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君と僕の話

6
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2022年9月の記事一覧

君と僕の話 6

君と僕の話 6

「久保史緒里?ああ、“負けた子”ね。」

この一言で空気は一変した。

「は?」

長すぎる一瞬を乗り越えて反応したのは僕だけだった。
さくらはまだ目を開いて固まっている。

「あ、久保ちゃんの知り合いだったの?
 そっか、美月ちゃんと仲良しなんだもんね。
 ごめんなさい。」

これほどまでに謝意のない謝罪は初めてだった。
これならまだ生徒の宿題忘れを叱った方が
謝意を感じる謝罪を聞けるはずだ。

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君と僕の話 5

君と僕の話 5

「容態は安定しています。
 あとは目を覚ますのを待ってあげてください。」

決して若くはないが、背筋の伸びたお医者さんは
ゆっくりと私たち親子にそう言って去っていった。

「ありがとうございます、、、。」

お母さんは涙交じりにお医者さんの背中へ
お礼を言った。

「お姉ちゃんはなんで倒れたの?」

怖かったけど気になって聞いてみた。

「お仕事のストレスが原因らしいわ。」

「そうなんだ、、、。

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