「失敗」のスゝメ、その2 授業中に指名された子どもが思うこと
学校の先生をしている夫です。
知人が先日、東京ディズニーシーに行ってきたそうです。
アトラクションの1つ「タートルトーク」に初めて入ってみたときの話。
行かれた方はご存じのことと思いますが、このアトラクションの概略。
このアトラクションは、映画『ファインディング・ニモ』に登場するウミガメのキャラクター「クラッシュ」と話ができるものです。
アトラクションの中のスクリーンに映し出されたウミガメ クラッシュが人間と会話できるマイク「ハイドロフォン」を使って会話ができます。
会話ができる人はクラッシュが指名したゲスト!
指名されたゲストにキャストが近寄り、キャストが差し出したハイドロフォンを通じて、クラッシュの質問に答えたり、クラッシュに質問したりするそうです。
指名のされ方は様々。
クラッシュが「話したい人はいるかい?」と聞くこともあれば、唐突にクラッシュに指名されることも!
その知人は結局、指名されることはなかったそうです。
ただ、知人のことばが印象的でした。
「あの指名のされ方、学校の授業と同じだよね。
先生に『わかる人ー!』って聞かれて、挙手した人に当てることもあれば、挙手していない人にも急に当てられる、あの感じ。
指名されるまで、ハラハラして、緊張しちゃった。」
※ちなみに、この知人は学校の先生でもない、民間企業にお勤めの方です。
この知人の経験、授業で何度も遭遇した大人は多いですよね?
私も勉強はあまり出来ず、発言も苦手だったから、先生から唐突に指名されると緊張したものでした。
ただ、このような経験が「失敗」することを不安にしている要因なんですよね。
先生から指名され、その瞬間、30人以上の同級生が自分を見るわけです。
そんな中、不正解を言ったようなものなら、授業後、
「あの解答はないだろ。」「あんな問題も分からないのかよ。」
と男子からのからかいに遭うこともあれば、
「あのような解答の思考は全く想定の範囲を超えておりました。」
ちびまる子ちゃんの同級生 丸尾君のように言われたこともありましたよ。
泣いちゃったこともあった・・・かも。
学校の先生にとっては、「子どもの成長のため」「授業の理解度を計るため」に指名していることでしょう。
でも、このことで不正解を発言する「失敗」をすることが不安になっている子どもも中にはいるのではないでしょうか?
子どもの自尊感情を高めるための教育活動が、全く逆の結果を生み出す要因になっていることも中にはあることと私は考えます。
ただ、この活動そのものを否定しているつもりは毛頭ありません。
不正解を言った後の学校の先生のフォローの仕方、考えていらっしゃることでしょうが、その支援が子どもたちの中に浸透しているのか、疑問があるのです。
夫のことばを借りると、
「学校は『失敗』する場である」
ということは私も同感です。
ただ、同時に、失敗することへの不安を「払拭してくれる」場であってほしいと考えています。
不正解を言った子どもに対するフォローの仕方は様々あってほしいと思います。
友人と会話していると、
「〇〇先生、間違った答えを言うと、必ず『なるほど』っていってくれたね。その瞬間、間違ったことに気付き、どうすればいいか、ヒントをくれたのは有難かったな。」
「△△先生、私が不正解を言った後も、すぐに『違う』と否定しなかったよね。その後もできるまで周りの人を巻き込んで上手くヒントをくれたから、最終的には私の発言が正解になったから、嬉しかったな。周りの人にはごめん、だったけど、お互い様って思っていたよね。」
私が児童・生徒だったときの話でも、思い出す度に有難かったという思い出に花咲きます。
逆に、そのようなフォローをしてくれない先生は授業のことだけでなく、顔や名前すら思い出せません。
私の中でも印象深い先生は何人もいますが、その先生の共通点は最後までフォローしてくれた、ということ。
逆に、あえて子ども達に間違いに導き、
「あちゃー。違うよ、これ。
どこが間違いだったか、探してみてよ。」
といった授業はクイズみたいな感覚で探せて、楽しいものでした。
それこそ、クラス全員が授業に参加してくれる時間を創ってくれた先生の授業は今でも記憶に残っています。
夫も同じように考えているようです。
不正解の発言をした生徒だけではなく、クラス全体に対し、
「以前の問題を今、間違ったから『ダメ』じゃないよ。
間違っていた人は、今、正解を覚えてくれれば、それでいいんだよ。
正解だった人は昔の自分に『当たっていたよ』って言ってあげてね。」
を決まり文句にしているそうです。
「少しでも授業への不安を払拭してもらえるのなら、それが嬉しいし、何より、『できた』という実感を感じてくれるなら、もっと嬉しい。」
というのが夫の持論。
子ども達が主体的に授業に参加してくれるようにする工夫・仕掛けを日々、考えています。
このことがどこまで子ども達の不安を払拭してくれるものかはわかりませんが、失敗したことへのちょっとしたフォローがあれば、子ども達の「不安・恐怖」は薄くなっていくことと期待しています。
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」
by トーマス・エジソン
1万通りの発言を待つことは授業時間は限られていることは理解しています。
それでも、不正解の子どもを更なる成長にいざなってくれる支援をしてくれる、そんな先生が一人でも増えてくれることを願っています。
「お前たち、最高だぜ!」
冒頭のクラッシュが言ってくれるような、そんな授業が1つでも増えてくれるといいな。
それこそ、子ども達が両方の「ヒレ」(手)を真上に突き上げてくれるくらい、積極的な授業参加をする子どもが1人でも増えるといいな。