「老・老相続」が経済に与える影響
最近、ちょっと気になっている問題があります。
タイトルの「老・老相続」の問題です。
「老・老介護」なら聞いたことあるけど、「老・老相続」って何?
なんか問題になってるの.…ですよね。
まず、「老・老相続」とは、「90代や80代の親から70代、60代の子供に相続される」ことです。
この何が問題かというと、例えば90代の親の財産の中身は、おそらく現預金と不動産だと思います。
相続人が何人かいれば、不動産は売却されて現金に変わり、現金として分配されるでしょう。
そして、「相続を受けた70代や60代の子供」はそのお金をどうするのか?
相続税を払い終わって残ったお金は、また同じように銀行預金に変わってしまうのです。
すなわち、結果としては、単純に名義が変わるだけです。(場合によっては、一部ローン返済に充てられることもあるかもしれません。)
その何がいけないかと思われるかもしれませんが、それは
せっかく相続されたお金が預金されたり、ローン返済に充てられたりしたのでは、「景気浮揚や経済成長」に貢献しないのです。
失礼を承知で極端な言葉を使えば、「死に金」になってしまうのです。
もしそのお金が「消費や投資」に回されていれば、企業は設備投資や、研究開発を盛んにし、画期的なイノベーションを起こしたり、国際競争力を上げたりできるのです。
そして、結果として「豊かなニッポン」「持続的な成長が可能なニッポン」を再興できるのです。
しかし、ここでまた、「銀行預金から銀行預金」へと所有者の名義が変わるだけで、世の中へのお金の流れを止めてしまう、「元の木阿弥」になってしまうのです。
もちろん、銀行預金になったとしても、銀行がかつてのような金融仲介機能を発揮できるのであれば問題はないかもしれません。
しかし、現実は違います。
そもそも銀行は「間接金融」と言って、皆様のお金をお預かりして、企業に貸出を行います。銀行自身のお金ではありませんから重視するのは当然、「安全性」です。
一時期と比較して、若干緩やかになったようではありますが、それでもかつての「金融検査マニュアル」に準拠した貸出マニュアルや規程があると思います。
そのようなマニュアルや規程に従えば、大企業のように安定した財務内容の会社には融資できますが、スタートアップやまだまだ業歴が浅い会社には、しっかりとした融資はできません。
ですから現実問題として、「本当にお金を必要としている会社には、資金が回らない」のです。
銀行も商売ですから、「ちゃんと返済してくれるかどうか分からない会社に、お金を貸すことはできない」という判断、これを責めることはできません。
また会社側でも、かつてのバブル崩壊時に「貸し渋り、貸しはがし」を受けた会社も少なくないと思います。
そのトラウマは、なかなか消えるものではありません。
「雨の時に傘を取り上げ、晴れている時に傘を貸す」と揶揄される、銀行の姿勢に心底嫌気がさしている...こんな人は少なくないと思います。
こんな事情も相まって、戦後復興から高度経済成長までを牽引してきた「銀行の金融仲介機能」は、かつてのようには発揮されないのです。
すいません。元々が銀行員だったもので、少し熱が入ってしまいました。
話を「老・老相続」に戻します。
日本人の個人金融資産残高は、現在、過去最高の2,000兆円を超える水準にあります。
そのうち50兆円程度が毎年遺産として移転すると言われています。そして、その遺産を受け取る人の大半は、60歳以上の人たちです。
60代、70代となれば、そうそう旺盛な消費と言う訳にもいきませんから、そこまで多くは消費に回りません。
もしここで、「もう60歳だから、今更投資、とんでもない!」と言って、只々銀行預金にするだけでは、また同じことの繰り返しになってしまうのです。
「景気浮揚や経済成長の事なんか、俺に言われても困る!」「それは、政治家や経営者が考えるべきこと、俺には関係ない」と言われるかもしれません。
でも、そんな事言わないでください、ここは何とか踏ん張って、投資に舵を切ってください!結構マジで訴えています。