魚料理、レトロなワンショットバーと、夜の街を満喫した。じゃじゃ麺と冷麺も、抜かりなく昼と朝に分けて食べた。

平壌冷麺の「食道園」

 冷麺は必ず「食道園」という老舗しにせに立ち寄る。昔と変わらぬ味なのだろうが、かつて食べた時の私的な「感激」とずいぶん違っていた。そこで、店本来の焼き肉に変更した。うーむ。確かに美味い! ただ、5㌢四方、総面積25平方㌢のロースとカルビが其々4枚一皿¥2,100は、やや辛かった。だから料理の写真を撮らなかった。

 ちなみに、白龍パイロンというじゃじゃ麺の老舗は、その後大繁盛したようで、現在は4店舗に商売を広げたようだ。今回は流石さすがに「麺梯子」に挑戦する消化力はなかった。

大通り商店街 今日は空いている

 車が通らない大通り商店街には、飲食店が連なり、というより、飲食店だらけだが、チェーン店が多くなっていた。通行人には、外国人旅行客が結構いて、風情は変わっていた。昔行ったことのある店を探し、小路こうじに分け入ったが、記憶が曖昧で、たどり着けず、ホテルの近くのおしゃれな喫茶店に立ち寄り、コーヒーを飲んで帰った。

 山間の温泉も良いが、程よい大きさの地方都市も味がある。どこでも良いわけではなく、例えば東北では、弘前や仙台も候補に上ったが、やはり盛岡が第一選択肢となった。

 開運橋は、「また来たいな」と泣く、「三度泣き橋」となった。

(了)

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