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統計と実感
昨年初めから続く値上げラッシュが止まらない。帝国データバンクが食品主要195社に絞って行った調査(2023年7月発表)によれば、2023年の値上げは年間35,000品目に達し、2022年の25,768品目を1万品目も上回る予測だ。
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食品は一部だ。水光熱費から、ガソリン・高速道路など、生活関連のほぼ全領域にわたるモノやサービスが軒並み値上げとなっている。
一方、公式「消費者物価指数」は、ようやく3%台になったが、少し前までは2%を超える程度だった。生活実感と大きく乖離していることを指摘する声は多い。
妻が長年家計簿をつけているが、昨年から今年の「我が家の消費者物価指数」は、旅行や車検・家族の帰省など臨時費用を除いて、7〜8%だ。できるだけ出費を抑えて生活防衛しているが、防衛線はとっくに突破されている。
さて、公式統計と実感との乖離の理由は様々で、住宅価格が入っていない、賃金が入っていない、「品質調整」という加工がされているからなど、民間アナリストの解説も溢れている。
そもそも統計を司る総務省統計局ですら、「消費者物価指数と生活実感は違う」ことを、詳しく解説している。曰く、
「消費者物価指数 は、指定した全品目の価格の動きを客観的に調べて、それぞれにウエイトを付けて 計算されます。これに対して、人々の生活実感は、毎日買うものの値動きなどにど うしても引きずられてしまいがちです。」
「消費者物価指数が上がった、下がったといっても、物価の動きがそれぞれの家計に影響する度合いは異なっています。消費者物価指数は、このような個々の家計に対応 する物価の動きを表すのではなく、消費者全体に対する物価の動きを表す指標です。」
生活実感との乖離は当然で、そもそも統計の目的が違うのだ。
一方、報道では、消費者物価指数は更新のたびに公表され、諸外国と比べてまだまだ低いと続く。”安心”の定義を、”隣人が不安を覚えている様を眺めることから生ずる心の状態”としたアンプローズの「悪魔の辞典」(1911)は、的を得ている。
「異次元の」超低金利政策を続ける日本銀行は、7月28日、「経済・物価情勢の展望」報告を公表し、消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを2023年度は2.5%に上方修正した。24年度は1.9%、25年度が1.6%で、数値上は政府・日銀が物価安定の目標とする2%付近が続く見込みとした。ずいぶん低めだ。
値上げの3大要因として、「原材料価格の高騰」「ロシアのウクライナ侵攻の長期化」「急激な円安」があげられる。
円安の原因の一つは、低金利政策だ。金利ゼロとは、確かに「異次元」で、資本主義の原理に反している。歪みが深く広がっていることは確かで、反動が怖い。原材料価格の高騰と言うが、エネルギーや素材を扱う商社と、年間6兆円の補助金を得る石油会社は、史上最高益を上げている。
大手企業が製品を値上げしても、下請企業の「価格転換」=値上げは実現せず、値上げの差益は配分されない。従業員の給料を上げられないばかりか、「値上げ難型」倒産企業が増えていると言う。
見えない糸を繋いでいくと、見えてくることもある。
世界には、消費者物価指数が高騰すると、ストライキが起きたり、暴動になったり、果ては政府が転覆したりする国もあるのに、日本人はおとなしく、政権与党にとっては、大変頼もしい国民だろう。
(了)