JTC(Japanese Traditional Company)でエモい組織を作るということ
この2年間、会社からプロダクト組織を作るように求められて30人程度のR&Dの出島組織を作り、色々取り組みを進めました。ウォーターフォールしかない会社の中でプロダクト/サービス事業のR&Dを進めるという事で手探りばかりでしたが、自分の中では再現性を持って、JTCの中でプロダクトに指向する組織を作れるといった手応えは掴んだのでまとめておきたいと思います。
成果について
もともと3年間で成果を出したいと思って進めていましたが、2年間で組織が解散/再編となってしまったので、まだ世に出せるような成果は出せていないというのが現状です。ただし、ケイパビリティについては一定ついてきていて組織の状態としてはわりと良い状態になっていきました。
上記はこの2年間のふりかえりの様子になりますが、集まった30人程度のメンバー(社員、パートナー含み)が共通して「目的や問いの大事さやOUTPUTよりもOUTCOME(価値)だったり学習(発信/受信)や遊び心」の話をしているのが印象的でした。この事は所謂プロダクト組織であれば当たり前のことだと思うのですが、JTCだった元々の文化からは考えられないことです。結果として、まだビジネスにはなっていなもののプロダクトのプレスリリースをしてお客様(to B)を回ったり、20回程度の外部登壇、組織で書いたブログも200記事程度と、始める前からすると大きな変容が見られたと考えています。
エモい仕事の仕方と学習について
上記「大ふりかえり大会」の時間は、とてもエモい時間で、私は終始感動しておりました。ただ、これは『囚人がシャバに出て牛丼食べて感動する』的なGAPによる感動が多かったと思っていて、いわゆるプロダクト組織として成果を継続的に出しているような所から見ると、全然大したことを出来ていないとは思います。
それでも、自分たちの意志で自ら変容をできたという事は良い経験が出来たと感じています。メンバーも自分たちのプロダクトやスプリントをより良くするために前のめりに努力しているのは感じますし、努力自体を『自分事として楽しんでいる』ということを日々のスプリントの様子から非常に感じます。
色々と進める中で、仕事の成果と組織としての学習の関係はかなり強い関係があると考えており、その中で、SECIモデルの考え方が非常に重要だったと思っています。
SECIモデルについて
野中郁次郎先生のSECIモデルは、個人が蓄積した知識や経験を組織で形式化知し、新たな発見を得るための知識創造プロセスで、Scrumのベースにもなっているものです。
SECIモデルは下記4つのフローを循環して回すものとなり、①の共同化から始まります。
まず、ScrumがSECIモデルをベースにしているので、スクラムをうまく実施していれば、自然と良い循環が回ると思うのですが、Scrum自体慣れているメンバーがいない状態からのスタートの中、どのように上記フローを回していたか、意識したポイントをお話しします。
①共同化
共同化は暗黙知を暗黙知として組織で経験するフェーズとなります。この共同化が何より重要と考えており、このフェーズの重要度の捉え方が大企業だと中々難しい気がしています。
暗黙知を暗黙知として経験するという事は、目に見える成果がパッとわからないですし、チームで共に経験をするという事に対して、分業を進めてきた大企業では受け入れずらいのだと考えています。
逆にこの「共同化」をしっかり設計してうまく進めていく事が大企業での組織づくりのキーになると思っています。
我々が意識した点としては下記のようなものがあります。
メンバーで泊りがけの合宿を行い、個人の想いをしっかり話して同じ時間を過ごす
チームに委ねるもののモブプロやモブワークを意識し、普段からメンバーで共にアウトプットを作りだす環境を意識
RSGTに全員で参加する、全員でのふりかえりを行う、四半期毎にキックオフや目標発表を皆で共有する等、組織として学習できる共通の経験を大事にする
外部登壇について率先的に実施。また外部登壇が得意なメンバーが慣れてないメンバーと共同登壇を実施する事を意識して一緒に経験
OSTを毎週実施しながらHPの記事などメンバーが発信したことにはフィードバックをする
②表出化
個人の持つ暗黙知を、言葉や図解などに表して他人と共有するフェーズです。こちらについては組織を作った最初から意識してツールや環境を整備しました。
Slack,Miro,Figmaといったコラボレーションツールを導入。Slackの分報timesで簡単に個人の発表できる仕組みを構築
組織の学びを発表するWebページを構築。また3ヵ月に1回アドベントカレンダー企画等を行い、メンバーが学んだことを文章化する機会を勧奨
③連結化
・表出された知識を他の知識と組み合わせ、新たな知を創出するフェーズです。
各チーム毎のやっている事を共有して発表
勉強会やワークショップを毎週複数回実施。他の講演や資料を元に、参加メンバーでディスカッション
20%スクラムという本務とは別で20%で別のことを実施するスクラム活動を実施
④内面化
新たに創出された形式知を、習得するフェーズです。
スクラム活動を意識。開発以外の検討や運営組織もスクラムのフレームワークで実施しながら、チームごとになるべく実験できるよう意識。
SECIモデルの始め方、盛り上げ方
火種
共同化が大事と言いますが、共同化では火種は必要だったと感じています。そういった地味では最初は独りから始めることが重要でした。「独りで分からないことをチームなら出来る」というのは甘い考えで、最初は独りが大事だと思います。(速く行きたいなら一人で行けというやつですね。)
合宿や、RSGT等のコミュニティ参加、外部登壇等も最初からチームを巻き込んでいたわけでなく独りで始めました。実際は、外部のコミュニティメンバーに助けられ、進めてきました。社外のコミュニティには、色々な方がいて、その方々の行動をまねる中で何かしらヒントを見つけながら進めてきました。
まあ、火種から火がつくまではタイムラグがあり、ちょっとづつ変わりながらも、1年半くらいで急に燃えだしたといった感覚があります。
プロダクトマネジメント
またベースとしてはプロダクトマネジメント及び仮説検証のスキルが非常に重要と感じています。誰をユーザーとして捉えるのか?ユーザーの課題は何か?自分のやりたい事(ビジョン)は何か?またそれらをどう整合させるのか?といったプロダクトを考える力が組織を変容させるベースの力として非常に重要と考えておりこの能力が向上する事で組織運営も上手になっていきました。
成果
本来は成果を上げることがテコになって、組織の周囲にも影響し、更なる加速が出来ると考えていますが、上記の通り成果はまだといった状況です。そんな中では『外部登壇』はわりとアピールポイントになっており、外部登壇を意識したことない組織にとっては異質な成果となっています。まだテコの感じはしていませんが、可能性としてはあると思っていて外部登壇は出来る限り頑張っていきたいです。
今後の課題
という事で、上記のようなSECIモデルのスキームを意識して、仕組を作り、推進していくメンバーが火種となって、小さく成果を出していけば、JTCであっても再現性を持って組織変容できるというのが現時点の考えです。
とりあえず組織のメンバーは始めと比べ信じられないほど生き生きと働けているとは思うので、一定、『エモい組織』になってきていると思います。
一点、JTCで特に伝えたいこととして、「推進していくメンバー」の重要性や環境はあると思います。このメンバーが十分な権限を持っている事が重要と考えています。JTCでヒエラルキーが及ぼす影響は非常に大きく、推進者が上位層とぶつかり、権限委譲が不十分な状態だとまったく上手く行かなくなると考えています。
私は、普通ではあり得ないほどかなりに自由に進められたので、このようなことをできました(あまり期待もされてなかったのが良かったと思います)。実は、今後は完全に自由でない環境での変容を試されることになりそうですので、また一段階難しいチャレンジになります。
ただこういった機会を得られること自体貴重で、楽しい経験ですので、また色々と試しながら何らかアウトカムを出し、大企業の今までの良い歴史を繋いで、さらに変容していければ素晴らしい事だと思いますので、引き続き色々と楽しんでいこうと思います。
JTCのTraditionalを更に良い伝統へとつないでいければ、何よりエモい!!!ですよね。
読んでいただきありがとうございました。
補足
ちなみに。この記事はスクフェス新潟のプロポーザルのネタのベースとして書いています。不採用であってもどこかで発表したいなーと思っています。
ただ、この内容のキーとなるSECIモデルについては、実はまだ知的創造企業もワイズカンパニーも積読状態です。このネタで発表する時までにはちゃんと消化したいと思います。そんな状態なので、上記内容でツッコミポイントがあれば言って下さい。スミマセン・・・・。
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